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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十一章 黒死の氷森
173/688

黒死の氷森 その八

――――――――――


種族(レイス)偽骨龍イミテーションボーンドラゴン Lv63~68

職業(ジョブ):偽龍 Lv3~8

能力(スキル):【偽龍爪】

   【偽龍牙】

   【偽龍角】

   【偽龍尾】

   【体力強化】

   【筋力強化】

   【防御力強化】

   【闇魔術】

   【無魔術】

   【咆哮】

   【威圧】

   【飛行】

   【状態異常無効】

   【魔術耐性】

   【打撃脆弱】

   【光属性脆弱】

   【毒のオーラ】

   【龍の因子】


――――――――――


 どうやら、あの骨の(ドラゴン)の正式名称は偽骨龍イミテーションボーンドラゴンと言うらしい。レベル帯は龍牙兵長(スパルトイリーダー)と同等である。見た目ほど強い訳ではないようだった。


 ただ、(ドラゴン)と名の付く者のお決まりとして【龍の因子】はしっかり持っている。追い詰められてからの爆発力は恐ろしい。油断は決して出来ないぞ。


 しかし、問題は敵の数と科学者の異様さだ。数の力は言うまでもないとして、あの科学者はヤバい。【鑑定】した結果を見れば、誰だってそう思うだろう。


――――――――――


名前(ネーム):デイヴィット・マクファーレン

種族(レイス)機械化人間サイボーグ・ヒューマン Lv72

職業(ジョブ):狂魔導学者 Lv2

能力(スキル):【機械ノ肉体】

   【狂気ノ精神】


デイヴィット・マクファーレン 品質:劣 レア度:L(伝説級)

 古代の文明によって肉体の大部分を機械化した人間。

 当時は機械化した身体は珍しくなかったが、現代でも生存している個体は稀少。

 経年劣化が激しく、心身共にエラーが発生している。


――――――――――


 機械化人間サイボーグ・ヒューマンとか、狂魔導学者とか、変な能力(スキル)とかレベルの表記はどこにいったのかとか、色々と言いたい事はある。だが、何よりも真っ先に言いたいのはどうしてステータスとアイテム情報の()()が表示されているのか、だ。


 奴は、機械化人間サイボーグ・ヒューマンは生物であると同時にアイテムでもあると言うことだろうか。情報が多いのは助かるが、あまりにも衝撃的な【鑑定】結果である。


 さらに【鑑定】して生まれた疑問もある。それは奴があの不死(アンデッド)を従えている方法についてである。それどころか、不死(アンデッド)に関連しそうな能力(スキル)すら無い。謎は深まるばかりであった。


「兄弟、どうすんだ?」

「…考えるのは後か。ジゴロウとカルでどうにかあの偽骨龍イミテーションボーンドラゴン達を引き付けてくれ。残りの全員で龍牙兵(スパルトイ)達の相手をする」

「へへっ!任せなァ!」

「むぅ…仕方がないのぅ…」


 ジゴロウは露骨に嬉しそうである。逆に、源十郎は露骨に悲しそうであった。彼も戦いたかったのだろうが、【打撃脆弱】という弱点を突ける相性の都合での人選だ。ただ、フォローは忘れずにしておこう。


「こっちの殲滅が早ければ、獲物を奪ってもいいと思うぞ」

「俄然、ヤル気が湧いてきたわい!」

「けっ!さっさと倒して、逆にそっちを助けてやんよ!」

「二人とも…」

「ド、ドンマイっす」


 奮い立つ男達に、ルビーは呆れて物も言えないようだ。自分の祖父がゲームでは戦いに飢えているとなれば当然の反応か。シオが慰めているが、効果は余り無いようだ。


「威勢が良くて何よりだ。セイと邯那と羅雅亜は兎に角戦場を引っ掻き回して欲しい。源十郎、エイジ、モッさんは前衛で防御、残りの全員で雑魚共を少しでも数を減らしてくれ」

「後衛組は?」

「支援攻撃だ。私は防御の支援もする。…来るぞ!」


 迫り来る大群を前に、我々は行動を開始する。ジゴロウはカルの背にヒラリと飛び乗ると、それを合図にしたようにカルは偽骨龍イミテーションボーンドラゴンに向かって飛翔した。


