ーー第5章 「想いの暴走」ーー
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……そして、最も強い悪魔との戦いの後ーー
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ひと「……いま、楽にしてあげるからね」
ひと「……!」
ひと「……っ……!?
……消え……ない……?」
ひと「……力を、吸収したのに……どうして……?」
悪魔「……っ!?
離れてっっ!」
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……吸収しようとする際に、
聞いたことのある声が……響いた
……しかし……
これまでとは、違っていた
……響いた……いや、轟いた叫び声は……
いままでより、ハッキリと……世界を震わせた
……世界のすべてを、存在から揺るがすような……
小さくとも、確かな叫び声だったーー
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悪魔「…………っ
……また……こう、なるのね……」
ひと「……!
……あれはーー」
天使「ーー想いの、暴走だ……」
ひと「……!?
…………想い…………?」
ひと「……心を、失っているのに……?」
天使「……たとえ、心を失っても……
命を……己の存在を、得た以上……」
天使「……逃れられない想いが……あるんだ」
天使「…………
……消えたくない……という、想いが……」
ひと「……!
……消えたく、ない……」
ひと「……その想いが、暴走……してる……?」
悪魔「…………
……以前にも、あったのよ……」
悪魔「…………っ
……追い詰められた、悪魔がっ……」
悪魔「……同じように、暴走したことが……ね」
ひと「…………!
……前にも……?」
悪魔「……前に……
天使さんが、言っていたでしょう」
悪魔「……今の、天使と悪魔の姿は……
その時の、暴走のせい……なの」
ひと「…………!」
ひと「…………
…………あの、荒野で…………」
ひと「……初めて……あの存在たちに、出会ったとき……」
悪魔「…………そうよ」
悪魔「……あの時、天使さんは言っていたの……
元々は……私たちに近い姿をしていた、って……」
ひと「…………っ!
……天使さんとお母さんとは、違う……」
ひと「……大きくて怖い……のに……
私に似てない……姿、なのに……」
ひと「…………元々……は…………」
天使「……そうだよ」
天使「…………
……私たちの姿は、君に似ている……」
天使「……ただそれぞれ……
背中に黄色い翼と、黒い翼が……あるだけだ」
悪魔「……私たちが、この姿でいられたのは……
想いの暴走を経ても、この姿でいられるのは……」
悪魔「…………
……あなたのおかげ、なのよ」
ひと「…………!
…………私の…………?」
ひと「……どういうーー」
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……ひとが問いかけようとした時……
悪魔の叫びが、動きが……止まった……
……その直後、ひとが苦しみ始めるーー
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ひと「ーーっ……!?
……うぅ……なに……?」
ひと「…………これ、は…………」
天使「……っ!
……この子の力が、急激に増しているっ……!」
天使「……吸収した力も、暴走しているのかっ……!?」
悪魔「……っ!?
……天使……さん……?」
悪魔「……この子は……
この子なら……大丈夫、ですよね……?」
天使「…………っ
……この状態が続けば……」
天使「……この子の心は……
強い想いに、飲み込まれてしまう……かも、しれない……」
悪魔「……っ!
……そん、な……」
天使「……っ
……そして……かつての君や、彼のように……」
天使「……この子も……暴走して、心を……」
悪魔「…………っ!
……だめっ……」
悪魔「……この子は……私が……
……何か……何か、ないの……?」
悪魔「…………!」
悪魔「……………………」
悪魔「…………
…………ふぅ…………」
天使「……っ……!」
悪魔「…………っ
……天使さん、大丈夫です……」
悪魔「……私が、この子を支えます」
天使「……っ!
……君が……?」
悪魔「……はい、私が……支えます……!」
悪魔「…………
…………この子と、私…………」
悪魔「……そして、天使さんは……繋がっている」
天使「……!
…………それは…………」
悪魔「……だからこそ……
この子みたいに、吸収の力がなくても……」
悪魔「……私たちの間でなら、力の受け渡しができるーー」
悪魔「ーーそう……
……でしたよね」
天使「……っ……!
……まさ、か……」
悪魔「……はい」
悪魔「……この子が安定するまで……」
悪魔「…………私が…………」
悪魔「……私が、暴走している力の一部を……受け取ります」
天使「……っ
……でも、それでは君が……」
悪魔「……そう……ですね」
悪魔「……一部とはいえ……
暴走している力を取り込めば、私も……」
悪魔「……でも、この子が……
心を失わずに、いられるのなら……」
悪魔「……私のことは……いいんです」
悪魔「…………
……あの……約束をした時から、覚悟はしていますから」
天使「……!
……君は……あの約束を……」
天使「…………っ
……もう、覚悟しているんだね……」
悪魔「…………はい
……あの、約束が……」
悪魔「…………
……この子の未来を、繋ぐことだけが……」
悪魔「……私の生きる、理由ですから」
天使「…………っ」
悪魔「……それに、陰の力は……
今の天使さんでは……受け取れない、ですよね」
天使「……っ!
