最終話「天性の馬鹿は転生を決意する」
学校で虐められ不登校になり、インターネットでしか他人と触れあわない生活を続ける自分がとある小説投稿サイトに出会ったのは、つい最近の事だった。
そのサイトでは、とあるジャンルの小説が流行っていた。
それは『異界転生』と『チーレム』だ。
この現実世界で死んだ人間が、神様に助けられ、異世界で新たな人生を歩む。そんなストーリーな『異界転生』。
特殊な異能を持つ主人公が、その異能を乱用し敵を倒し美少女にモテまくる。そんなストーリーな『チーレム』。
感動した。
こんな事があれば、今の自分だってどうにかなるのでは無いか。
だから、試してみる事にしたのだ。
前者――異界転生ものでは、主人公は冒頭で一度死ぬ。
死因は、大体「トラックに轢かれる」だ。
だから、試してみる事にしたのだ。
……いや、分かっている。これは緩やかな自殺だと。いや、緩やかですら無く、ただの自殺だと。
だが、これはただの自殺では無い。
生きる為の自殺なのだ。
だから、遺書をしっかりと書き残し、家を出て、トラックが通りそうな場所まで来て。
「あ」
異世界に転生してチーレムを築く為に家を出た俺は重大なミスに気付いた。
「ここ、田舎じゃん……」
トラックなんて、滅多に通らねぇよ……。




