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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十一章 黒死の氷森
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黒死の氷森 その四

 気が付けば投稿開始から一周年ですね。よく続いたものです。これからも拙作を宜しくお願い致します。

 しっかりと休憩してログインすると、何かをぶつけ合う音が聞こえてきた。これは…間違いない。誰かが組み手を行っているのだ。


「ハッハァ!いいねェ!上手いぜェ?楽しいなァ、オイ!」

「今のもダメなの?凄いわねぇ」

「ははは。ここまで通用しないなんて、もう笑えてくるよ」


 対戦しているのはジゴロウと、邯那と羅雅亜のペアだった。魔術や武技は使っていないが、それ以外は本気でぶつかり合っているらしい。ジゴロウは籠手で火花を散らしながら邯那の方天戟を弾き、羅雅亜の突進を足捌きで躱している。


 流石は我ら『夜行衆(ナイトウォーカー)』で源十郎と最強の座を競い合う猛者だ。英雄僵尸(ヒーローキョンシー)となってステータスが上昇している邯那と、息ピッタリの騎馬である羅雅亜の闘技大会優勝ペアを相手に有利に立ち回っている。私には絶対に出来ないことだ。


 何にせよ、ジゴロウが寸暇を惜しんで殴り合いをしたがるのを見ていると、これまでは我慢していたのかもしれないと思ってしまう。いや、様々なタイプのプレイヤーが仲間になったことで箍が外れただけだろうか?どっちでもいいが、他のメンバーに迷惑だけは掛けるなよ。


「よう、ボス。まだ全員は集まってないで」

「そうみたいだな。急ぐ訳でもないし、ゆっくり待とう」


 観戦していると、七甲が私の杖に止まった。どうせ暇だし、彼と世間話でもして時間を潰すか。


「そうだ、七甲は掲示板とかをこまめにチェックするタイプか?」

「そうやなぁ…張り付いとる訳や無いけど、大体盛り上がっとる話題とかは一応ざっと読んどるで」

「なら、私が何が気になっているのかは分かるだろう?」

「転生システムしかないやろ、そんなん」


 七甲は即答した。そして、その予想は正しい。今最もホットな話題。それは転生システムの解放についてである。実際に転生したというプレイヤーが投稿したのはシステム周りについてで、何処に行って何をすればいいのかも書かれていなかった。なので、実際のところ判明していることは余り無い。


「その通り。私は今の種族(レイス)に不満は無いが、七甲はどうだ?」

「ワイも無いわ。進化したい先はあるけどな」

「ほう?聞いていいか?」

「ええで。ワイが目指すんは、烏天狗や!」


 なるほど。ジゴロウか源十郎から聞いたに違いない。アクアリア諸島には烏天狗がいたと聞くし、カラスの魔物である彼が目指そうとしてもおかしくないだろう。


「飛べるのはそのままに、手足が欲しいのか?」

「せや。手足が無いんは新鮮でおもろいんやけど、流石に不便さが際立って来てなぁ…。同じ理由でモッさんも少なくとも手がある種族(レイス)を目指しとるで」


 プレイヤーが道具に慣れている人間である以上、手足が欲しくなるのは致し方ないことなのだろう。獣、それも鳥系だと武器や防具を装備し過ぎると最大の特徴である飛行に支障をきたすので、攻防の両面で不安が残る。現状だと首飾りと足輪くらいしか装備出来ないのだ。最低限の武装が可能な姿になりたい、という気持ちになるのは当然かもしれない。


「しかし、手足を増やすとなれば簡単には行かないだろう。きっと難しいクエストやレアアイテムが必要になる。その時は出来る限りの手伝いをさせてくれ」

「やっぱり仲間がおると頼もしいわぁ~!ワイ一人でどうにもならん事があれば相談させてな」


 七甲はそう言ってカラカラと笑う。それからも全員が揃うまで、前衛組の組み手を見ながら雑談に興じるのだった。



◆◇◆◇◆◇



 『黒死の氷森』も中腹に差し掛かったのだろうか?出現する魔物は、不死(アンデッド)系と獣系や虫系が半々といった様子である。どうやら奥地へ向かえば向かうほど、不死(アンデッド)系が増えていく傾向にあるらしい。


