寒空のしたで
これは次の新作に向けての練習として書いてみた短編です。
まだ慣れてないので微妙な感じかもしれませんが、勘弁してください。
12月のある日。
風も冷たくなり、太陽が出てるのにも関わらず全身に寒さを感じる。雪がいつ降ってもおかしくない天候になってる、と天気予報で言ってたっけ。
そんな寒い中、灰色のカーディガンと黒いシャツ、ジーパンをはき、白黒のマフラーを首に巻いて1人で道路を歩いているオレ。寒いからポケットに手を突っ込んで、少しでも寒さに耐えようとしている。
ふと、自分の吐いた息が白くなってるのに気づく。
こりゃ、相当寒いな。手袋してこりゃよかったな。あ、手袋持ってないんだった。買おうかな。でも、手袋なくてもポケットに手を突っ込めば済むしなぁ。
あ、良い子は手袋買ってね。ポケットに手を突っ込んで歩いたり走ったりするのは危ないからね。転んで顔面を地面に打つことになるよ。
「ちょい!?」
こんな風にね…
思っきり顔面を地面に打ち付けて転倒するオレ。
幸い誰もいなかったため、恥ずかしい思いはしなかったけど、顔面が痛い。たぶん、鼻が折れたね。元から低い鼻が更に低くなったぞ、これ。ホントに折れたらこんな冷静ではいられないがな。
どうよ?わかったっしょ?ポケットに手を突っ込んでると危ないからね。
鼻をさすりながら、また歩き出す。
オレの目的地は、この先にある公園だ。約束があるからね。
女の子を待たせるのは良くない。だから、オレは5分前に待ち合わせ場所に行く。紳士としてな。
あ、オレは紳士を目指してる。完全なる英国紳士をね。日本生まれで、完全なる英国とか何言ってんだ、なんて突っ込まないでね。気持ちなんだよ!気持ちが大事なんだよ!!
なんてやってたら、公園が見えてきた。周りは木で囲まれ、公園の中には滑り台やブランコ、ジャングルジム等がある。まあ、普通の公園だ。
この辺には、この公園しかなく普段は人が多い。だけど、今日はほとんど人がいない。
まぁ、そりゃそうか。
こんな日に公園なんて普通は来ない。行くならお店とか、家の中だろう。
おかげで、待ち合わせ場所ですぐ合流できる。
ほら、見えた。公園のど真ん中にポツンと建ってる時計の下で待ってるよ。
…ん?待ってる??
ちょっと早歩きしよう。
ツカツカと、その時計の下で待つ女の子の方へと向かっていく。
その女の子は、茶色のコートと赤いスカート、黒いニーソックスをはき、真っ赤なマフラーを首に巻いている。黒い髪を後ろで束ねたポニーテールの女の子は、オレに気づき手を振ってくる。
だが、それどころではない。
オレはコイツに言うことがある。
「おまっ!なんでオレより早く来てんだよ!!」
「…は?」
オレの言葉にキョトンとする女の子。
だが、オレは言葉を続ける。
「オレの計画台無しだよ!お前より早く来て、『ごめーん、待った?』『いや、さっき来たばっかだよ』って、くだりをやろうとしてたのに!ほんとは前から来てたけど、今来たばっかだよ、って嘘つこうとしてたのに、何なんだよ!!」
「…あんた、そんなこと考えてたの?」
女の子がジト目でオレの方を見る。
それに気づき、少しずつ落ち着いてくるオレ。
「えっと…」
ぽりぽりと頬をかく。
やべーよ、やっちまったよ。これはやべーよ。
「あんたがもう少し遅かったら、私は他の人に着いてってたわ」
腕を組み、フンと鼻をならす。
「は?何言ってんの?」
「私と一緒にいたい人は他にもいるの。さっきもナンパされたし」
「は?何言ってんの?」
「まぁ、待ち合わせ時間前に来たから許したげるわ。ほら、行くわよ」
そういって、オレの腕を引っ張って歩き出す女の子。
「おまえ、オレの事好きなんじゃないのかよ!」
そう思ってたから今日誘ったのに!
ってか、あれ?付き合ってるはずだよな?あれれ?
