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女神の願い、ひとの答え  作者: しーぶる
<前編>~女神の願い~
5/12

ーー第5章ーー

------

そして、最も強い悪魔との戦いの後……

                ------

           

ひと「いま、楽にしてあげるからね」



ひと「……!」



ひと「……っ……!?


   消え……ない……?

   

   力を、吸収したのに……どうして……?」



悪魔「……っ!?


   離れてっっ!」




------

……吸収しようとする際に、


聞いたことのある声が……響いた



……しかし……


これまでとは、違っていた




響いた……いや、轟いた叫び声は……


……いままでより、ハッキリと……世界を震わせた



世界のすべてを、存在から揺るがすような……


……小さくとも、確かな叫び声だったーー

                     ------


悪魔「…………っ


   ……また……こう、なるのね……」



ひと「……!


   ……あれはーー」



天使「ーー想いの、暴走だ……」



ひと「……!?


   ……想い……?


   ……心を、失っているのに……?」



天使「……たとえ心を失っても、


   命を……己の存在を得た以上、


   ……逃れられない想いが……あるんだ」



天使「…………


   消えたくない……という、想いが……」



ひと「……!


   ……消えたく、ない……」



ひと「……その想いが、


   暴走……してる……?」



悪魔「…………

   

   ……以前にも、あったのよ……」



悪魔「…………っ


   追い詰められた悪魔が、


   ……同じように、暴走したことが……ね……」



ひと「…………!


   ……前にも……?」



悪魔「前に……天使さんが言っていたでしょう


   ……今の天使と悪魔の姿は、


   その時の暴走のせい……なの」



ひと「…………!


   …………


   ……あの、荒野で……


   初めて……あの存在たちに、出会ったとき……」



悪魔「そうよ


   ……あの時、天使さんは言っていたの


   元々は……私たちに近い姿をしていた、って……」



ひと「…………っ!


   ……天使さんとお母さんとは、違う……


   ……大きくて怖い……のに……


   私に似てない……姿、なのに……


   ……元々……は……」



天使「……そうだよ


   …………


   私たちの姿は、君に似ている……


   ……ただそれぞれ、


   背中に黄色い翼と、黒い翼が……あるだけだ」



悪魔「……私たちが、この姿でいられたのは……


   想いの暴走を経ても、この姿でいられるのは……


   …………


   ……あなたのおかげ、なのよ」



ひと「…………!


   ……私の……?


   ……どういうーー」




------

ひとが問いかけようとした時、


悪魔の叫びが、動きが……止まった……


…………


その直後、ひとが苦しみ始めるーー

                ------


ひと「ーーっ……!?

   

   ……うぅ……なに……?


   ……これ、は……」



天使「……っ!


   この子の力が、急激に増しているっ……!

   

   ……吸収した力も、


   暴走しているのかっ……!?」



悪魔「……っ!?


   天使……さん……?


   この子は……


   ……この子なら……大丈夫、ですよね……?」



天使「…………っ


   この状態が続けば……


   ……この子の心は、


   強い想いに飲み込まれてしまう……かも、しれない……」



悪魔「……っ!


   ……そん、な……」



天使「……っ


   そして……かつての君や、彼のように……


   この子も……暴走して、心を……」



悪魔「…………っ!


   ……だめっ……


   この子は……私が……


   ……何か……何か、ないの……?」



悪魔「…………!


   …………」



悪魔「……ふぅ……


   …………っ


   天使さん、大丈夫です……


   ……私が、この子を支えます」



天使「……っ!


   ……君が……?」



悪魔「はい、私が……支えます……!


   …………


   ……この子と、私……


   ……そして、天使さんは……繋がっている」



天使「……!


   ……それは……」



悪魔「……だからこそ、


   この子みたいに、吸収の力がなくても……


   ……私たちの間でなら、力の受け渡しができるーー」



悪魔「ーーそう……


   ……でしたよね」



天使「……っ……! 


   ……まさ、か……」



悪魔「……はい」



悪魔「……この子が安定するまで……


   ……私が……


   私が、暴走している力の一部を……受け取ります」



天使「……っ


   ……でも、それでは君が……」



悪魔「……そう……ですね


   ……一部とはいえ、


   暴走している力を取り込めば、私も……」



悪魔「……でも、この子が……


   心を失わずに、いられるのなら……


   ……私のことは……いいんです


   …………


   あの……約束をした時から、覚悟はしていますから」



天使「……!


   ……君は……あの約束を……


   …………っ


   ……もう、覚悟しているんだね……」



悪魔「…………はい


   ……あの、約束が……


   …………


   この子の未来を、繋ぐことだけが……


   ……私の生きる、理由ですから」



天使「…………っ」



悪魔「……それに、陰の力は……


   今の天使さんでは……受け取れない、ですよね」



天使「……っ!


   ……そう、だね


   今の私では……できない」



悪魔「だから、今……


   この子を救えるのは……


   ……悪魔である私しか、いないんです」



悪魔「……迷っている暇もありません


   あの暴走している悪魔が……もう一度動き出す前に……」



天使「…………っ


   ……わかって……る……」



悪魔「今は……


   この子に吸収された力を、回復するために……


   ……一瞬の眠りについているだけ、です」



天使「……っ


   ……わかって、いるんだ……」



悪魔「……天使さん、この子のためにも……


   ……私たちの光である、この子の未来を繋ぐためにも……


   …………


   ……任せて、ください」



天使「…………!


