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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第二章 仲魔と共に
21/688

洞窟探検 その一

――――――――――


【錬金術】レベルが上昇しました。

新たに融合と分離の呪文を習得しました。

【光属性脆弱】スキルが緩和されました。


――――――――――


 はい、全ての準備が終わりました。リアルの日付も変わって現在は日曜日の昼、即ちゲーム内では深夜だ。


 回復薬と毒薬を黙々と作り続け、私の【錬金術】レベルは二つも上昇した。作っては合成して効果を高める、という作業を繰り返した結果である。結構ハードだったな。


 新たな呪文である融合と分離だが、これも中々興味深い。まず融合だが、これは違う物同士を混ぜる事が可能になるらしい。同じアイテム同士をくっつけて品質を上げる合成とは毛色が違うな。


 もう一つの分離は融合させたもの同士をもとの素材に戻したり、一つの素材に含まれる成分が二つ以上ある場合、それを分けることが出来るようだ。手早くやれるので抽出よりも時間がかからないが、【錬金術】のレベルが低いと不純物だらけになるそうだ。楽がしたければ、地道にレベルを上げろもという意味かもしれんな。


 そして、ようやく【光属性脆弱】が緩和された。長かった。しかし、次のステップまではもっと遠いと思われる。私が【光魔術】を使えるのは何時になるのやら。


 これが私個人に起きた変化だ。それに加えて、アイリスによって全員分の装備が揃えられた。こっちの方が重要かもしれない。私の装備はこんな感じだ。


――――――――――


羆革のシャツ 品質:優 レア度:R(希少級)

 上質な羆の革で仕立てられたシャツ。黒く染色されており、それなりの防御力がある。

 装備時、知力に微補正。


羆革の手袋 品質:優 レア度:R(希少級)

 上質な羆の革で仕立てられた手袋。黒く染色されており、それなりの防御力がある。

 装備時、知力に微補正。


羆革のベルト 品質:優 レア度:R(希少級)

 上質な羆の革で仕立てられたベルト。黒く染色されており、それなりの防御力がある。

 小物入れがついており、素早い出し入れが可能。容量:3


羆革のズボン 品質:優 レア度:R(希少級)

 上質な羆の革で仕立てられたズボン。黒く染色されており、それなりの防御力がある。

 装備時、知力に微補正。


羆革のブーツ 品質:優 レア度:R(希少級)

 上質な羆の革で仕立てられたブーツ。黒く染色されており、それなりの防御力がある。

 底にスパイクがついており、滑りにくい。踏みつけ時のダメージ微増。


――――――――――


 素晴らしい。これは一つ目のエリアの素材で作成出来る装備品では最高級に近い逸品だろうな。最高級なのは間違いなくボスのドロップ品で作られたものだ。それは仕方がないだろう。


 それにしても、ようやく私が文化的な服を着る事が出来るようになった。今の私ならば、髑髏の仮面での【偽装】が通用する街であれば中に入れるかもしれない。失敗した時が酷いだろうから緊急の用事が無い限りやらないが。


 因みに、ベルトの表記にある『容量:3』とは、インベントリを使わずに保持出来るアイテムの数を示している。すぐに使えるので危ない時に重宝するだろう。


 他のメンバーも手に入る中では最高の武具を揃えている。特に源十郎の幼虫用革鎧は渾身の力作だそうだ。何でも日本の鎧を参考にしたらしく、丸みを帯びたフォルムの幼虫の身体を上手く被っている。さすがは生産リアルチートだな。


 あと、何も装備していない状態でさえ理不尽な強さを誇っていたジゴロウは、プレイヤーを虐殺し続けて溜め込んだ装備を鋳とかして作った金属製の籠手を与えられた。相当頑丈な上に、握りこむと金属の棘が出てくるギミックに鋭い爪を持つ指先を露出させているな。


 本人はこれで自前の爪なら敵の首を掻き切れるし、拳には刺突ダメージが乗るようになったと喜んでいる。鬼に金棒だな、これは。


 もし『北の山の悪夢』が進化した上に新たな能力と凶器まで手に入れたと知ったら、プレイヤー達は震え上がることになるだろう。はっきり言って、私なら会わない事を信じてもいない神に祈る事になりかねないぞ。


 また、ルビーは羆の爪を使った短剣を使うようになった。もちろん、私の毒薬を仕込めるように細工されている。どうやら、本格的に暗殺者プレイを始めるようだ。


 音もなく、更に壁や天井もお構いなしに移動出来る粘体(スライム)の暗殺者、か。怖っ!しかも私が片棒を担いだとは言え、毒の武器まで持っている。凶悪な存在だな。


 こう考えると、ジゴロウとルビー、そして自画自賛ながら私はプレイヤーからすれば恐怖の対象となるだろう。純粋に戦闘力が高いジゴロウ、ほぼ確実に不意討ちが成功するであろうルビー、そして罠や多様な魔術に精神攻撃まで行う私。私なら絶対に交戦を避けるな。


 それは兎も角、出発するか。先ずは西の森のボス、大羆(ブラックベア)を攻略だ!