「な、何言ってんの?誰があんたみたいなのタイプなんて言った?」
オレの方を振り返らずに、前へと進みながら言う女の子。
「…なんだコレ。オレただの馬鹿じゃん。5年振りにできた彼女とデートだって浮かれてたら、なんだコレ。オレ道化じゃん。ピエロだよ!これじゃオレただのピエロだよ!!」
「うっさい!」
オレの腕を引っ張ったまま、オレを殴り飛ばす女の子。
「へぶんっ!?」
腕を引っ張られてるせいで、もろに食らう。
やべー。滅茶苦茶痛い。心も痛い。もう絶望しかないよ。
「なに?行く気ないの?無いなら私帰るよ」
女の子が落ち込み始めたオレを睨み付ける。
「…行きます」
「なら、さっさとついてくる!」
「はい…」
女の子はオレの腕を引っ張って公園から出ていく。
が、公園を出た瞬間に女の子はピタリと足を止めた。
「?」
な、なんだ?まだ殴りたりないのか?
「…なんか私に言うことないの?」
「え?何を?」
言うこと?さっき文句言ったし、もうないなぁ。言ったら言ったで殴られそうだし。
「…死んでしまえ。この天鈍!!」
「天丼?食いたいのか?」
「おまえ…殺したろか」
「…ごめんなさい」
理不尽だ。天丼じゃないのか?てんどんって他になにがあるんだよ…
オレは彼女の言う‘天鈍’に一生気づくことはないだろう。
天鈍。天然+鈍感。それを短縮して天鈍。
はは、気づくわけねぇや。
「ほら、さっさと行くわよ!」
「…あい」
ずんずん、とオレを引っ張って歩いていく。
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時は流れ、既に夜。
気温は更に低くなり、寒さが全身を襲う。
だが、オレの心はもう氷点下をこえてるんだ。
もうね、この半日罵倒され続けたよ。
オレの心はズタズタだよ。
その原因はオレのせいでもあるんだけどね。
「晩御飯も食べたし、今からどうする?」
晩御飯を食べたお店から出てきて、外の寒さで手に息を吐く女の子。
「まだ行きたいところはある?」
とりあえず、行きたい所があるかどうか聞いとくか。あったらそこ行きゃいいし、無かったら無かったで適当にどっか行けばいいや。
「うーん…、少し歩こうよ」
「歩くの?いいけどどっちに?」
「こっち」
と、指を指す。
「じゃあ、行くか」
指差された方向に歩き始める。
が、何故か女の子が歩き始めない。
「どした?」
それに気づき振り返る。
女の子はこっちを睨み付け、スカートを握り締めている。
「…天鈍」
「え?」
「ん!」
手を差し出してくる女の子。うつむき加減で睨み付けてくるため、少し怖いんだが。
「えっと、繋げばいいのか?」
「寒いからしょうがなく繋いであげるの。勘違いしないでよ」
ふん、と顔をそらす女の子。
それにオレは怯えつつも、手を繋ぐ。
「さっさとしなさいよ、トーテムポール!」
おっかなびっくりで手を繋いだオレに、やっぱり文句を言ってくる。
と、トーテムポール?オレそこまで背は高くないぞ。170よりちょっと上なだけだし。
「ったく、行くわよ」
ギュッと手を握ってくる女の子。そのまま進み始める。
オレは思わずドキッとする。ドキドキ鼓動が早いぜ!これ爆発すんじゃね?
