第三夜 壁画
こんな夢を見た。
建物の下ではマグマが蠢いている。あと数分もすれば真下にある火山が噴火するという。建物の中の人々は我先にと押し合うように外へ抜け出そうとしている。僕もその中の1人だった。
そんな中で建物の壁に絵を描き続けている人間が数人見受けられた。僕は彼らが気が狂ったのではないかと思った。この状況で何を優雅に絵など描いているのだろうか。
絵には記号化された動物のようなものがいくつかと、不規則に並べられた数字が見られた。その数字の意味は分からない。
その動物たちを見て僕は、そういえば世界史の教科書で見た原始人が描いた洞窟の壁画にも似たようなものがあったなと、この状況ではあまりにもどうでもいいことを考えていた。
「何をしているんです?早く逃げないと爆発しますよ?」
と僕が叫んでも彼らは
「この絵を描ききったら逃げますよ」
と冷静沈着に答えるだけであり、僕は彼らを説得するのを諦めた。
彼らはおかしくなったに違いない。こんな状況で絵を描ききってどうなるというのだ。ここが爆発したらその絵も木っ端微塵になってしまうのである。
僕はなんとか麓まで降り、できる限り山から離れようとした。その時、山頂で大爆発が起こった。それにより火の玉となった噴石が麓の街にまで落ちてきて大きな被害が出た。
そして大爆発とともにあの建物も吹き飛んだのが遠目ながらに見えた。絵描きの人達は無事逃げ切れたのであろうか。それに絵は完成したのだろうか。もし完成したのだとしても後世に伝わることはないであろう。あの爆発で絵が残っているとは思われない。
僕はしばらく逃げるのを忘れて噴火口を眺めていた。