◆◇◆◇◆◇



――――――――――


戦闘に勝利しました。

フィールドボス、大羆(ブラックベア)を撃破しました。

報酬と3SPが贈られます。

次回からフィールドボスと戦闘するかを任意で選択出来ます。

種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

【杖】レベルが上昇しました。

【魔力制御】レベルが上昇しました。

【大地魔術】レベルが上昇しました。

【水氷魔術】レベルが上昇しました。

【火炎魔術】レベルが上昇しました。

【暴風魔術】レベルが上昇しました。

【樹木魔術】レベルが上昇しました。

【溶岩魔術】レベルが上昇しました。

【砂塵魔術】レベルが上昇しました。

【煙霧魔術】レベルが上昇しました。

【雷撃魔術】レベルが上昇しました。

【爆裂魔術】レベルが上昇しました。

【暗黒魔術】レベルが上昇しました。

【虚無魔術】レベルが上昇しました。

【召喚術】レベルが上昇しました。

【付与術】レベルが上昇しました。

【魔法陣】レベルが上昇しました。

【死霊魔術】レベルが上昇しました。

【呪術】レベルが上昇しました。

【罠魔術】レベルが上昇しました。

【降霊術】レベルが上昇しました。

【邪術】レベルが上昇しました。


――――――――――


 はい、フィールドボスを撃破しました。ん?描写は無いのかって?(ブラウンベア)を一方的に殺戮出来る者が過半数を占めるパーティーで、(ブラウンベア)よりちょっと強い位のボスが敵うわけないだろ!


 体力は多かったし、攻撃も重そうだった。だが、前衛のジゴロウは易々と避けていたし、何よりも源十郎とアイリスによる二人掛かりの拘束によってほぼ何もさせずに倒してしまった。


「物足りねぇな」


 ジゴロウがこうぼやく程に取り立てるべき何事もない戦いであった。他のメンバーも同じような感想を抱いていることだろう。


 今思ったが、魔物系って基礎能力が高いのだろうか?キャラクタークリエイト時に種族(レイス)で固定される能力(スキル)がいくつかあって自由度は確かに低い。また、その中には私の【光属性脆弱】のような弱点のものまである。他の四人もそれぞれに弱点やデメリットがあるからだ。


 しかし一方で自分よりも種族(レイス)レベルが高い魔物を相手に互角以上に渡り合えるのも事実だ。正直、私やジゴロウならばソロ討伐も余裕だっただろう。


 そう考えれば人間系プレイヤーと関わる事すら難しく、NPCの街には入る事すら出来ない魔物系の最大の長所は何よりも強さなのかもしれないな。これは予想の範疇を出ていないし、検証も現状では困難だから頭の片隅に退けておこう。


「よし、ボスは倒した。ここから西の洞窟に向かおう。ただし、プレイヤーに見られない様に注意すること。洞窟にはいないだろうが、森の中には闘技大会直前までレベル上げをしている連中がいるだろうからな」

「グギャ(合点だ)」

「シュルッ(はい)!」

「カチカチ(ほいほい)」

「プルルプル(索敵は任せて)!」


 四者四様の返事に頷き返し、私達は西へと歩を進める。攻略スレによれば森の中で現れる魔物はボスの前としばらくは変わらない。また森はまだまだ続いており、終わりは見えないらしい。これは西の探索は難航するだろうな。


 そして我々の目的地である洞窟は、ボスエリアから西北西に少しだけ進んだ場所にある。ここはファースの街を明け方に出発してからギリギリで日の入り前に戻ってこれる距離なので、一応は狩場と言えなくもない。


 しかし時間的に探索の時間が長く取れないのに加えて、洞窟故に真っ暗で前が全然見えない。ドロップも他の第二フィールドと大して性能が変わらないので面倒さに見合う実入りが無い。なので発見はされたし報告も上がっているが、誰もまともに探索していないのだった。


 これも我々としては好都合だ。と言うか、魔物系は【暗視】を持っているか、取得に必要なSPが1なので全く問題は無い。むしろ森の難易度や洞窟の存在から鑑みるに、西方面は魔物系プレイヤー向きになっているのかもしれないな。


 魔物系って、別に不遇でも何でもない可能性が出てきたな。いや、それは私が恵まれた環境にいたからか。と言うかこのゲーム、実はバランスが取れているのに情報が隠され過ぎていて理不尽な思いをする事が多すぎませんかね?


