ーー最終章 「想いを看取り残す者」ーー
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……そして、最後に……
双子の姉妹……シーアと、クロハについてーー
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セレネ「…………」
セレネ「…………
…………なら、クロハに…………」
セレネ「……魔物の声が、聞こえるのは……」
女神「……っ……
……クロハは、陰の心が……特に、強いから」
セレネ「…………
……やっぱり、そう……なんですね」
女神「…………
…………はい」
セレネ「…………っ!」
セレネ「…………でもっ…………」
セレネ「……天使と悪魔はっ……どういうこと、ですか……?」
女神「…………
…………シーア……そして、クロハと…………」
女神「……繋がっている……魔物、は……」
女神「…………っ」
女神「…………
…………それ、は…………」
女神「……あなたが、関係……しています」
セレネ「……っ!」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「……世界がっ、灰色に……
包まれた時に……生まれた、からっ……」
女神「…………
……そう、です……」
セレネ「…………っ…………!」
女神「……………………」
女神「…………
…………何事も、無ければ…………」
女神「……あの子たちは……双子では、なかった……」
セレネ「……っ……!
…………ぇ…………」
女神「…………っ」
女神「…………
…………あの子たちは、もともと…………」
女神「……一人の……女の子、なんです」
セレネ「……っ!
…………まさ、かっ…………」
女神「…………っ
……はい……」
女神「…………
…………一人の女の子が、生まれるとき…………」
女神「……そのときが……その、瞬間が……
偶然にも、世界が変わる瞬間……だった」
女神「……二筋の奇跡が、交わった時……
本来、起こり得ないことが……新たな奇跡が、起こった」
セレネ「…………っ!」
女神「…………生まれるときを…………
産声を上げる瞬間を……母に包み隠され、待ちわびていた女の子が……」
女神「……陰と陽の……
二つの心に……分かたれた」
セレネ「……っ!」
女神「…………
……そして……双子、が……」
女神「…………
…………彼女たちが、生まれた」
セレネ「……っ……
…………わたし、がっ…………」
女神「…………っ…………」
女神「……………………」
女神「…………
…………彼女たちは…………」
女神「……旧い世界で生まれた……
あなたの……影響を受けている、から……」
セレネ「……っ」
女神「…………だから…………
……心が、二つに……分かたれるとき……」
女神「……陰と陽の……心の偏りが、表れた……」
女神「……そして、彼女たちの魔物は……
暴走すると……天使と悪魔の姿を、模した」
セレネ「……………………」
女神「……あなたたち、三人が……
魔物に……襲われないのも……」
女神「…………あなたたちの存在が…………」
女神「……この世界ではなく……
旧い世界に、寄っているから……」
セレネ「…………っ!」
女神「…………だから…………」
女神「……魔物には……
この世界の人間とは……認識、されないのです」
セレネ「……っ……」
女神「……そして……
他の魔物と……行動が、違うのも……」
セレネ「…………!」
女神「……繋がっている存在が……
この世界から見て、不安定……だから」
女神「……だから……
天使は……人を襲わず、クロハを探し続けた……」
女神「…………
……陽の心は、誰かを想う……心、だから」
セレネ「……!
……あの村の、光景……は……」
女神「…………はい」
女神「……天使が、クロハを……
探した結果……隠れる場所のない、更地になったんです」
セレネ「……………………」
女神「……そして……
悪魔は……繋がっている存在を、守るように……」
女神「……もしくは……
心を消すな……と、訴えるように……傍に居続けた」
女神「…………
……陰の心は、自分を想う……心、だから」
セレネ「……っ……
…………私の、魔物は…………」
女神「…………
……陰の力を吸収して、生まれた故に……」
女神「……悪魔に近い……
自分の心を叫ぶ……性質に、なった」
セレネ「……………………」
女神「……セレネ……」
セレネ「…………
…………なら…………」
セレネ「……天使から、力を吸収したときに……
シーアの想いが見れた……のも……」
セレネ「……悪魔から、クロハの声が……
想いが、聞こえた……のも……」
女神「……………………」
セレネ「…………私の、魔物が…………」
セレネ「……私の心、そのものを……話せる、のも……」
セレネ「…………ぜん、ぶっ…………」
女神「…………
…………そう、です」
セレネ「……っ!」
女神「……根本的な……原因、は……」
女神「…………
……旧い世界が、誕生の起源……である……」
女神「…………っ」
女神「…………あなたっ……ですっっ…………」
セレネ「…………っ…………」
女神「…………セレ、ネっ…………」
セレネ「……………………」
女神「…………っ
……セレネっっ……!」
セレネ「…………」
女神「……っ」
女神「……セレ……ネっ……!」
セレネ「…………
…………あり、がとうっ…………」
女神「…………っ!」
セレネ「……ありがとうっ、女神様っっ……!」
女神「……っ!」
女神「……セレネっ……
なんでっ……お礼、なんて……」
セレネ「…………
……女神様は、話してくれた……から」
女神「……っ……!」
セレネ「……話しにくい、ことでも……
隠さず……話してくれた……からっ……!」
女神「…………っ!
