ーー第18章 「向き合う心」ーー
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……その後、三人は……
いつも通りの日常を過ごしていく
……魔物が暴走し、クロハが祈り……
祈りは届かず、シーアがクロハを受け止め……
……セレネは姉妹を見守る
……そんな日常を過ごしていく……
……その日々の中で、セレネは……安心していた
シーアとクロハ、二人とも……出会った頃より、笑顔が増えたから……
……しかし、その安心を感じるたびに……
セレネの中では、ある感情が強くなっていった
……期待、という……感情が……
……今の彼女たちなら……
自分の過去を……今、私が望んでいることを……
……望む、心を……
受け止めて……くれるんじゃ、ないか……という期待が……
……ずっと話したかった……
……話す覚悟もした……でも、タイミングは大事……
……そんな考えを堂々巡りさせ、セレネは日々を過ごしていく
……そして、ある日……
その期待する心は溢れ出し、セレネは姉妹にお願いをするーー
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セレネ「…………」
セレネ「…………
……シーア、クロハ」
シーア「……?
……セレネさん……?」
クロハ「……?」
クロハ「……どうしたの?
セレネお姉さん?」
セレネ「…………
……いきなり、ですが……」
セレネ「……っ……」
シーア「……!
……セレネ、さん……?」
セレネ「……っ」
セレネ「…………ふぅ…………」
セレネ「…………
……二人に、話したいことが……あります」
シーア「…………!」
クロハ「…………?
……お話……?」
セレネ「……はい」
セレネ「…………
……二人には、私のことを……知ってほしいんです」
クロハ「……!
……セレネ、お姉さんの……!」
シーア「…………っ!」
セレネ「……………………」
セレネ「…………聴いて、くれますか…………?」
シーア「…………」
クロハ「……うんっ!
……セレネお姉さんのことなら、知りたいっ!」
クロハ「……そうだよねっ、お姉ちゃんっ!」
シーア「…………っ」
クロハ「……?
……お姉、ちゃん……?」
シーア「……っ!」
シーア「…………っ
……うんっ……そう、だね」
セレネ「…………シーア」
クロハ「……おねえ、ちゃん……?」
シーア「……大丈夫」
シーア「…………
……クロハがいるからっ……!」
クロハ「……!
……うんっ!」
セレネ「……シーア……」
シーア「……ごめんなさい」
シーア「…………
……改めて……聴かせてください」
シーア「……セレネさんの、お話をっ」
クロハ「……うんっ!
聴かせてよっ、セレネお姉さんのお話っ!」
セレネ「…………っ!」
セレネ「…………
……二人とも……ありがとうっ」
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……そして、セレネの告白が始まったーー
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セレネ「…………」
セレネ「……まず……」
セレネ「……初めに……
私は、普通の人間ではありません」
クロハ「……うん」
クロハ「…………
……私たちと……同じ、だよね」
セレネ「…………いいえ」
クロハ「……!」
セレネ「…………
……あなたたちには、無い力が……あるんです」
シーア「…………」
クロハ「……力……?」
シーア「…………
……吸収の、力……」
セレネ「…………そうです」
クロハ「…………?
……吸、収……?」
セレネ「…………
……その力は、魔物の暴走を止めることが……できる」
クロハ「……っ!」
シーア「…………っ」
セレネ「……この力を使って、私は……」
セレネ「……魔物の暴走を……止めていたんです」
クロハ「……っ!?」
シーア「…………
……私も……救われた……」
クロハ「…………っ!
……お姉、ちゃんも……!」
クロハ「…………」
クロハ「…………っ…………」
シーア「……クロハ……?」
クロハ「…………
……でも、私は……」
クロハ「……セレネお姉さんが……
暴走を止めるとこ……見たこと、ないっ……よっ?」
シーア「……!
