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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十七章 育てよう、駆け回ろう
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お祭り騒ぎの後で

 イベントにかこつけた盛大な祭りを楽しんだ翌日、私がログインすると運営からのメッセージが届いていた。それを開いてみると、何と次のイベントについての通知であった。まだ植木鉢のイベントも終了していないのに、次の予告が来たのには理由があったらしい。それはイベントのタイトルを読んだ時に察することが出来た。


「『素晴らしき秋の一面・動』ね。食欲の秋に続いてスポーツの秋というところか」


 食べられる植物を育てる『素晴らしき秋の一面・食』が現在のイベントだが、これは食欲の秋を象徴するイベントだ。それが終わり次第、今度はスポーツの秋のイベントが始まるのだと言う。ジゴロウ辺りは嬉々として参加しそうだ。


 この調子ならその後にもイベントもあるかもしれない。食欲、スポーツと来れば次は…読書か?芸術という線も濃厚だろう。実はこの二つで終わりという可能性もあるので、過度な期待は禁物だ。


 肝心のイベント内容だが、イベント専用の競技場でスポーツを行うようだ。10レベル毎に階級が設けられ、出場者は自分と同格の相手と戦うことになる。レベルが高いからと言ってぶっちぎりで勝つことは難しいようだ。


 ただ、プレイヤーには何かしらに特化させたキャラクターにしている者も多い。そういうプレイヤーは重量上げや徒競走など、シンプルな競技だとステータスの差が結果に直結してしまう競技で圧倒的に有利となってしまう。それでは面白くないと女神達が判断したからか、どの競技も様々な趣向が凝らされているようだ。


 例えば走る競技なら単なる徒競走ではなく、障害物競争となっている。敏捷のステータスが高い方が有利ではあるが、重い物を持ち上げたり、魔術が使えると有利になりそうな障害があったりと敏捷だけでゴリ押すのは難しいようだ。一点特化型の方が有利なのは変わらないが、創意工夫によってその差を埋めることは可能だろう。


 それにボルタリングやカヌー、射撃にゲームセンターにありそうなダンスゲームなど、オリンピック以上に多種多様な競技が揃っていた。場合によっては生産職でも優勝出来そうな競技まである。なるべく多くのプレイヤーに楽しんでもらいたいようだ。


 また、各競技に参加者するだけでも参加賞が配られる。そして成績優秀者には特別な称号(タイトル)と選べる豪華特典が進呈される。何が選べるのかは優勝してからのお楽しみ。欲しければ優勝してみせろ、と言いたいらしい。


「イベント専用の競技場らしいし、魔物プレイヤーも参戦しやすい環境…これは皆が行きたがるだろう。特にこの闘技大会には絶対に出たがる者が少なくとも二人ほどいるな」


 様々な競技がある中で、最も前面に押し出されていると言っても過言ではないのが同時に開催される闘技大会だった。先ほどオリンピックに例えたが、空手や柔道のような武道系の競技を統合したものと考えても良いだろう。


 ファースの街で行われ、邯那と羅我亜の二人がペアの部で優勝した第一回大会。あれとは違ってイベント専用エリアで行われることから、今回は我々のような魔物プレイヤーも参加出来る。やはりイベント専用エリアがあると住民に配慮する必要がないから便利だ。


 あの時に出場出来ないことで落ち込んでいたジゴロウと源十郎は嬉々として出場するに違いない。私は…どうしようか?私には隠しておくからこそ輝く一発芸が多いにで、あまり手の内を曝したくない。何より全力で戦うのなら四本の腕と尻尾を大っぴらにすると、何を言われるかわからない。うん、大人しく別の競技にしておこう。


 闘技大会にはソロ、ペア、パーティーの部があって、ここまでは第一回と同じだ。そこから試合毎に闘技場の環境が変化する特殊ルールの部や武技でしかダメージを与えられない魔術師お断りの戦士の部、逆に魔術でしかダメージを与えられない脳筋お断りの賢者の部なんかもあった。


 これらの特殊ルールが追加されているのはソロの部だけだ。部門の数が増えたことで優勝者の枠も増えた訳だが、プレイヤーの人数も増えている。優勝するのは楽ではない。参加する者達の健闘を祈ろう。


 ちなみに今回のスポーツイベントでは参加する競技の数に制限はないものの、闘技大会だけは一つの部にしか参加出来ない。女神側は闘技大会の優勝者の称号(タイトル)を多くの人にバラけさせたいのかもしれない。と言うかソロとパーティーの二部門で優勝した勇者君とその仲間達が強すぎたのだ。


「うーむ、私はどれにしたらいいと思う?」


 私はガラス瓶に入れた『怨嗟の灼獄血』を鉢植えに注ぎつつ、言葉がわかる賢樹に話し掛けてみる。何に関する質問なのかが分かるわけがないので、賢樹は枝を垂れさせているだけで答えられないようだ。


 私は床に落ちているドングリと枝に成っている中で賢樹が取っても良いと差し出してきたモノを収穫していく。どうやら木の実は賢樹にとって重要なモノではなく、むしろ枝にぶら下がる重りのように感じているらしい。故に自分から積極的に取ってくれとせがんで来るのだ。


 ただし、まだ熟していない木の実は取られると痛いのか触らせてすらくれない。熟していない木の実も調べてみたいとしいたけに頼まれたのだが、無理強いしてヘソを曲げられても困る。私は聞かなかったことにして熟していない木の実は取らなかった。こんな時は知性があると厄介だな。