 また、不死(アンデッド)系の魔物と他の魔物が争っている場面に何度か遭遇した。不死(アンデッド)は生命全てに襲い掛かる、というお決まりのパターンであるようだ。それを利用して漁夫の利を得た事も追記しておく。


「みんな、何かが近付いてくるよ!数は十二!」

「戦闘準備だ」


 いち早く敵の接近を感知したルビーが、警戒を呼び掛ける。我々も慣れたもので、反射的にいつもの陣形を敷いていた。


「イザームの親戚か?」

「かもしれんが、話は通じんと思うぞ?」


 現れたのは五体の杖を持つ魔術師然とした幽鬼(デモンスピリット)と、七体の剣と丸盾を持ち、全身甲冑に身を包んだ動く骸骨(スケルトン)だった。


 それだけなら不死(アンデッド)が軍隊のように行動している事に驚くだけだった。しかし、兜から露出している顔を見た時、違和感に気付く。その骨には金粉のようなものが混ざっているのだ。どう見ても普通の骸骨戦士(スケルトンウォリアー)などでは無い。一体何なのだ?


――――――――――


種族(レイス)幽鬼(デモンスピリット) Lv51~53

職業(ジョブ):呪術士 Lv1~3

能力(スキル):【杖】

   【知力強化】

   【精神強化】

   【暗黒魔術】

   【時空魔術】

   【虚無魔術】

   【呪術】

   【狂化】

   【怨叫】

   【物理攻撃透過】

   【魔術脆弱】

   【状態異常無効】

   【光属性脆弱】


種族(レイス)龍牙兵(スパルトイ) Lv52~55

職業(ジョブ):見習い剣士 Lv2~5

能力(スキル):【怪力】

   【剣術】

   【盾術】

   【鎧術】

   【体力強化】

   【筋力強化】

   【防御力強化】

   【敏捷強化】

   【恐怖のオーラ】

   【状態異常無効】

   【光属性脆弱】


――――――――――


 【鑑定】の結果によると、幽鬼(デモンスピリット)は思った通り魔術師系であるようだ。そしてもう片方の魔物は龍牙兵(スパルトイ)というらしい。こちらも見た目通りに不死(アンデッド)の一種で、かつ戦士系の能力(スキル)構成であった。


 だが、妙な部分もある。種族(レイス)のレベルと職業(ジョブ)の格が釣り合っていないのだ。能力(スキル)も進化している物が無いし、まるでプレイ開始直後のプレイヤーのようである。


「ひょっとして、作られたばかりなのか…?」


 種族(レイス)のレベルと職業(ジョブ)の格が合っていない原因として考えられるのは、龍牙兵(スパルトイ)が産み出された直後だからではないか?私はそう推測していたが、今はそれどころではない。分析や考察するのは後だ!


「いつも通りに行くぞ!幽鬼(デモンスピリット)は【呪術】を使う!気を付けろ!」

「わかったぜェ!オラァ!」


 ジゴロウが先陣を切って突撃し、そのまま龍牙兵(スパルトイ)に向かって飛び蹴りを食らわせる。盾を構えているが、ジゴロウの蹴りは我々の中で最も重いエイジですら吹き飛ばす威力があるのだ。進化もしていない能力(スキル)しかない、骨だけの身体で受け止めきれるかな?


「カガッ…」

「次ィ!」

「ガッ…」


 飛び蹴りを食らった龍牙兵(スパルトイ)は案の定吹き飛ぶ。【怪力】という能力(スキル)があったが、それはジゴロウと同じこと。力のぶつかり合いで勝てはしなかったようだ。


 更にジゴロウは空中で身体を独楽のように回し、回し蹴りを他の龍牙兵(スパルトイ)に叩き込んで蹴り飛ばす。相変わらず、人間が中にいるとは思えぬ動きだ。


「ジゴロウに続けぃ!」

「はい!」

「行くぜ!」

「グオオオオオオン!」


 単身で飛び込んだジゴロウを追うように、前衛組が斬り込む。羅雅亜に跨がった邯那の突撃がジゴロウの穿った穴を広げ、源十郎達が乱戦に持ち込んだ。カルも上空から急降下して爪や尻尾で薙ぎ払っている。よし、ここからは私達の仕事だ!


