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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十七章 育てよう、駆け回ろう
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知育と漁業

 ログインしました。一日経ってベッドから起き上がった私は、目の前にあったモノを見て思わず硬直してしまう。その理由は窓際に置いていた植木鉢であった。


「おいおい、もうこんなに育つのか…」


 私は植木鉢から伸びるブナの()()を見て顔を引き攣らせる。そう、若木なのだ。一晩、ゲーム内時間だと四日ほどだが、それだけで双葉から高さ三十センチメートルくらいまで育っているのである。女神特製、イベント専用のアイテムは伊達ではないということか。


 成長したブナの若木は良い意味で予想外な変化をしていた。灰色で赤い葉脈が通り、縁が尖っている葉は双葉の時と同じである。しかし、黒いだけだった幹の部分には大きな特徴が出来ている。それは樹皮がまるで(ドラゴン)の、より具体的に言えばカルの鱗のようになっていたのだ。


 恐る恐る触ろうと手を伸ばすと、鱗のような樹皮がバキッと音を立てて開いて剣山のようになった。おお、外敵に対して自動的に反撃する機能があるのか。面白い!面白いぞ!


 私は急いで噴水となる予定の池から『怨嗟の灼獄血』をガラス瓶に汲んで部屋に戻ると、未だに樹皮を逆立てた状態のブナの若木に水やりをする。すると葉と枝、そして樹皮をワサワサと動かし始めた。


 どうやら喜んでいるようで、水やりをした後に私が手を伸ばしても樹皮を逆立てなくなった。私を敵だと判断しなくなったらしい。おお、植物なのに高度な知性を持っているのか!素晴らしい!


「知性か…ふむ、ならば試してみる価値はありそうだ」


 私は植木鉢を両手で抱えて自室を出る。そして街へと繰り出すとカルの元へと歩いていった。いつものことながらカルは子供達人気者であり、周囲には多くの子供達が集っている。子供達の一部は私を見ると駆け寄ってきた。


「王様だ!」

「王様こっち~!」

「何持ってるの~?」


 子供達は私の手を引いてカルの前まで連れてくる。私がいるとカルの機嫌が良くなってより積極的に遊んでくれることを知っているのだ。彼らの目論見通り、私が来たことに喜んだカルは嬉しいからか首を持ち上げて鼻を私に近付けた。


 私が片手で撫でているとカルは私のもう片方の手にある植木鉢に気付いたらしい。不思議そうに鼻を近付けるとスンスンと鼻を近付けて臭いを嗅いだ。それに反応して若木の樹皮が逆立つのを見て、カルは驚いたのかビクッと震えた。


「グルルルゥ?」

「何これ~?」

「変な木~」

「大丈夫だぞ、カル。この木は敵じゃない。私が育てているところなんだ」

「水やりしたい!」

「やってみたい!」

「いいけど、危ないから慎重に水やりをするんだぞ」


 カルと子供達は若木を興味深そうに観察している。これは私が育てている最中の木だと教えると、子供達の一部は自分達も世話がしたいと言い出した。そこで私はまだ中身が残っているガラス瓶を渡す。その子供は恐る恐る水やりをすると、若木は逆立てていた樹皮を納めた。


 樹皮が元通りになった後、子供達が手を伸ばしても若木は変化しなかった。やはり敵ではないと判断すれば威嚇をしない知性を持っているらしい。本当に面白いな、これは。


「さあ、皆。これから何をして遊ぼうか?」

「絵本読んで!」

「お姉ちゃん達の絵本!」


 今、子供達の間で流行っているのが絵本の読み聞かせである。紫舟が童話をゲーム内の言葉になぞらえて話してみると、子供達にウケたのだ。それから紫舟やシオ、ルビーなどの女性陣と一部の男が協力して何冊もの絵本を書き上げている。それを読んでくれと言っているようだ。


 読み聞かせは主に女性陣が行っているのだが、たまには男がやるものいいだろう。それに実験するのにちょうどいい。私は一番近い場所にいた疵人(スカー)の少年の持つ絵本を受け取ると、カルの前足の甲に腰掛けて読み聞かせを始めた。


 タイトルは『拳銃を持った猫』。とある老人が亡くなり、その遺産は三人の息子に分け与えられた。長男は屋敷を、次男は老人の愛用していた拳銃を、そして三男は老人の友であった猫を与えられた。


 長男に比べて次男と三男の遺産はあまりにも少なく、二人は嫉妬から長男の暗殺を企んだ。次男の遺産である銃を三男の猫に渡して長男を射殺させ、その間に自分達は完璧なアリバイを作っておくという計画だ。


 しかし長男は弟達の考えなど熟知している。いつ刺客に襲われても返り討ちに出来るように、傭兵を雇って待ち構えていた。だが刺客が屋敷のことを熟知した猫であることまでは想像していなかった。屋根の上から足音も立てずに接近して見事長男を討ち取った。長男は死に、屋敷は次男と三男のものとなったのである。


 しかし、二人で喜んだのも束の間のこと。猫はその拳銃によって次男をも射殺した。それは三男の指示であり、共謀者である次男もいなくなれば全てを手中に納められると思ったからである。


 思惑通りに事が運んで喝采を上げる三男だったが、その胸を無慈悲な弾丸が貫いた。彼を撃ったのはやはり猫であった。死んだ老人は、息子達に隠して猫に遺言を遺していたのである。三人の息子達は強欲であり、どんな形で遺産を分配しても争いになるだろう。それを防ぐことはきっと出来ない。