オレが1人で考えてる間にも、ドンドンと進んでいきいつの間にか街から抜けて斜面を進んでいた。
「…あれ?どこいくの?」
斜面を登ってる時に我に返り、聞く。
「どこって、空がよく見えるとこよ」
「そーですか」
へー。夜景か。ってか、ここって…
「何よ、文句あんの?」
オレがふと周りを見回していたら、また睨み付けてきた。
「ここオレが教えた所じゃん」
「うっさい!」
「っつ!?」
脛を足で蹴られた。
「さっさと来なさい!」
「はいはい…」
脛を擦りながら斜面を登り終える。
展望台の様になっているそこで、ベンチに並んで座る。
ギシッと音をたて、軋むベンチ。
オレは背もたれにもたれ、空を見上げる。
彼女も脚を伸ばして、伸びをする。
「…星、少なくなったなぁ」
ふと、真っ黒の空に小さく光る点を見ながら言う。前は、光る点がもっと一杯みえた。が、今はかなり少なくなってしまっていた。
「なにあんた。星に興味あるの?」
「ないよ。でも、子供の時に見た空とはだいぶ変わっちゃったなぁって思っただけ」
「ふーん…」
彼女も空を見上げる。
「…」
「…」
そして、沈黙。
あれ?オレの事タイプじゃないって言ってたのに、何でオレと夜空見てんだ?タイプじゃないなら一緒に見ずに、帰りそうな気がするんだが。
「…ねえ」
「ほ?」
1人考え事をしていて、変な返事をしてしまった。
「ほ?って…。まあいいや。今日楽しかった?」
少しうつむき加減で聞いてくる。暗いため表情が見えない。睨まれてるのか?オレは睨まれているのか?
「肉体的にも精神的にも痛かった」
「…」
「でも、楽しかったよ。わざわざオレなんかのためにほぼ1日付き合ってくれて嬉しかった」
「…は?あんた何言ってんの?」
「は?おまえも何言ってんの?」
え、どゆこと?オレ感想言っただけだぞ?変なとこあったか?
「オレなんかって、あんた何他人みたいな感じで話してんのよ」
「え?いや、だってオレの事好きじゃないんでしょ?」
「は?」
「は?」
ん?なんだ?なんかおかしいぞ。
「あんたは…、ほんっと…、天鈍!!」
「…」
しまいには泣くぞ、こら。
「好きじゃない男と1日中、しかもクリスマスを過ごすと思ってんの?あんた、自分が女だと思って答えなさい」
「……思わないです」
なんで、好きでもないやつとクリスマスをすごさにゃならんのだ。
…ん?
「なにあんた?最後まで言わないとわかんないわけ?」
「いや、でもタイプじゃないって…」
「うん、言った」
ぐはっ…
ハートを抉られたぞ。
「タイプじゃないの。理想のタイプじゃないの」
「…うぅ」
あれか。止めをさしにきたのか。今日、オレは死ぬんだな。まぁ、いいさ。好きな人に殺されるんなら。
「タイプじゃないけど、好きになっちゃったのよ。あんたのこと」
「…へ?」
「それに、私はあんたのこと嫌いなんて言ってないわ。タイプじゃないとは言ったけど」
「あ…」
「タイプは正反対。でも、あんたの事は好き。」
「…お、おお」
「…な、なによ。文句でもあんの?」
「ありません。今は何て言うかホカホカしてる」
「ホカホカって何よ…」
「わかんね。でも、何かホッとしてるというか、なんというか」
「ちょっと!私だけ恥ずかしい思いしたのに、あんたは何も言わないわけ!?」
「オレ?オレは元からお前しか好きじゃないし」
「んなっ!?」
「んー?あ、照れてんのか?おい」
と、つい調子に乗って彼女の頬を突く。
「っ!」
「触んなっ!!」
「いでっ」
案の定腹を殴られた。
ただ、手加減されたのかあまりいたくない。
「ったく、あんたは…」
はぁ、とため息をつく彼女。
ふと、彼女が寒そうにしてる事に気づく。
「…」
「ちょ!?な、何すんのよ!!」
少しでも寒さを和らげるかな、と肩をオレの方に抱き寄せると、やっぱりな反応。
「…お前、あったけぇな」
ただ、彼女の体温は伝わってくる。
「あんたが薄着すぎんのよ。こんな真冬なのに」
「はは、だな。」
「馬鹿じゃないの?」
彼女は拒まない。
そのままオレの方に頭を預けてきた。
「…馬鹿だな。だから、お前がいないとダメなんだよ」
「んなっ!?」
「お?また照れた?」
「……ふん、裏切ったら許さないんだからね」
「おう。ずっと隣にいてもらうからな」
「うん、あんたこそ隣にいなかったら怒るわよ」
「おう」
こんばんわ。
上手くかけてる自信はありませんが、楽しんでもらえたら幸いです。
あと、よかったらコメントもいただけると嬉しいです。