「グルオオオオオオオッ!!!」

「ギャン!?ゲッギャアアアアアッ!?」


 そしてそのまま一頭に体当たりし、首に噛み付いて押し倒す。さらにそのまま首を振って敵の頭を地面に叩き付けている。狩りにおいてカルの得意とする戦術であった。


 純粋な力のぶつかり合いでは、カルに軍配が上がったようだ。容易に押し倒した所を見るに、体重でもカルが勝っているらしい。カルよりも大きいと言っても、肉の部分が無いのだから当然か。


「グオオオオオオッ!」

「ギャオオオオオッ!」

「ゴアアアアアアッ!」


 このまま仕留められるか、と言えばそんな事は無い。カルの下で藻掻き苦しんでいる偽骨龍イミテーションボーンドラゴンを助けるべく、残りの三頭が押し寄せていた。偽骨龍イミテーションボーンドラゴンはカルに力負けしているとは言え、このままでは間違いなく引き剥がされるだろう。だが、それを阻止出来る者が一人いた。


「オッラァ!シャアアッ!」


 カルの背に乗っていたジゴロウが跳ぶと、そのまま一頭の頭部に飛び蹴りを食らわせる。そして蹴った頭を足場にして再度跳躍し、別の一頭に今度は踵落としをお見舞いした。


「ゴッ!?」

「ゲッ!?」


 獣めいた雄叫びと共に繰り出された打撃によって、二頭の偽骨龍イミテーションボーンドラゴンは短い悲鳴を上げつつよろめいた。体力バーの減りは極僅かだが、骨にヒビが入っているのでダメージは確かに通っている。体力そのものが高いのだろう。


「グルルゥッ!」

「ガルオオッ!」


 ジゴロウが二頭を蹴り飛ばしたのと同時に、カルは残りの一頭を尻尾で迎撃していた。刃物のように鋭い尻尾を、偽骨龍イミテーションボーンドラゴンは爪で受け止める。爪が欠けたりしていない所を見ると、流石は(ドラゴン)と言ったところか。


「「「カタカタカタ!」」」

「ふんぬぅ!」

「通しませんよ!」

「温いわ!」

「行け行けぇ!兎に角、時間稼ぎやでぇ!」


 後方で行われている大怪獣戦争も凄いが、此方は此方で忙しい。ゾロゾロとやってくる龍牙兵(スパルトイ)など不死(アンデッド)の群れをこの少人数で倒さねばならないからだ。特に源十郎達は盾や武器を使って奮戦していた。


 この数を捌くには、彼らに踏ん張って貰わなければならない。故に私は優先的に彼らを【付与術】で強化し、【魂術】で回復させていく。その間にルビー達やシオ達が一匹一匹を確実に仕留める。この調子を最後まで維持出来れば勝利出来そうだ。


「アハッ!アハハハハハ!」

「ゲームとは言え、妻が敵を斬りながら高笑いするようになってしまった…ああ、義父さんになんて言えば…」

「行っくぜぇっ!」

「ウオオオン!」


 ここで我々の中で最も突破力と機動力がある者達が、敵の集団に突っ込んだ。方天戟を振るう度に敵が木っ端のように舞い上がり、馬の嘶きが聞こえる度に何かが折れるような音が響いている。また、別の場所では真鋼鉄で補強された棍が敵を薙ぎ払い、狼の雄叫びと妖精の魔術が放たれていた。


 敵の数が多いので、集団の間を走り抜けた後の彼女らは決して無傷とは言えない。しかし、再び突撃するのを一切躊躇しなかった。源十郎達に次いでダメージを食らっている彼女らにも急いで【付与術】と【魂術】を使ってフォローする。


 壁となった防御力の高い者達が敵の突撃を受け止め、機動力のある者達が陣形を崩壊させ、他の者達で総攻撃を仕掛ける。この作戦は上手く機能しているらしい。敵も混乱しているようだし、このまま行けば…


「ほほぅ?我ら人間(ヒューマン)のための資源でしかない魔物の割には、統率のとれた戦いが出来るようだね」


 科学者ことデイヴィット・マクファーレンは片手で顎を擦りながら、科学者らしく観察していた。その声音や顔色には、焦りなど全く無い。余裕の表れだとでも言いたいのだろうか?