 適当に魔物を蹴散らしながら洞窟にたどり着いたのは、日の出によって私がダメージを受け出した頃だった。我々は慌てて洞窟の中に転がり込む。ふう、焦ったぞ。


「では、洞窟探検と洒落こもうか」



◆◇◆◇◆◇



 洞窟の内部は湿気が多く、どこかヒンヤリしていた。天然の冷蔵庫のようだ。また、音が反響するので大きな音の出る魔術は使用厳禁だろう。そう言うものほど強力だったりするので悩ましいな。


「プルッ(敵だよ)!プルルップル(数は五匹)!」

「戦闘用意。数は五だ」


 ルビーの索敵範囲に敵が入ってきたようだ。まだ異種族とコミュニケーションを取れる者は私以外にはいないので、彼女の報告を復唱することで情報を共有する。一段階挟むので面倒だし非効率的だ。早く【言語学】レベルを上げて欲しいものだな。


 おっと、敵さんのお出ましだ。見た目は…蝙蝠?早速【鑑定】するとしよう。


――――――――――


種族(レイス)毒蝙蝠(ポイズンバット) Lv11

職業(ジョブ):なし

能力(スキル):【毒牙】

   【吸血】

   【飛行】

   【回避】


――――――――――


 ほほう、まあまあ強そうな敵だな。それでも鼠男(ラットマン)と格は同じかそれ以下だ。油断していい相手ではないが、気負う事もあるまい。


 しかし、名前は毒蝙蝠(ポイズンバット)か。能力(スキル)にもご丁寧に【毒牙】がある。これ、噛まれたら確率で毒に掛かるんだろうな。失敗した。私には【状態異常無効】があるので状態異常への対策が疎かになっていた。解毒薬はアイリスが【調薬】で作っている分があるが、私も作成出来るのだから今後は作っていこう。


「私が動きを止める。取り逃したら源十郎とアイリスが拘束。ジゴロウとルビーは随時止めを刺していってくれ」


 私は指示を飛ばすとすぐに魔術を使う。すばしっこそうで小さい敵が出てきた時点で使おうと思っていた術があるのだ。


「巴魔陣起動、茨鞭(ソーンウィップ)


 私の眼前に現れた三つの魔法陣から一本ずつ無数の棘が生えた茨が伸びていく。毒蝙蝠(ポイズンバット)一匹につき一本が絡み付き、地面に叩き落とした。


「カチッ(ふんっ)!」

「シュルッ(えいっ)!」


 源十郎とアイリスはそれぞれ糸と触手によって残りを捕らえている。流石だな。


「ギャアア(オラァ)!」

「プルプル(楽でいいね)!」


 雁字搦めになった毒蝙蝠(ポイズンバット)達はジゴロウに踏み潰され、ルビーに喉を掻ききられて行く。至極あっさりとした勝利だったな。これでは相手の強さがわからないぞ。


 かといって毒になるリスクを放置は出来ない。ジゴロウには物足りないかもしれないが、状態異常持ちではない魔物が出るまでは我慢してもらおう。


「シュルシュル~(剥ぎ取りましたよ~)」


 己の失敗に内心で呆れている私に、アイリスは嬉しそうに毒蝙蝠(ポイズンバット)のドロップアイテムを見せてくれる。私も興味はあったので、【鑑定】してみることに。その結果がこちら。


――――――――――


毒蝙蝠の牙 品質:可 レア度:C(普通級)

 毒を持つ蝙蝠の牙。毒の効果は高くはない。

 矢の穂先に使えるが、脆いので再利用は難しい。


毒蝙蝠の翼膜 品質:可 レア度:C(普通級)

 蝙蝠の翼膜の一種。しっとりとした肌触りが特徴。

 防具には不向きだが、高級皮革製品の原料となる。


――――――――――


 へぇ、おもしろいな。弓矢を使う者がいないので私の【錬金術】素材となるだろう。注目すべきは翼膜の方だ。高級皮革製品の原料ということは、アイリスの出番だ。そしてこれを街に卸せば現金が手に入るだろう。


 しかし現状、我々は現金にあまり魅力を感じていない。必要な物資は狩猟・採集・生産で事足りるし、宿代だって必要ない。全てが我々の中で完結しているのだ。


 しかし、拠点にある設備はそうはいかない。前の持ち主によって【錬金術】や【調薬】に使う設備は最高級に近いものが揃っている。しかし、アイリスは革や鍛治などにも手を出しており、その設備はキャラクタークリエイト時に与えられた初心者用のものしかないのだ。


 いつかは更新しなければならない。その為には人里で購入する必要があり、取引には現金が不可欠だ。今すぐというわけには行かないが、やはり何時かは私が【偽装】を使って街に侵入する必要があるだろう。


 さて、将来のことより今を見よう。洞窟はまだまだ入ったばかり。他にどんな敵が現れるのやら。怖くもあるが、同時にワクワクするな!

 その一と銘打っておきながら入り口に入っただけという…

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― 新着の感想 ―
【推敲】 楽がしたければ、地道にレベルを上げろもという意味かもしれんな。 ⇩ 楽がしたければ、地道にレベルを上げろという意味かもしれんな。 【誤字報告】 そう言うものほど強力だったりするので悩ましい…
[一言] 弱点を克服すると耐性を得ることができ、魔術も弱点ではない為取得できると言う意味だと思います
[気になる点] 矢は穂先ではなく鏃です
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