……セレネっ……!」
セレネ「…………だからっ…………!」
セレネ「…………ありがとうっっ…………!」
女神「……セレネっっ……!」
女神「……っ!
……私の方こそ……聴いてくれて、ありがとうっ……!」
セレネ「…………うんっっ…………!」
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……知りたいことは、全て知れた……
そして、セレネは……答えを示すために考える
……せれねが目覚め、皆が揃ったときに……伝えるためにーー
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セレネ「…………」
セレネ「(…………
…………私、は…………)」
セレネ「(……どうしたい……?)」
セレネ「…………」
セレネ「(…………
…………うん)」
セレネ「(…………やっぱり…………)」
セレネ「(…………
……目指すところは、変わらない)」
セレネ「…………」
セレネ「(…………
…………世界を見守りながら…………)」
セレネ「(……大切な存在と、在り続けること)」
セレネ「(…………
……私の、答えは……変わらない)」
セレネ「(…………
…………色々なことを、知った……今でも…………)」
セレネ「…………」
セレネ「(……答えが、変わらないなら……)」
セレネ「(…………
……後は……具体的な、方法……だね)」
セレネ「(…………
…………見守ることは…………)」
セレネ「(……この聖域に居れば……できる)」
セレネ「(…………
……女神様と、お母さんが……)」
セレネ「(……私や、世界を……見てた、から)」
セレネ「…………」
セレネ「(……大切な存在と……
在り続けること……も……)」
セレネ「(…………
……ここにいれば……できる)」
セレネ「…………」
セレネ「(…………最後に…………)」
セレネ「(……私は……それだけで、満足……かな……?)」
セレネ「……………………」
セレネ「(……っ……
…………ううん、足りないっ…………)」
セレネ「(…………見守る、だけじゃ…………)」
セレネ「(…………足りないんだっっ…………!!)」
セレネ「…………」
セレネ「(…………じゃあ…………)」
セレネ「(…………
……何が、足りないん……だろう……)」
セレネ「……………………」
セレネ「(…………っ
…………分かってる……私は、もう…………)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(…………
……私はっ、クロハのように……ありたいっ……!)」
セレネ「(……っ
……存在を憶えて……この世界に、残してあげたいっ!)」
セレネ「(…………っ
…………だってっ…………)」
セレネ「(…………陰の女神様の、想いがっ…………)」
セレネ「(……頭から……離れないんだっっ……)」
セレネ「(……っ……
……ここにいたことを……誰かに、知っていてほしい……)」
セレネ「(…………そんな、想いがっ…………)」
セレネ「…………」
セレネ「(…………
…………そして…………)」
セレネ「(……魔物たちに……誰かを、傷つけて……ほしくない)」
セレネ「(……女神様にも、無理をしてほしく……ないっ……)」
セレネ「(…………
…………シーアの、ように…………)」
セレネ「(……女神様を支えたいっ……
女神様の……光に、なりたいっっ……!)」
セレネ「……っ……
…………ふぅ…………」
セレネ「……………………」
セレネ「(……私には……吸収の力が、ある)」
セレネ「(…………
…………元々は、違ったけど……今はっ…………)」
セレネ「(……女神様のように……
想いを、見ることが……受け取ることがっ、できるっ……!)」
セレネ「(…………そして、私はっ…………)」
セレネ「(…………
…………私……はっ…………)」
セレネ「(…………っ…………)」
セレネ「(…………女神様と……同じ、存在っ…………)」
セレネ「(…………
……世界に……影響を、与えてしまうっ……)」
セレネ「(……っ
……世界を、変えてしまうっ……存在なんだっっ)」
セレネ「(…………っ)」
セレネ「(……こわ、いっ……)」
セレネ「(……こわいっ……けどっ……)」
セレネ「…………」
セレネ「(…………だから、こそっ…………)」
セレネ「(…………っ!
……出来ることが、あるんだっ……)」
セレネ「(…………
…………私、にしかっ…………)」
セレネ「(……出来ないことがっ……あるんだっっ……!)」
セレネ「…………っ!」
セレネ「……………………」
セレネ「…………そう、なんだっ…………!」
セレネ「(…………っ…………)」
セレネ「(…………私はっ…………
……この道を、進みたいんだっ……!)」
セレネ「(…………
……私の、怖い力も……私自身の、存在も……)」
セレネ「(…………知りたくない、自分……も…………)」
セレネ「(…………っ
……私の全部を、使わないと……進めない道がっ……)」
セレネ「(……そんな道を、私はっ……進みたかったんだっっ……!)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(…………
…………やっとっ…………)」
セレネ「(…………やっとっ……私の、全てがっ…………)」
セレネ「(……バラバラ、だったのがっ……繋がった気が……するっ……!)」
セレネ「…………っ…………!」
セレネ「(…………
…………お父さんっっ…………!)」
セレネ「(……ようやく、見つけたよっっ……!!)」
セレネ「(……私の進みたい道っ……!