「ならば、追加するとしよう」

「何だと!?」


 マクファーレンが左手を掲げると、中指に嵌まっている指輪が紫色の輝きを放つ。すると、地面がボコボコと音を立てながら割れ、そこから新たな龍牙兵(スパルトイ)が出現したのではないか!


「こ、こんなのズルいわ!反則よ!」

「何を馬鹿な事を。私の戦力がたったこれだけだと思われていたとは、心外だね。所詮は魔物と言うことか」


 思わず文句を言った紫舟だったが、マクファーレンは嘲るように鼻で笑っている。私が奴の立場でもそうしていただろう。保有する戦力がまだまだ幾らでもいるのなら、余裕を見せて煽るだけでいい。相手を不愉快にさせれば、それだけでミスが生まれる可能性が高い。立派な戦術である。


「何よアイツ!ムカつく!」

「メェー、落ち着いてー。挑発にー、乗っちゃーダメだよー」


 紫舟は挑発に乗りかけてプリプリと怒っているが、それを歌と魔術による援護の合間にウールが宥める。そうそう、冷静さを欠けば勝てる相手にも勝てなくなるぞ?


「皆、長期戦を覚悟してくれ。今あるリソースを使いきる前提で行くぞ!」

「はいよ、リーダー!大盤振る舞いと行こうか!」


 しいたけは惜しみ無く数々のアイテムをポンポンと投げて行く。攻撃アイテムや妨害アイテム、更には回復アイテムまで投げていた。これは仲間に当たれば回復するし、不死(アンデッド)にはダメージを与えられるしで一石二鳥である。


 ハイペースで消費しているように思われるが、錬金術師であるしいたけの保有するアイテムは非常に多い。ポーション作成等を彼女に任せる代金として、アイテムを提供しているからだ。そうして溜め込んだモノを放出しているのだろう。


「フゥー…老骨には堪えるわい」

「ゲームなんだから気のせいですよ、源十郎さん!」

「無論、冗談じゃよ」

「この状況で余裕があるとか、嘘やろ!?」

「リアルチートって、ズルいですねぇッ!」


 エイジ達は目の前の敵に対応するので手一杯なのだが、源十郎には敵を斬り飛ばしながら冗談を言う余裕があるらしい。四本の腕で操る三本の刀が、複雑な軌跡を描いてバッタバッタと首を刎ねていく。時には手首等を斬り落として強引に武装解除させていた。ボヤきながらも、壁役として最も活躍しているのはやはり源十郎であった。


 しかし、このままではジリ貧であるのは間違いない。どうするべきかを考えながら魔術を放っていると、私の側に空からシオが降りてきた。


「どうするんすか、イザームさん?今は持ちこたえてるみたいっすけど、また増やされたら絶対勝てないっすよ」

「ああ、そうだな。とりあえず、マクファーレンを弓で撃ってみてくれ」

「了解っす!螺旋鋭射!」


 シオが放った矢は激しく回転しながら高速でマクファーレンに迫る。きっと私の魔術による防御で防ぐのは難しそうだ。確実に防ぐには聖盾(ホーリーシールド)でなければ不安である。まともに食らえば、マクファーレンでもただでは済むまい。


「ふん、効く訳が無いだろう」


 今度は奴の杖が発光する。すると全方位を囲うように光のドームが形成された。こ、これは聖域(サンクチュアリ)ではないか!シオの矢は聖域(サンクチュアリ)を破壊したものの、防がれてしまった。ちっ、楽に首級をとるのは難しいか?


「一応、こっちも試してみるっす。二連射!」


 シオが素早く連続で二本の矢を放った。これは連続で射撃する分、一本の威力は落ちてしまう上に二射目の精度が大きく下がってしまう武技である。


「ぐあっ!?」

「あれ?意外とイケるっすね?」


 すると、一本は聖域(サンクチュアリ)で防げたようだが、二本目の矢はマクファーレンの肩を貫いた。あの武技の威力から考えて、ひょっとするとあの聖域(サンクチュアリ)の出力はそこまで高くないのかもしれない。と言うことは、その辺りに攻略の糸口がありそうだ。


「…作戦を考えた。私の手が空いたら試したい。シオ、手伝ってくれるか?」

「アイアイサー!大船に乗ったつもりで任せるっすよ!」


 シオは胸を叩いてそう答える。フワフワの羽毛の上に革鎧を纏っているので、ポスッと気の抜けたような音がした。

次回は6月10日に投稿予定です。

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