 故に友人である猫に頼んだのだ。もしも息子達が口喧嘩ではなくお互いを殺し合うようなことになったなら、世のためにも全員を殺して欲しい、と。


 三人の息子達を始末した猫は老人の遺した愛用のテンガロンハットと拳銃を持って旅に出る。老人の息子達のような兄弟を始末するために。


「兄弟で争うことがあれば、拳銃を持った猫に狙われるかもしれないよ?おしまい。これ、誰が書いたんだよ…」


 読み終わった後、子供達の反応は二通りに別れている。猫がカッコいいと言う子供達と猫に怯える子供達だ。怯えているのは兄弟がいる子供のようで、兄弟喧嘩をしないでおこうと固く誓っているようだった。


 いや、思わず小声で呟いてしまったけども、本当にこのストーリーを考えたのって誰よ?着想を得たのは間違いなく『長靴をはいた猫』なのだろうけど、ストーリーの流れは全く異なる。確か原作は頭のキレる猫を相続した三男が、猫の活躍で出世するみたいな話だったと思う。少なくとも、兄弟喧嘩を諌めるような内容ではなかったはずだ。


 最後とか完全にホラーじゃないか…それに取って付けたように出てきたテンガロンハットは何なの?マカロニ・ウエスタンっぽくしたかったの?西部劇が好きなの?マジで誰が書いたのか知りたくなってきたわ。


 子供に読ませるにしてはブラックなストーリーはともかく、私の読み聞かせ自体は好評だったようで子供達は次の絵本を差し出してくる。私は笑顔で、といっても表情はないがそれを受け取ってから読み聞かせを続けた。


 そんな調子で四冊ほどの絵本を読んだ。最初の一冊以外は無難なストーリーで子供達は終始楽しそうに聞いていた。しかし、読み聞かせばかりでは飽きてくるというもの。その辺りでリクエストはなくなって鬼ごっこやかくれんぼに移行していった。私はそちらには加わらず、植木鉢を抱え上げて語りかけてみた。


「少しは言葉を学んだか?もしそうなら枝を揺すってみてくれ」


 私の質問に対し、若木はワサワサと枝を揺らして肯定する。本当に言葉を理解しているようだ。やはり高い知能を持つという仮説は正しかったと見える。実に興味深いな!


 ただ、このままでは植木鉢に向かって語りかけるヤバい人扱いされてしまうので私は植木鉢を持って一度部屋に戻った。そして比較的明るい場所に置いて外に出る。子供達が子供達だけで遊んでいるならばカルと出掛けるには好機なのだ。


「待たせたな、カル。今日はお前の好きなところに行こうか」

「グオオン!」


 カルは嬉しそうに一鳴きすると、私を背に乗せて空へと舞い上がった。そして南方の海を目指して飛んでいく。どうやら今日は海の幸を食べたいらしい。カルは案外グルメなのだ。


 私は魔力探知(マジックソナー)を使って魚群を探し出す。前にアン達と海で魔物狩りを行ったが、あの時は少し危うい場面があった。しかし、我々も経験を積んでいる。魚系の魔物に対する必勝法を確立させているのだ。


「まずはこれだ」


 私は発見した魚群に向かってしいたけが調合した爆薬を投下する。これは爆発したときに発生する衝撃波と音を可能な限り高めたアイテムで、その名も『大かんしゃ君』という。相変わらずのネーミングセンスに苦笑を禁じ得ないが、その効果は絶大であった。


 海に落ちてから数秒後に起きた大爆発によって、空を飛んでいるカルにまで水飛沫が跳ねてくる。すると魚群の大多数がピクピクと痙攣しながら海の上に浮かんでくるのだ。浮かんできたのはマグロに良く似た、しかし体表が真っ赤な魔魚(イビルフィッシュ)だった。あれは旨そうだと思ったのか、カルが喉を鳴らしている。焦らずともすぐにありつけるさ。


 前に【爆裂魔術】を用いて行ったダイナマイト漁と同じ原理だが、こちらの方がより凶悪な結果をもたらしている。百を超える魔魚(イビルフィッシュ)がスタンの状態異常になっているのだから。流石はしいたけの作った爆弾。恐ろしい威力だ。


「お次はこれだ!星魔陣…からの轟雷(サンダーボルト)!」


 私は無防備な魔魚(イビルフィッシュ)に向かって【雷撃魔術】の轟雷(サンダーボルト)を叩き込む。放たれた五条の雷撃は海面に当たると拡散していくが、そのせいで広範囲の魔魚(イビルフィッシュ)を感電させていく。これを繰り返すとほぼ全ての魔魚(イビルフィッシュ)を仕留めることに成功した。これだけあれば街の住民にも行き届くだろう。十分過ぎるほどに大漁だ!


「グルオオオオオッ!」


 そしてまだ息のある魔魚(イビルフィッシュ)はカルがその爪牙の餌食としていく。牙で生きたまま咀嚼したり、爪で急所を貫いてから口に放り込んだりとやりたい放題だ。予想通りこの魔魚(イビルフィッシュ)は絶品だったのか、カルは夢中になって食べている。私は苦笑しつつ、カルの背中から飛び降りて剥ぎ取りナイフを突き立てていった。


 私がアイテムを回収していると、水平線の向こう側から見たことのある複数の人影が上がってくる。鯱の背中に乗っている彼女らは間違いなくアンが率いる『青鱗海賊団』だ。私は挨拶をするべくカルの背中に再び乗ってそちらに飛んでいくのだった。

 ダイナマイト漁は日本を含めた多くの国で禁止されている危険な漁です。リアルでは絶対にやらないようにしましょう。


 次回は3月25日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
これだけ知性が高いとイベント終了時に枯れて種に戻っちゃうのがちょっと残念ね、終了後の女神補正無しでもしっかり育ってくれるかな?
[一言] うちのひいじいちゃん、ダイナマイト漁して、片腕吹っ飛んだって言ってたわ。
[一言] ダイナマイト漁というかそもそも密漁禁止です笑笑
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