龍牙兵(スパルトイ)は前衛に任せて、私達は幽鬼(デモンスピリット)を処理する!いつも通り、落ち着いて狙え!」

「はーい」

「了解っす!」


 【時空魔術】による瞬間移動を警戒しながら、味方に【呪術】などを使おうとするタイミングに合わせて魔術を当てる。それを繰り返してやれば危なげなく勝利出来るハズ。私がそう思った時だった。


「あぇ!?う、動けない!?」

「エイジ!?」


 龍牙兵(スパルトイ)の一体を受け持っていたエイジが、唐突に硬直して動けなくなったのである。彼のマーカーには状態異常のアイコンが出ているではないか!


「恐怖…?しまった!【恐怖のオーラ】か!」


 エイジは龍牙兵(スパルトイ)の【恐怖のオーラ】の効果を受けてしまったらしい。私の【深淵のオーラ】と同じく低確率で状態異常に掛ける能力(スキル)だと思われるので、『どうせ掛からないだろう』と高を括っていた。


聖盾(ホーリーシールド)!カル!エイジを連れて一度退いてくれ!」

「グルッ!」

「七甲、ありったけの召喚獣で撹乱!」

「はいよ!」


 このままではエイジが一方的に殴られてしまう。私はまず彼と龍牙兵(スパルトイ)の間に壁を作り、時間を稼ぐ。次にで空を飛べてかつ力が強いカルに引っ張ってもらう。さらに撤退を確実なものにするために、七甲の【召喚術】で足止めすれば…


「た、助かりました!」

「動けるまでどれくらい掛かる?」

「あと十秒って所です」

「回復するまではここで待機だ。カル!他にも恐怖状態になった者が現れたら、同じようにここまで運んでくれ」

「グオオオオッ」


 カルは力強い返事と共に羽ばたいて行った。進化してより大きく、そして雄々しくなったカルの戦闘力は非常に高い。パワフルで荒っぽい戦い方は、味方である我々も思わず恐ろしく感じる時すらあった。


「げぇっ!?動けない!」

「紫舟もか。カル!」

「グオゥ!」

「もう行けます」


 カルは手早く恐怖で硬直している紫舟を回収して戻ってきた。それと入れ替わるように状態異常から回復したエイジが立ち上がる。カルは私が何も言わずとも彼を持ち上げ、戦場へと連れていった。


聖光(ホーリーレイ)!カル君は賢いですね!」

浄化(ピュリフィケイション)!全くだよ」


 カルのお陰で恐怖に陥っても即座に後方へ逃げる事が可能である以上、我々に負ける要素は無くなった。このまま一気に殲滅してやろう!


◆◇◆◇◆◇



 それからも何度か恐怖状態になったものの、それ以外は問題なく不死(アンデッド)の群れを討伐は終了した。


「危なかったですね」

「ああ。状態異常への備えを怠っていたな」


 戦いが終わった後、私はモッさんの率直な意見に同意した。寒冷対策はしっかりとしていたものの、それ以外は不十分だったと言わざるを得ない。情報が限られていたから仕方がない面もあるのだが、基本的に石橋を叩いて渡るタイプの私にとっては悔しい誤算だった。


「ここから先は恐怖などの状態異常にも気を付ける必要がありそうです」

「私も同意見だ。だが、流石にここで撤退するのは臆病過ぎる。もう少し探索を続けよう。ここの魔物からのドロップで恐怖耐性を得るアイテムの素材が見つかるかもしれない」

「それは…あり得る話ですね。わかりました他の皆にも伝えておきましょう」


 思ったよりも『黒死の氷森』は難敵であるかもしれない。急いでいる訳でもないので、腰を据えてじっくりと攻略するとしよう。

 次回は5月9日に投稿予定です。

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