ーー第16章 「悪魔は叫び訴える」ーー
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……こうして、セレネとシーア……
二人の約束は……結ばれた
……その時……世界に轟く叫び声が、二人に届く
……想いの暴走の、叫び声が……
……そして、二人の瞳に映ったものは……
あの悪魔のような……魔物の、姿だったーー
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シーア「……っ!?」
シーア「……あの……魔物、はっ……」
シーア「……っ……」
セレネ「…………
……悪、魔っーー」
セレネ「ーー……っ!」
シーア「……っ!
……クロハっ……」
シーア「……行きましょうっ、セレネさんっ」
シーア「……はやくっ、クロハを探しにっ……」
セレネ「…………」
シーア「……?」
シーア「……セレネ、さん……?」
セレネ「…………
……声が……聞こえる……」
シーア「……?
……声……?」
シーア「……私には……何もーー」
セレネ「ーーっ!」
セレネ「……この声はっ……クロハの、声っ……!」
シーア「…………っ!」
セレネ「……シーア、行きましょうっ!
……こちらですっ!」
シーア「……っ!?
セレネさんっ、待ってっーー」
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……セレネには、聞こえていた
……クロハの声が、聞こえていた……
その、言葉が……その想いが……セレネに届くーー
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…………
…………私が…………
……私が……悪いの……?
……お姉ちゃんを……苦しめてたのは……
…………わたし…………?
…………お姉ちゃんが……苦しんでたのは…………
……いつも……苦しそうだったのは……分かってた……
…………でも……私には…………
…………なんでお姉ちゃんが…………
……苦しんでいるかは……分からなかった……
…………お姉ちゃんは…………
……何も話してくれなかったから……
…………私には…………
……何も教えてくれなかった……何回も聞いたのに……
…………だから…………
…………だから……私は…………
…………私にできることを…………
…………お姉ちゃんが…………
……どれだけ私の救いになっているかを……
……私の想いを……伝え続けたんだよ……
…………お姉ちゃんがいるから……私は…………
……つらいことや……悲しいことがあっても……耐えられる……
…………お姉ちゃんがいると……私は…………
……どんな時でも……何があっても……最後には笑顔になれる……
…………お姉ちゃんがいるから…………
……私は生きられるんだよ……
……私の光……なんだよ……って……伝え続けた……
…………私の想いが…………
……お姉ちゃんの苦しみを……少しでも……癒してあげられたら……
……癒してあげられるって……信じて……
…………信じて……たのに…………
…………私が……私の存在が…………
……お姉ちゃんを……苦しめてた……?
…………わたしが…………?
…………なん……で…………?
…………なんで…………
……言ってくれないの……お姉ちゃん……
……何回も聞いたのに……何回も……
……それを知ってたら……私は……
…………わたし……は…………
……わたしは……どうするの……?
……どうしたらいいの……?
…………お姉ちゃんは…………
……私が消えれば……苦しくなくなるの……?
……お姉ちゃんと……いられなくなるの……?
…………っ…………
………………やだっ………………
……消えるのは……嫌……だっ……
………………でもっ………………
……分かんない……
……わかんないよ……
……私はどうしたらいいの……?
……お姉ちゃんは……私にどうしてほしいの……?
……お姉ちゃんは……私のことをどう思ってるの……?
……お姉ちゃんにとって……わたしって……なに……?
……お姉ちゃん……おねえちゃんっ……
…………答えて……こたえてよっ…………
……おねえちゃんの気持ちを……想いを……
…………わたしに……おしえて……よっ…………
……なんでっ……おしえてくれないのっ……
…………おねえ……ちゃんっ…………
…………おねえちゃんっ…………
……くるしいよっ……わかんないよっ……
…………なんでっ……わたしをっ…………
……わたしをっ……くるしめるのっ……?
……わたしのことがっ……きらいなのっっ……?
…………わかんないっ…………
…………もうっ……なにもっ…………
…………なにもっ……わかんないよっ…………
…………こわいよっ……おねえちゃんっ…………
…………しらない……わたしがっ……いるっ…………
……おねえちゃんを……しんじれないっ……わたしがっ……
……これは……わたし……なの……?
……ほんとうに……わたし……?
……わたしは……あなたは……だれ……?
