ーー第1章 「再生する世界の始まり」ーー
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そして……新しい世界にて、セレネは目覚めるーー
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………………いか………………で……
……お……いてか……ないで…………
セレネ「……おいてかないでっ……!」
セレネ「っ…………!」
セレネ「…………
……ここ……は……?」
セレネ「……うっ……まぶ、しい……」
セレネ「…………?」
セレネ「……明、るい……?
…………
これは、光……白い、光……?」
セレネ「…………!
……お母さんが、言っていた……
……白い、輝き……?」
セレネ「…………
……上から……降り注いでる……」
セレネ「…………
…………!」
セレネ「……世界の、鏡がっ……白く……輝いてる……!」
セレネ「…………っ!
……それに……暖かい、風……
…………緑の……大地…………」
セレネ「……っ……!」
セレネ「……もう……ここは……」
セレネ「…………
……私の、生きてきた……
……私たちの……世界、じゃないんだっ……」
セレネ「……っ……
……もう……女神さまと……
お母さんとは……会えない、のかな……」
セレネ「…………っ
……いや……だよっ……」
セレネ「…………!
あの……大きな樹はっ……!」
セレネ「……っ!
女神さまっ……お母、さんっ……!」
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そして、大きな樹の前にてーー
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セレネ「……女神さまっ……お母さんっ……!
……どこっ……どこに、いるの……?」
セレネ「…………っ
……返事……して、よ……」
セレネ「……私はっ……
わたしは、ここに……いる、よっ……」
セレネ「……だか、ら……
……おねがい、だから……こたえ、てよ……」
セレネ「…………
……っ……!」
セレネ「……入口が……
…………閉じ、てる…………?」
セレネ「……っ
なんでっ……なんで……なの……」
セレネ「……お願い……」
セレネ「…………っ
…………お願い、だから…………」
セレネ「……開いてよっ……
…………会わせてよっ…………
…………あいたい、よ…………」
セレネ「…………どう、して…………
…………どうして、あえない……のっ…………」
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……セレネの叫びは……悲しみの、想いの限りの……叫びは……
……虚空に消えていった
……疲れ果て、崩れ落ちるように……
大きな樹にもたれかかる、セレネを……暖かな光が、包み込む……
……その光は、暖かな記憶を……セレネに思い起こさせた
……かつて、母に抱きしめられたことを……
……そして、女神から託された言葉の数々をーー
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セレネ「…………っ!
……暖、かい……」
セレネ「……っ……
……この、温もりは……
……女神さま……お母、さんの……」
セレネ「っ…………!
…………」
セレネ「…………
…………わかっ……たよ…………」
セレネ「…………っ
……二人の、願い通り……私は……
…………私、はっ…………
……この世界を、見守っていく……からっ……」
セレネ「…………
…………だから…………」
セレネ「……また……
……会いに来ても、いい……かな……」
セレネ「……何回でも、ここに……
……この……暖かな、場所に……」
セレネ「……っ……
……それ、くらいなら……
……許してくれる……よね……」
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……そして、セレネは……再生する世界を生きていく
…………
……新しい世界での日々を過ごす中、
あるとき……彼女は、物思いにふけるのだったーー
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セレネ「(……この世界で、しばらく過ごしてみたけど……)」
セレネ「(……人間たちが、穏やかに暮らしてくれていて……
……本当に、良かった……)」
セレネ「(……今のところは、大丈夫……
…………
……あの……女神さまの記憶に合ったような、
人間同士の……悲しい争いも、起こってない……)」
セレネ「(…………
……このまま、何事もなければ……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(…………まあ、私は…………
あの人たちとは……関われない、のだけどね)」
セレネ「(……私は……怖いんだ……
……大切な人を、失うのが……)」
セレネ「(……っ……
……もう……あんな……
……悲しい思いは、したくない……)」
セレネ「(……だからこそ……
…………
……女神さまの言っていた、見守る者……
……そんな、言葉で……)」
セレネ「(…………
……都合よく、今の自分を……役割としての私を……
正当化……してるんだろうな……)」
セレネ「っ……!」
セレネ「(……だめだ……
今は……私のことじゃない)」
セレネ「(……この、世界を……
……女神さまとお母さん、お父さんが……)」
セレネ「(……大切なみんなが、繋いでくれた世界を……
……私が、守らないと……)」
セレネ「っ…………」
セレネ「(……だから、今は……
あのことについて、考えよう……)」
セレネ「(…………
……あの、『魔物』……という、
人間たちが、そう呼んでいる存在について……)」
セレネ「(……私が感じた限り、あの魔物たちは……
人間たちとは違って、陰と陽の心を持たず、
ただ……そこに、あるだけの存在……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……なんで、私は……
……心を感じることが、できるんだろう……)」
セレネ「(……前の世界では、こんなこと……
……全く、分からなかったのに……)」
セレネ「(…………
…………女神さま、なら…………
…………お母さん、なら…………
……聞いたら、教えてくれた……のかな……)」
セレネ「……っ……!」
セレネ「(……また……考え、ちゃった……)」
セレネ「(…………っ
だめだめ……しっかり、しないとっ……!)」
セレネ「(……魔物について、考えよう!)」
セレネ「(…………
……とにかく……
魔物たちは心を持たない、空っぽの存在……)」
セレネ「(……そして……
存在している場所に、明確な偏りがある)」
セレネ「(……その場所は、あの……大きな樹を……
…………
……世界の中心にある、大きな樹……)」
セレネ「(……あの聖域を境にして、
片側にしか……存在していない)」
セレネ「(……姿は、人間そのもの……
……だけど、違うところがある……)」
セレネ「(……お母さんのような……
悪魔のような……黒い、翼……)」
セレネ「(……そして……顔と、身体の輪郭がボヤけて……
……はっきり、しないことだ)」
セレネ「(……それに、言葉を話すことも……
……鳴き声を発することも、ない……)」
セレネ「(……本当に、そこにあるだけの存在……
…………
……世界の、背景……景色の一部……みたいな……)」
セレネ「(……あんな存在は……
女神さまの記憶には、いなかった……)」
セレネ「(…………
……本当に、あの魔物たちは……なんなんだろう……)」
セレネ「…………」
セレネ「(…………まあ、
今は何事もないから……いい、かな)」
セレネ「(…………
……何か起こった時は、私が……何とか……
……何とかする、だけだしね)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……もう……この世界には……
…………私しか、いないんだから…………)」
セレネ「(…………
……私が、やるしか……ないんだ)」