……それ、は……」
セレネ「…………っ」
クロハ「…………
……セレネお姉さん」
セレネ「……クロハ……」
クロハ「…………聞こえてるん、だよね…………?」
セレネ「……っ……」
クロハ「…………
……魔物の声がっ、聞こえてるん……だよねっ……?」
セレネ「…………
…………はい」
クロハ「……っ!」
クロハ「……っ……
…………なんでっ…………」
シーア「……クロハ……」
クロハ「……あの、声がっ……」
クロハ「……あの寂しそうなっ、声がっ……」
クロハ「……聞こえてる、のにっ……」
シーア「…………っ
……クロハ……」
セレネ「…………」
クロハ「……っ
……なんでっ、何も……しないのっっ……!」
セレネ「…………っ…………」
シーア「……クロハっっ……!!」
クロハ「……!
……おねえ、ちゃんっ……」
シーア「…………っ
……クロハっ……」
シーア「…………
……きっと……セレネさんにも、事情が……」
シーア「……出来ない理由が、あるの」
クロハ「…………っ!」
セレネ「……っ!
…………シーア…………」
シーア「……だから……」
シーア「…………
……まずは、話を……聴きましょうっ」
クロハ「……っ!」
シーア「……ね、クロハ」
クロハ「…………」
シーア「……クロハ」
クロハ「……っ
…………うん」
セレネ「…………っ」
シーア「……セレネ、さん」
シーア「…………
……続きを……聴かせて、ください」
セレネ「……っ……!」
セレネ「……ありがとう、シーアっ」
セレネ「…………
……ごめん、ねっ……クロハ……」
クロハ「……っ」
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……そして、セレネは……
力を使わない理由を話し始めるーー
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セレネ「…………」
セレネ「……私が、力を使わない理由……」
セレネ「…………
…………それ、はっ…………」
セレネ「…………っ…………」
シーア「…………!
……セレネさんっ……」
シーア「…………」
シーア「……大丈夫、です」
セレネ「…………っ!」
クロハ「……!
……おねえ、ちゃん……」
シーア「…………」
シーア「……今度は、私が……」
シーア「……私がっ……聴く番、ですからっ……!」
セレネ「……っ!」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「…………あり、がとうっ」
シーア「……はいっ」
セレネ「……っ……」
セレネ「……………………」
セレネ「…………
……私が、力を使わない理由は……」
セレネ「…………私、が…………」
セレネ「…………っ
……私がっ、世界を灰色に……変えた、からっ……」
クロハ「…………っ!」
シーア「……っ!
……セレネ……さん、がっ……?」
セレネ「…………っ」
セレネ「…………
…………はい」
クロハ「…………
……どう、やってっ……?」
セレネ「……理由は……
私にも……わかりません」
シーア「……っ!」
セレネ「…………
……でも……」
セレネ「……私が、灰色に……変えたんですっ……」
シーア「……っ
……どうしてっ……そんなっ……」
クロハ「……!」
シーア「……理由も、わからないのにっ……」
クロハ「……お姉、ちゃん……」
シーア「…………決めつけるん、ですかっ…………」
セレネ「……っ……」
セレネ「……理由は……分からなくてもっ……」
セレネ「……私の、せいっ……なんですっ」
シーア「……っ!
…………どう、してっ…………」
セレネ「……っ
……私が……」
セレネ「……私が、叫んだ瞬間にっ……」
セレネ「……世界はっ……変わった、からっ……」
シーア「……っ……?」
クロハ「……叫、び……?」
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……そして、セレネの話は……
世界が変わる前へと……遡るーー
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セレネ「……………………」
セレネ「…………
……世界が……灰色に、包まれる前……」
セレネ「……私は……」
セレネ「……魔物の暴走を、止め続けていました……」
セレネ「……吸収の力を……使って……」
シーア「…………!」
クロハ「……っ!
……セレネ、お姉さん……がっ……」
セレネ「…………はい」
セレネ「…………
…………だから…………」
セレネ「……人間は……魔物に、襲われなかった」
クロハ「…………っ!」
シーア「……っ!
……それって……」
セレネ「…………
……でも……そんな私に……」
セレネ「……ある、変化が……現れだした……」
シーア「……変、化……」
セレネ「……魔物の、声が……
聞こえるように……なった……」
クロハ「……っ!