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……セレネは声が聞こえる先に向かう……
先を行くセレネを追う、シーア
……二人は辿り着く、声のもとへ……
……そこに、いたのはーー
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セレネ「……っ
……悪、魔っ……!?」
シーア「……はぁ……はぁっ……」
シーア「……よう、やくっ……
追いつき……ましたっ……」
セレネ「……シーア……」
シーア「……セレネ、さん……」
セレネ「……声が……
クロハの声が……聞こえる……」
セレネ「……あの……魔物から……」
シーア「…………っ!?」
シーア「……………………」
シーア「…………
……セレネ……さん……」
シーア「……私には……
聞こえない、です……」
セレネ「……っ!?」
シーア「……聞こえて……いないんです……」
シーア「……クロハの、声なんて……」
セレネ「…………っ!」
シーア「……聞こえるのは……
あの魔物の……叫び声、だけ……」
セレネ「…………!?」
セレネ「……………………」
シーア「…………
……セレネ……さんっ……」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「…………
……そう……ですか……」
シーア「……!」
セレネ「……そう、なんですね……
これは……魔物、の……」
セレネ「…………」
セレネ「……私と……クロハにだけ……」
セレネ「……聞こえている、声……想い……」
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……セレネは異変を感じていた
クロハの声が、魔物から聞こえる……
……いつもの……
「消えたくない」ではなく、クロハの想いが……
……そして、セレネは気付く……
異変は、それだけでは……ないとーー
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セレネ「(…………!)」
セレネ「(…………
……どう、して……?)」
セレネ「(……なんで、悪魔は……動かないの……?)」
セレネ「(…………
……人間たちのいるところへ、向かわないの……?)」
セレネ「(…………)」
セレネ「(……暴れる様子も……
暴れた様子も……ない……)」
セレネ「(…………
……ただ、じっと……どこかを……)」
セレネ「(……何かを……見つめてる……?)」
セレネ「(…………)」
セレネ「(……そして……)」
セレネ「(……クロハの、声で……
クロハの心を……想いを、叫び……続けてる……)」
セレネ「(……わたしは、あなたは……だれ……?)」
セレネ「(…………
……そう、叫んでる……)」
セレネ「(…………)」
セレネ「(…………
……わたし……あなた……)」
セレネ「(……心を叫ぶ……魔物……)」
セレネ「…………っ!」
セレネ「(……あの、魔物はっ……)」
セレネ「(……私の魔物と……同じっ……!?)」
セレネ「(…………っ
……人を襲うんじゃなく……ただ、叫んでるっ……!)」
セレネ「(……自分自身の、心をっ……)」
セレネ「(…………っ)」
セレネ「(……心の叫びをっ……
無かったことに……するな……って……)」
セレネ「(……そう、訴える……ように……)」
セレネ「…………」
セレネ「……なら……」
セレネ「……それなら、クロハは……」
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……考えるセレネ、それを待つシーア
そして、セレネが……言葉を紡ぐーー
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シーア「…………
……セレネ、さん……」
セレネ「…………」
セレネ「……なら……」
シーア「…………!」
セレネ「……それなら、クロハは……」
セレネ「……クロハは、います」
シーア「……っ!」
セレネ「……あの魔物の傍に……いるはずです」
シーア「…………っ!」
シーア「……クロハが……魔物の傍にっ……
あの子は……無事なんですかっ!?」
セレネ「……大丈夫です」
シーア「……!」
セレネ「……クロハは無事ですよ」
セレネ「……あの……魔物が、いますから」
シーア「…………っ?」
シーア「……あの……魔物、が……?」
シーア「……どういう、こと……ですかっ……?」
セレネ「…………
……あの魔物は……クロハの、心です」
シーア「…………っ!
……クロハの、心……?」
セレネ「……クロハの心を……
想いを……叫んで、いるのです」
シーア「……っ!」
セレネ「……おそらく……
クロハがいるから、あの魔物は存在している」
シーア「……っ
……なん、でっ……?」
セレネ「…………」
セレネ「……っ……
…………私、にも…………」
セレネ「……私、も……似た経験を、しましたから」
シーア「…………!」
セレネ「……私の心を叫ぶ、魔物を……見たことが……」
シーア「……っ!
……セレネ、さん……も……」
シーア「…………っ…………」
シーア「…………
……あの子は……クロハは……」
シーア「……何を、叫んでいるん……ですか……?」
セレネ「……それ、はっ……」
セレネ「…………っ」
シーア「……?
……セレネ、さん……?」
セレネ「……っ……」
セレネ「…………
……それは……シーア……」
セレネ「……あなたへのーー」
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……その時……
セレネの言葉を遮るように、悪魔に似た魔物が動く
……魔物の瞳が、二人を……いや、シーアを捉えた
……そして、魔物は動き出す……シーアに向かってーー
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セレネ「ーーっ!
シーアっ……!」
セレネ「(……っ!)」
セレネ「(……なんでっ……
シーアに向かってっ……)」
セレネ「(……!
……まさかっ……)」
セレネ「(……クロハの想いがっ、影響してっっ……!)」
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……セレネが驚く中……
魔物が動いたことで、視界が開かれ……シーアは見つける
……動き出した魔物の陰で、うずくまっている……クロハをーー
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シーア「……っ!?
あれはっ……!」
シーア「……クロハっ……!
クロハっっ…………!」
セレネ「……シーアっ!
だめっっ……!」
セレネ「……クロハはっ、あなたにーー」
セレネ「ーーあなたに怒りを、抱いてるっっ!」
シーア「……っ!?」
セレネ「……だから今はっ!
今はっ、だめっっっ!」
シーア「……っ!
……でもっ……」
シーア「……それでも、私はっっ……!」
シーア「……クロハっっっ!」
クロハ「……ぅ……」
クロハ「…………っ!」
クロハ「……おねえ……ちゃん……?」
クロハ「……っ!?」
クロハ「……ゃ……だ……」
クロハ「……いやっ……だっ……」
クロハ「……きか……ないでっ……」
クロハ「……こな、いでっ……」
クロハ「…………いやぁっっっーー」




