カミーユの過去:②
今回は少し長め? です。
新たな登場人物の登場です。
かみーゆは しりませんでした
じぶんが いまながめている “ふね”が “ぎょせん”であること
“りょうし”という にんげんが どんなことを するのかなんて
ちっとも しりませんでした
さらに めずらしそうに うみのなかから ふねをみつめる
かみーゆを みていた にんげんが いるなんて ……
「いけない !
おばあさまが まっているわ !
はやくかえらないと !」
かみーゆが そういったときでした
とつぜん うみのなかから くろくて おおきなあみが でてきて
かみーゆを すくいあげたのでした
「きゃぁ !」
かわいそうな かみーゆは みずからあげられて じゆうに うごくことも できません
みずのなかで ないと さかなのひれを つかうことも ままならないのです
てで あみをわけてみても ぱにっくに なってしまっている
かみーゆは うまくほどけず
ぎゃくに どんどんと からみついてしまいました
「だれか ! たすけて !
おとうさま ! おかあさま!」
さけべども ここは ふねのうえ
いつも すいちゅうでしか くらしたことがない かみーゆの こえは
うみから あがってしまえば とてもちいさくて
きこえるはずも ないのでした
「…… おまえ “にんぎょ”なのか」
そんなこえがして やっと かみーゆは じぶんをとらえた
じんぶつである せいねんに きがつきました
すこし あかくなっている やけたはだに
わずかに ちゃいろがまじったような くろいかみ
おなじく くろいひとみで かみーゆのことを ずっとみているのでした
「そうよ
あなた だあれ ?」
かみーゆは せいねんのことを ながめ
そして すこしけいかいして いいました
だって せいねんは ひれもなければ うろこも もっていなかったのです
そのうえ こしからしたは へんなものを
みにつけていて にほんの “うで”(かみーゆは それが “あし”である ことも しりませんでした)で たっているのでした
「うでが よっつもあって
そのうちの ふたつの うでで
からだを ささえている なんて …… すごいわ
わたしなんて ぜんぜん ちからがない
から だめね」と かんしんした ように つげたあと
「あなたは にんげんなの ?」とききました
せいねんは めのまえの にんぎょが にんげんの ことを
よくしらないんだと すぐに きがつきました
なぜかって にんぎょは にんげんがきたら
てきいを みせてくるか にげてしまうからです
それに にんげんが “うで”で あるくわけが ないですからね
せいねんは あらためて めのまえの にんぎょを みつめました
さっきは ちちおやから きいたはなしや
ものがたりで みたことがあるよりも
ずっとずっと うつくしい そのすがたに
めを うばわれてしまいましたが
あらためて よくかんさつしてみると
あみを はずそうと もがいたからでしょうか
しらうおのように うつくしいはだが ところどころ すりきれていたり ちがにじんでいました
あわてて あみを はずしてあげると
じっと せいねんを みつめたあと 「ありがとう」といって
わらう そのすがたに そのこえに
またも こころが ひどく ゆさぶられるのを かんじるのでした
おなじく りょうしである じぶんのちちおやも
にんぎょを みたことがある といっていましたが
そのときは 「ふねを しずめられそうになった」ときいていたので
めのまえの にんぎょが なぜ こんなにおちついて
じぶんと はなしているのか わかりませんでした
こうして にんげんの 『えりく』という せいねんと にんぎょである かみーゆは であったのでした
もう少し過去の話が続きます。