…………そう、だね」
天使「……今の私では……できない」
悪魔「……だから、今……
この子を救えるのは……」
悪魔「……悪魔である私しか、いないんです」
悪魔「……迷っている暇もありません
あの暴走している悪魔が……もう一度動き出す前に……」
天使「…………っ
……わかって……る……」
悪魔「……今は……
この子に吸収された力を、回復するために……」
悪魔「……一瞬の眠りについているだけ、です」
天使「……っ
……わかって、いるんだ……」
悪魔「……天使さん、この子のためにも……」
悪魔「……私たちの光である、この子の未来を繋ぐためにも……」
悪魔「…………
……任せて、ください」
天使「…………!
…………っ…………」
悪魔「……ふふっ……
……私は、大丈夫ですよ~」
悪魔「……天使さん、
二人で……約束したではないですか」
悪魔「…………
……何があっても、この子を守ると」
天使「……!
……それ……は……」
天使「……っ……」
悪魔「……それに……
何があろうと、私たちの結末は……変わりません」
悪魔「……その時まで、私が……
……私を保っていれば、いいだけですから」
天使「……っ……!
……そう……だったね……」
天使「…………っ
……任せる……」
悪魔「……はい、任されました~」
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……そして……
悪魔が、ひとの力の一部を……受け取った後ーー
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ひと「……!
……ぅ……?」
ひと「……あ……れ……?
……苦しく……ない……?」
天使「……!
……大丈夫かい?」
ひと「…………!」
ひと「……はい……!
苦しく、なくなりました……!」
ひと「……!?
……なにか……強い力も、感じます!」
悪魔「……よか……った……」
悪魔「…………
…………ふぅ…………」
ひと「……?
……お母さん……?」
悪魔「……それはね、
暴走した悪魔の力……なのよ」
悪魔「……長くは使えないけど……
あれを止めるために、役に立つわ」
ひと「……暴走……?
あれを、止める……?」
ひと「……!」
ひと「…………っ
……そうだ……終わらせて、あげないと」
天使「……今は、まだ……眠っている」
天使「……けれど、力が回復しているから……
もうすぐ……目を、覚ますだろう」
天使「……目を覚ましたら……
器が動けなくなるまで……止まることはない」
ひと「……っ
……そんな……」
天使「……君の新しい力なら……
暴走した悪魔にも、対抗できるはずだよ」
天使「……だから、終わらせてあげてくれ」
ひと「……!
……でも……」
ひと「…………っ
……この力を使っても、大丈夫でしょうか……?」
ひと「……さっき感じた、力に飲み込まれる……」
ひと「……あの感覚が、怖くて……」
天使「…………っ」
ひと「……それに……なんだか……
……お母さんの様子も、おかしいような感じが……」
ひと「……苦しそう、というかーー」
悪魔「ーー大丈夫よ」
悪魔「……私が、あなたを支えるから……」
悪魔「…………何があっても」
ひと「……っ……!」
悪魔「…………それに…………」
悪魔「…………
……私たちの場所を、守って……くれるんでしょう……?」
ひと「…………!
……守る……私が……」
悪魔「……そのためには、進むしかないのよ」
悪魔「……だから、ね……
安心して、力を使いなさい」
ひと「……っ!
…………」
ひと「……うんっ……!」
ひと「…………っ
……私が……私が、守るんだっ……!」
ひと「……天使さんとお母さんと私……
……私たちが生きる場所を、守るんだっっ!」
悪魔「……うんっ……」
悪魔「……あなたなら……きっと……
きっと、できるよっ……」
天使「…………っ」
悪魔「(…………
……ずるい言い方をして、ごめんね……)」
悪魔「(……どれだけ恨まれようとも……)」
悪魔「(……私は、あなたに生きてほしいの
あなたの存在自体が……私にとっては希望だから)」
悪魔「(…………
……これは、私の我儘……)」
悪魔「(…………だから…………
だからね、最後の時まで……貫き通すよ)」
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……そして……
最も強い、暴走した悪魔との戦いの後ーー
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ひと「……今度こそ、楽にしてあげる」
ひと「……!」
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……暗闇に落ちていく
……消えていく、私の心が……
暗闇の中、光を……見つけました
……縋るように瞼を開けると、
そこにはーー天使様が、いたのです
……私は出会いました
あの……悪魔が、想いを暴走させた戦いで……
……私と天使様は、
求めあい、混じり合い、あなたを授かったーー
ーー私たちの愛しい希望を
……それは……
奇跡だった、と……後から、教えていただきました
……非力だったために、暴走しても……
すぐには、力に飲み込まれなかった悪魔
……いつ終わるとも知れない、戦いの中で傷つき、
消える間近に安らぎを……自分の幸せを求め……
……心を取り戻した天使
……その天使と悪魔が、出会ったこと……
……そして、この終わりゆく世界で……
光と闇が交わり、新しい命が生まれたこと……
……数多の偶然が重なり、奇跡が起きたーー
ーー私は、決意しました
この奇跡を……あなたを守るとーー
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ひと「…………
……思い……出した……」
ひと「…………あの、戦いを…………」
ひと「……お母……さん……」
ひと「……っ……
……天使、様は……ううん、お父さんはっ……!」
ひと「…………っ
……消えて、しまったの……?」
悪魔「……!
…………」
悪魔「……大丈夫
……消えてないよ」
悪魔「……今でも、あなたのことを……」
悪魔「…………
……ちゃんと、見守ってくれているわ」
ひと「……っ!
……でもっ……」
ひと「……でも、一度もっ……会えて、ないっーー」