……声っ……!」
シーア「…………っ
……クロハと……同じっ……」
セレネ「…………そうです」
セレネ「…………
……その変化が、現れてからも……」
セレネ「……私は、吸収の力を……使い続けた」
セレネ「…………人を、守るために…………」
クロハ「…………!」
シーア「……っ
……守る、ためっ……」
セレネ「……………………」
セレネ「……そして……」
セレネ「…………
……私は、出会った……」
セレネ「……私の心を……叫ぶ、魔物に……」
クロハ「…………っ!
…………心、を…………?」
シーア「……!
……前に……クロハの時に、言ってた……」
セレネ「…………
……その魔物と、出会ったとき……」
セレネ「…………私が、叫んだ……時…………」
セレネ「…………
…………叫んだ、瞬間に…………」
セレネ「……世界は……灰色に、包まれたのです」
シーア「……っ……!
……それ、は……」
クロハ「…………っ」
セレネ「……私は……」
セレネ「……魔物の暴走を、止めるたびに……」
セレネ「…………
……吸収の力を、使う……たびにっ……」
セレネ「……明確にっ、変わってっ……いった……」
セレネ「…………
……普通の人間では……なくなって、いた……」
シーア「……っ」
クロハ「…………」
セレネ「…………そして…………」
セレネ「…………
……私の叫びの瞬間……世界が、変わった……」
セレネ「……………………」
シーア「……っ……
……セレネ、さんっ……」
クロハ「…………っ…………」
セレネ「…………
…………私が…………」
セレネ「……私が、世界を……変えたんです」
シーア「…………っ
……セレネ……さんっ……」
セレネ「…………」
セレネ「……そして……」
セレネ「…………
…………私、は…………」
セレネ「……世界を変えてしまう、恐怖から……」
セレネ「……私が、変わってしまう……恐怖から……」
クロハ「……っ……!
……変わるっ、怖さっ……」
セレネ「…………力を、使わなく……なった…………」
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……セレネの告白を聴いた、姉妹はーー
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セレネ「…………っ…………」
セレネ「…………ごめん、なさいっ…………」
クロハ「…………っ!」
シーア「……っ
……なん、で……」
シーア「……セレネ、さんが……」
シーア「……謝るの……ですかっ……」
セレネ「…………っ!」
クロハ「…………っ
……そう、だよっ……」
クロハ「……っ……
……謝らなきゃ、なのはっ……」
クロハ「……私っ、だよっ……」
セレネ「…………!」
クロハ「…………
……セレネ、お姉さんの……ことっ……」
クロハ「…………何もっ、知らないのにっ…………」
クロハ「……っ
……力を、使わないからっ……てっ……」
クロハ「……セレネ、お姉さんにっ……」
クロハ「…………怒っちゃったっ…………」
シーア「…………
……クロハ……」
クロハ「…………っ」
クロハ「……自分が、変わってっ……」
クロハ「……知らない、自分と……
向き合わなきゃ……いけない、ことがっ……」
セレネ「…………」
クロハ「……どれだけっ……怖いか、なんてっ……」
クロハ「…………っ…………」
クロハ「…………私はっ、知ってるっ……のにっ…………」
クロハ「……お姉、ちゃんに……
怒ってる……怖い、私と……向き合った、のに……」
セレネ「…………クロハっ」
クロハ「……っ
……ごめん、なさいっっ」
セレネ「…………っ!」
シーア「……クロハ……」
クロハ「…………っ
……セレネっ……お姉さんのっ……」
クロハ「……気持ちをっ……考えれなく、てっ……」
クロハ「…………傷つけてっ、ごめんなさいっっ」
セレネ「……っ」
セレネ「……クロハっ……
どうかっ……顔をあげてっ」
クロハ「……っ
……でもっ……」
セレネ「…………っ
……謝らなきゃいけないのは……私っ、なんだからっ……」
シーア「……っ!」
クロハ「…………っ!
