ーー第13章 「あなたの物語」ーー
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……そして、シーアは語り始める
……自分の想いを……自分の、叫びをーー
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シーア「……………………」
シーア「……何から……話しましょうか……」
シーア「…………
……そう、ですね……」
シーア「…………」
シーア「……まずは……」
シーア「……最近の、私の様子が……
おかしかった理由……から、話しますね」
シーア「…………
……私は、怯えて……いたんですっ……」
シーア「…………っ」
シーア「……あのっ……」
シーア「……ここに、きてから……
初めて起こった……魔物の暴走の、時の……」
シーア「……クロハの姿を、見て」
シーア「……っ……
…………クロハ、がっ…………」
シーア「……今まで、以上に……
私から……遠い存在に、なってしまう……ことに……」
シーア「…………っ…………」
シーア「……………………」
シーア「…………
……今までも……」
シーア「……クロハは、遠い存在……でした」
シーア「……私とは違って……
誰から見ても、特別……でしたから」
シーア「…………
……私、とは……違って……」
シーア「……普通の人には、聞こえない……
魔物の声が……聞こえる、から……」
シーア「……っ
……私とはっ、違ったんですっ……」
シーア「……っ……」
シーア「……………………」
シーア「…………
……私は……普通、だった」
シーア「……特別な力は……
なにも、無かった……」
シーア「…………
……ただ……」
シーア「……この、世界が……
灰色に包まれた時に……生まれた、だけ……」
シーア「…………」
シーア「……クロハと、違って……」
シーア「……私が……
普通の人と……違う、ところはっ……」
シーア「…………それだけ、なんです」
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……灰色の中で生まれた、シーアとクロハ
……外から見れば、普通の人と変わらない
ただ、世界が灰色に包まれた時に……生まれただけ
……しかし、それだけでも……
人の心に、疑念の芽を生むには……十分だったーー
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シーア「…………っ」
シーア「…………
……でもっ……」
シーア「……普通の人は、それだけで……
私たちを……私、を……恐れたっ……」
シーア「…………
……だからっ……」
シーア「……だから、私にはっ……」
シーア「……クロハだけが……救い、だったんですっ……」
シーア「……っ……
……私と、同じで……」
シーア「……周りから、恐れられている……
……クロハ……だけがっ……」
シーア「……………………」
シーア「……そうして、
私にとって……クロハは……」
シーア「…………
……この世界で、生きる理由に……なっていきました」
シーア「…………」
シーア「……クロハが、いるから……
……クロハの傍に……いられる、から……」
シーア「……私は……
寂しい世界でも……生きていける……」
シーア「……独りじゃ、ないから」
シーア「…………っ」
シーア「…………
……でもっ……」
シーア「……ある、時……
知って……しまったん、ですっ……」
シーア「……先ほども、お話しした……
クロハの……特別な、力を……」
シーア「……っ
……私には、ない……力をっ……」
シーア「…………っ…………」
シーア「……クロハ、は……」
シーア「……自分の力を、自覚してからは……
暴走する魔物に……話しかけるように、なりました」
シーア「…………
……だけど……」
シーア「……クロハの声は……
魔物には……届きません、でした……」
シーア「……その度に……
クロハは泣いて、私が慰める……」
シーア「……それが、日常の一部に……なっていきました」
シーア「…………」
シーア「……ただし……
他の人には、見られないように……気を付けて、いました」
シーア「……私たちは、幼かったので……
周りの力に……頼らなければ、生きられないと……」
シーア「…………
……そして……」
シーア「……今以上に、恐れられて……しまえば……」
シーア「……頼ることすらできなくなると……
私は、なんとなく……感じて、いたので……」
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……姉妹の日常、そしてーー
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シーア「…………」