思うままに……生きる、道をっっ……!!)」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「……………………」
セレネ「……ようやく、私の言葉に……できたっ」
セレネ「…………
…………私の、言葉でっ…………」
セレネ「……みんなにっ……伝えられるっっ……!!」
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……そして、せれねが……
眠りから、目覚め……みんなが揃う
……時は満ちた
ついに、セレネは……答えを示す
……女神の願いに対して、ひとの答えをーー
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セレネ「…………」
セレネ「…………みんな、聴いてほしいんだ」
セレネ「……私の答えを」
悪魔「…………!」
せれね「…………私っ…………!」
女神「…………
…………はいっ…………!」
女神「……聴かせて、くださいっ……!」
セレネ「…………ありがとうっ…………!」
悪魔「…………いいのよ」
悪魔「……あなたの答えを……聴かせて」
セレネ「…………うんっ…………!」
セレネ「……………………」
セレネ「…………
……じゃあ、いくねっ……」
セレネ「…………私、は…………」
セレネ「…………私はっ…………
全ての存在の、想いを看取り……世界に、残し続けたいっっ……!」
せれね「…………っ!」
悪魔「…………
…………想いを、看取り…………」
女神「……世界に……残し、続ける……」
セレネ「…………うんっっ!」
セレネ「…………
…………でも、ねっ…………」
セレネ「……私、一人じゃ……出来ないんだっ……」
悪魔「…………!」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「…………
…………だか、らっ…………」
セレネ「……みんなにっ……手伝って、ほしいんだっっ……!!」
せれね「……っ……!」
セレネ「…………っ
…………だめ、かなっ…………?」
女神「…………」
女神「…………ふふっ」
セレネ「……!
……女神、様……?」
女神「…………それが、あなたの…………」
女神「……あなたなりの、答え……なんですねっ……!」
セレネ「…………はいっ…………!」
悪魔「…………っ!
……セレネっ……!」
せれね「……っ!
……もちろん、わたしは手伝うよっ……!」
女神「……そうですねっ……!」
女神「…………
…………みんなで…………」
悪魔「…………はいっ!」
せれね「…………うんっっ!」
女神「…………みんなで、支えあってっ…………」
女神「……やって、いきましょうっっ……!」
セレネ「…………っ…………!」
セレネ「……………………っ」
セレネ「…………あり、がとうっっ…………!!」
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……ひとの答えが示された後、世界は変わった
……世界を照らす鏡は、白い輝きを取り戻し……
灰色に包まれ続ける世界は……終わりを、告げた
……しかし、世界は……
戻ったのではなく、進んだのだ
……人が、消えるとき……
魔物が……暴走するとき……
……その瞬間……
世界の鏡は……白から灰へと、変わりゆく
……それだけではなく、空は闇へと包まれる……
暖かな闇の中で……灰色の光が、世界を照らしていく
……その光は、優しく……人と魔物を包み込む
消えゆく存在を……想い、を……静かに、看取るように……
……あなたの想いを、その存在を……忘れないと……
あなたが在った事実を……この世界に残し続ける……と……
……消えゆく人が、魔物が……
抱いている、恐怖や不安を……癒すように、照らしていく
……その時の光景は……
まるで、誰かが……消えゆく存在に、祈っているように見えた
「……怖がらないで……安心して、眠っていいんだよ」
……そう、言葉を……想いを、伝えるように
……そんな灰色に輝く、世界の鏡に……
時々、映る……二つのシルエットがあった
……一つは、人のようなシルエット……
もう一つは、翼をもった……魔物のようなシルエット
……その二人が、手を繋いで……
支えあって……世界を見守るような……
……そんなことを思わせる、シルエットが……映るのだった
……そして、人と魔物が消えた時……
灰色の鏡の周りを、包んでいた……暖かな闇の中に、一つの光が生まれゆく
……儚くも、確かな輝きを放つ……小さな光が
…………それは、消えゆく誰かの想い…………なのかもしれない
……小さな光が灯った後、灰は白へと戻りゆく
……しかし、誰かが消えるときには……また、灰は現れるだろう
……暖かな闇を伴いながら、小さな光たちと……ともに
……この変化が現れてから……
人が魔物に襲われることは、無くなっていったという……
…………そうして、不完全な世界は進んでいく…………
…………いつか、灰色の鏡の周りに…………
暖かな闇の中に……光が溢れゆくときは、来るのだろうか……
……私たちの言葉で言う……
『月夜に輝く、満天の星空』の、ようにーー
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