「む?この枝を切って欲しいのか?えい」


 差し出された枝をパチンと切ってやると、賢樹はこっちも切ってくれと別の枝を差し出した。そちらも切ってやるとまた別の枝を差し出してくる。それを繰り返すこと十数回、ようやく満足したのか賢樹は落ち着いた。


 初めて剪定した時から、賢樹は剪定の良さを実感しているらしい。水やりをする度に剪定もねだられてしまう。人間風に言えば髪型を整えるようなものなのだろうが、最初はあれだけ嫌がっていたのに…変わるものだ。


「もう少しでお前ともお別れか。種になっても記憶は受け継ぐんだろうか?それなら嬉しいんだがなぁ…」


 次のイベントに関する通知が来たことからもわかるように、今のイベントである『素晴らしき秋の一面・食』はもうじき終わってしまう。具体的に言えば明日の昼間だ。明日は平日ではないが、残念ながら休日出勤が決まっている。終わるところに立ち会うことは叶わないだろう。


 その時にはアイリスに立ち会ってもらうことになっている。水やりと剪定を終えた後、私は彼女に賢樹を預けるべく植木鉢を両手で抱えて自室から出た。既に賢樹は天井に届きそうなほど高く育っているが、天井や扉にぶつからないように自分から幹を曲げている。これで魔物扱いではないのだから不思議なものだ。


「アイリス。鉢植えを持って来たぞ…っと、タイミングが悪かったか」


 アイリスの工房を訪れた私の目へ真っ先に飛び込んで来たのは、巨大な黒瘴岩と格闘している最中の彼女の姿だった。きっと噴水用の石像を彫っているところなのだろう。どうやら間が悪い時に来てしまったらしい。


 巨大な黒瘴岩はしいたけの【錬金術】によって無数の小さい石を一つにまとめたモノだ。これから作ることになる城壁もそうやって成形したブロックを組み上げることになっている。恐らくは練習として作ったモノを石像のために譲り受けたのだ。


 城壁に関しては日本の石垣のように自然の岩を上手く組み合わせて作って欲しいという声もあった。しかしながら、完成した城壁の強度に違いがない上に時間が倍以上かかることから却下されている。安全第一かつ手抜きが許されない城壁の工事に、わざわざ工期を延ばす要素を入れたくなかったからだ。


 提案した源十郎は却下されて寂しそうだったが、ルビーに慰められて元気を取り戻していた。前から知っていたが、源十郎は孫のことが好き過ぎるだろ。いや、祖父になったら孫が可愛いものなのだろうか?子供どころか結婚もしていない私には全くわからないなぁ。


「大丈夫ですよ、イザーム。そろそろ休憩しようと思っていましたから」


 幾つもの道具を無数の触手によって自在に操りながら彫っていたアイリスだったが、朗らかにそう言ってくれた。気を使わせて悪いと思いつつも、感謝しながら鉢植えを床に置いた。


「昨日も言った通り、明日はこいつを任せる。水やりと剪定は不要かもしれないが、やって欲しそうにしていたらやってくれ」

「任せて下さい!ちゃんとお世話しておきますよ。ね?」


 アイリスの触手に撫でられると賢樹は嬉しそうに枝を揺らす。賢樹は初めて会った時から彼女に懐いていた。その理由は彼女が植物系の魔物だったかららしい。同じ理由でネナーシとセイの従魔であるモモにも懐いている。似たような存在にシンパシーを感じるのだろう。


 しいたけ?最初は懐かれたけど、今は露骨に警戒されているよ。樹皮を剥がそうとしたり紅色の瘤を無理やり引っこ抜こうとしたり、挙げ句の果てには幹に穴を開けてメープルシロップよろしく樹液を採取しようとしたりしたから当然の対応である。


「ところでイザームはイベントの告知を読みましたか?」

「ああ、一通りはな。何かには参加したいのだが、ちょうどいいモノが見当たらなくてな。アイリスは?」

「あはは、私はスポーツが苦手なので…」


 ふむ、リアルで運動が苦手なのはどこかで聞いたから参加を見送ろうとしているのか。無理強いするつもりはないものの、何だか勿体ない気がする。アイリスなら優勝出来そうな競技を私は見付けていたからだ。


 ひょっとして競技の一覧すら見ていないのではないだろうか?よし、お節介かもしれないが少し説得してみよう。


「アイリスは競技の一覧は見たか?優勝出来そうな競技があったんだが…」

「えー!無理ですよ!私、本当に運動神経が悪くって…」

「いやいや、徒競走みたいなスポーツっぽい競技じゃないんだ。ええと、競技一覧を開いてくれるか?」


 アイリスは半信半疑でメニューを操作して競技一覧を開き、私の見付けた競技を確認する。その後、彼女は少し考えてから「本当に勝てそうです」と真剣に言ってくれた。おお、やる気になってくれたか!ふっふっふ、なるべくイベントは皆で楽しみたいものだな!

 次回は4月18日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ターザンとかかな?アイリスって確かそんな移動方法じゃなかった?
[一言] 綱引きかな? 引っ張る力強いし……重いし……
[気になる点] アイリスが勝てそうな競技… ボルタリングか? 確かアイリス引っ張る力は強かったよな、それで高速移動してたくらいだし
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