……どう、してっ……」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「……私が、世界をっ……変えたからっ……」
クロハ「……っ!」
セレネ「……私がっ……人を、守らなくなったっ……からっ……」
シーア「…………っ!」
セレネ「…………だからっ…………」
セレネ「……あなたたち、はっ……
今まで……苦しんでっ、きたんですっ……」
セレネ「……っ……
……私、がっ……」
セレネ「……あなたたちをっ……
苦しめてっ、きたん……だからっ……」
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……セレネは、抱え続けた自身の罪を懺悔した……
その罪を……自責の念を、知った……姉妹の想いはーー
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シーア「…………
……セレネ、さんっ……」
クロハ「…………
……セレネ、お姉さんっ……」
セレネ「……っ
……シーアっ……クロ、ハっ……」
セレネ「…………私、はっ…………」
シーア「……っ
……セレネさんっっ!」
セレネ「……っ!」
シーア「……私はっ、あなたと出会えて……よかったっっ!」
セレネ「…………っ!」
クロハ「……っ……!
……お姉、ちゃんっ……!」
クロハ「……そうだよっっ!」
クロハ「……セレネお姉さんがっ、いたからっっ……!」
クロハ「……お姉ちゃんとっ、私はっ……」
クロハ「……私たちはっっ……
一緒に、生きてっ……いけるんだっっ!」
セレネ「……っ……!」
シーア「……っ!
……クロハのっ、言う通りっ……ですっ!」
シーア「……あなたがっ、世界を変えたからっっ……」
シーア「……あなたがっ……
人をっ、守らなくっ……なった、からっっ……」
シーア「…………っっ」
セレネ「……っ!
……シーアっ……」
クロハ「……お姉、ちゃんっ……!」
クロハ「…………っ!
……セレネ、お姉さんがっ……」
シーア「……!
……クロハっ……!」
クロハ「……セレネお姉さんがっ……
この場所に……連れてきてくれた、からっ……!」
クロハ「……セレネお姉さんがっ……
お姉ちゃんをっ……支えてくれたからっ……!」
クロハ「……私、はっっ……」
セレネ「…………クロハっ…………」
クロハ「……っ!
……私、はっ……!」
シーア「…………っ!
…………私たち、はっっ…………!」
シーア「……今ここに、いるんですっっ!!」
クロハ「……今ここに……いるんだっっ!!」
セレネ「…………っ…………!」
------
……そして……
シーアの光が……誰かを想える心が……
クロハの闇が……純粋で無垢な心が……
……暖かな、光と闇が……セレネを包み込むーー
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シーア「……だからっ……」
シーア「……どうか……
あなたの過去を……無かったことに、しないでっ……」
クロハ「……!
……そうだよっ……セレネお姉さんっっ!」
セレネ「…………っ!」
シーア「…………
……過去のあなたがっ、あるからっっ……」
シーア「……今の私がっ……いるっっ!」
セレネ「…………!」
シーア「……今のあなたがっ……いてくれたからっっ……」
シーア「…………
……今ここに……私たちがっ、あるんですっっ!」
セレネ「…………っ」
クロハ「……っ!
……お姉ちゃんっっ!」
クロハ「……うんっ!
そう、だよっっ!」
クロハ「……セレネお姉さんがっ、いてくれたからっ……」
クロハ「……お姉ちゃんはっ……
私をっ……ちゃんと、見てくれるっっ!」
クロハ「…………離れ離れに、なってないんだよっっ…………!」
セレネ「……っ!」
シーア「……そう、ですっっ!」
シーア「……もうっ、私たちはっっ……」
シーア「……ちゃんとっ……向き合えるからっっ!」
クロハ「…………うんっっ!」
セレネ「…………っ…………!」
セレネ「…………っ
……シーアっ……クロ、ハっ……!」
セレネ「……………………っ」
セレネ「…………あり、がとうっっ…………!!」
シーア「……!
……セレネさんっ……!」
クロハ「……セレネお姉さんっ……!」
セレネ「…………っ!」
セレネ「……………………」
セレネ「…………向き合う、か…………」
シーア「…………?
……セレネ、さん……?」
セレネ「…………
……今の……私なら……」
セレネ「……二人の……
想いを、もらった……私、なら……」
クロハ「……?
……セレネ、お姉さん……?」
セレネ「……っ……」
セレネ「……本当にっ、ありがとうっ……!」
セレネ「…………
……二人のおかげで、やっと……」
セレネ「……やっと……向き合えそう、なんだーー」