   ……っ」



悪魔「……ふふっ……


   ……私は、大丈夫ですよ~」



悪魔「……天使さん、


   二人で……約束したではないですか


   …………


   何があっても、この子を守ると」



天使「……!


   ……それ……は……


   ……っ……」



悪魔「……それに……


   何があろうと、


   私たちの結末は……変わりません」



悪魔「……その時まで、私が……


   ……私を保っていれば、いいだけですから」



天使「っ……!


   ……そう……だったね……


   …………っ


   ……任せる……」



悪魔「はい、任されました~」




------

そして……


悪魔が、ひとの力の一部を受け取った後ーー

                  ------


ひと「……!


   ……ぅ……?


   ……あ……れ……?


   ……苦しく……ない……?」



天使「……!


   ……大丈夫かい?」



ひと「…………!


   ……はい……!


   苦しく、なくなりました……!」



ひと「……!? 


   なにか……強い力も、感じます!」



悪魔「……よか……った……


   ……ふぅ……


   …………」



ひと「……?


   ……お母さん……?」



悪魔「……それはね、


   暴走した悪魔の力……なのよ


   ……長くは使えないけど……


   あれを止めるために、役に立つわ」



ひと「……暴走……?


   あれを、止める……?」



ひと「……!


   …………っ


   そうだ……終わらせて、あげないと」



天使「今は、まだ……眠っている

   

   ……けれど、力が回復しているから……


   もうすぐ……目を覚ますだろう」



天使「……目を覚ましたら、


   器が動けなくなるまで……止まることはない」



ひと「……っ


   ……そんな……」



天使「君の新しい力なら……


   ……暴走した悪魔にも、対抗できるはずだよ


   ……だから、終わらせてあげてくれ」



ひと「……!


   ……でも……


   …………っ


   ……この力を使っても、大丈夫でしょうか……?」



ひと「……さっき感じた、


   力に飲み込まれる……


   ……あの感覚が、怖くて……」



ひと「それに……なんだか……


   ……お母さんの様子も、おかしいような感じが……


   ……苦しそう、というかーー」



悪魔「ーー大丈夫よ


   ……私が、あなたを支えるから……


   ……何があっても」



ひと「……っ……!」



悪魔「……それに……


   …………


   ……私たちの場所を、


   守って……くれるんでしょう……?」



ひと「…………!


   ……守る……私が……」



悪魔「……そのためには、進むしかないのよ


   だから……ね


   安心して、力を使いなさい」



ひと「……っ!


   …………」



ひと「……うんっ……!


   …………っ


   ……私が……私が、守るんだっ……!」



ひと「……天使さんとお母さんと私……


   ……私たちが生きる場所を、守るんだっっ!」



悪魔「……うんっ……


   ……あなたなら……きっと……


   きっと、できるよっ……」



天使「…………っ」



悪魔「(…………


    ……ずるい言い方をして、ごめんね……)」

    


悪魔「(どれだけ恨まれようとも……


    ……私は、あなたに生きてほしいの


    あなたの存在自体が……私にとっては希望だから)」



悪魔「(…………


    ……これは、私の我儘……


    だから……


    ……だからね、最後の時まで……貫き通すよ)」




------

そして……


最も強い、暴走した悪魔との戦いの後ーー

                 ------


ひと「……今度こそ、楽にしてあげる」



ひと「……!」



*******


……暗闇に落ちていく

……消えていく、私の心が……


暗闇の中、光を……見つけました


……縋るように瞼を開けると、

そこにはーー天使様が、いたのです




……私は出会いました

あの……悪魔が、想いを暴走させた戦いで……


……私と天使様は、

求めあい、混じり合い、あなたを授かったーー


ーー私たちの愛しい希望を


それは……奇跡だった、と……

……後から、教えていただきました




非力だったために、暴走しても……

……すぐには、力に飲み込まれなかった悪魔


……いつ終わるとも知れない、戦いの中で傷つき、

消える間近に安らぎを……自分の幸せを求め、

……心を取り戻した天使


……その天使と悪魔が、出会ったこと……


そして、この終わりゆく世界で……

……光と闇が交わり、新しい命が生まれたこと……


数多の偶然が重なり、奇跡が起きたーー




ーー私は、決意しました


この奇跡を……あなたを守るとーー


                    *******



ひと「…………


   ……思い……出した……


   あの、戦いを……」



ひと「……お母……さん……


   ……っ……


   ……天使、様は……ううん、お父さんはっ……!」



ひと「…………っ


   ……消えて、しまったの……?」



悪魔「……!


   …………」



悪魔「……大丈夫


   ……消えてないよ」



悪魔「今でも、あなたのことを……


   …………


   ……ちゃんと、見守ってくれているわ」



ひと「……っ!


   ……でもっ……


   ……でも、一度もっ……


   会えて……ないーー」

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