シーア「……そうして、私たちは……
日常を……過ごしていきます」
シーア「…………
……その日常の中で……」
シーア「……私たち双子は、
魔物には襲われないことを……知ったんです」
シーア「…………」
シーア「……最初は、嬉しかった……」
シーア「……私も、特別……なんだってっ……
クロハとっ……同じだってっ……」
シーア「……そう、思えましたから」
シーア「…………
……でも……」
シーア「……その、喜びは……
安心は……いつしか、消えていました」
シーア「……何度でも諦めずに……
魔物に話しかけ続ける、クロハを……見ているうちに……」
シーア「…………っ」
シーア「……いつかっ……
いつか……クロハの、声がっ……」
シーア「……魔物に……
届いてしまうんじゃ……ないかっ……」
シーア「……もし……届いて、しまったら……」
シーア「……っ……
……人間に、とって……」
シーア「……周りの人に、とってっ……
クロハは……救世主に、なってしまうっ……」
シーア「……周りからっ……恐れられる、だけでなく……」
シーア「……恐れられながらも、必要と……される……
そんな存在に……なってしまうっ……」
シーア「……っ」
シーア「……だって……」
シーア「……人間の敵である、魔物と……」
シーア「……意思疎通できない、からこそ……
襲ってくる理由すら……分からず……」
シーア「……敵と……そう、思うしか……なかった……」
シーア「……そんな魔物たちと、
想いを……通じ合わせることが、できるんですよっ……」
シーア「…………っ」
シーア「…………
……そんな存在を……」
シーア「……人間が……周りの人が……
放っておくはずが……ありません」
シーア「……クロハの周りには……
多くの人が……集まる、でしょう……」
シーア「…………
……クロハは……独りでは、なくなるんです」
シーア「……私が、いなくても」
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……クロハのあり得る未来を、
想像してしまった……シーアはーー
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シーア「……っ……」
シーア「……私は……怖く、なったんですっ」
シーア「……クロハの傍にっ、いられなく……なることが……」
シーア「…………
……その怖さを、自覚……する前は……」
シーア「……魔物に想いが届かなくて、
泣いている……クロハを……」
シーア「……ただ、心から……心配をして……
……優しく……慰めて、いたんですっ……」
シーア「……そう……出来て、いたんですっ……」
シーア「…………っ…………」
シーア「……でもっ……
怖さを、自覚して……からは……」
シーア「……クロハが、泣いているのにっ……
慰めながらも……安心している、私がっ……」
シーア「…………っ
……クロハの失敗を、喜んでいる……私がっ……」
シーア「……いたん、ですっ」
シーア「……っ……」
シーア「…………
……そんな、私をっ……」
シーア「……私の心をっ……知った時……
別の恐怖を、感じたっ……」
シーア「……っ
……私、がっ……クロハの幸せを……」
シーア「……クロハが……
望んでいることを、邪魔してしまうっ……」
シーア「……奪って、しまうっ……
そんな存在に……なるのでは、ないかとっ……」
シーア「…………っ…………」
シーア「…………
……クロハは……私に、生きる理由を……」
シーア「……生きる、希望をくれた……
……大切な……存在、なのにっ……」
シーア「…………
…………なの、にっ…………」
シーア「……私はっ……」
シーア「……クロハに、絶望を……
与えてしまう……かも、しれないっ……」
シーア「……っ……」
シーア「……………………」
シーア「…………
……怖くなった、私は……」
シーア「……姉、という役割を……
ただ……クロハの幸せだけを願う……」
シーア「……そんな役割を……演じるように、なりました」
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……役割を演じるようになった、シーア
そして、運命の出会いへと……繋がっていくーー
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シーア「…………」
シーア「……そして、日常を……過ごしていったんです」
シーア「…………
……そんな時……」
シーア「……以前にお話しした……
私と、クロハが……離れ離れになった……」
シーア「……そして……
セレネさんと、出会うきっかけに……なった……」
シーア「……あの出来事が、起こったんです」
シーア「…………っ…………」
シーア「……初めてっ……」
シーア「…………
……初めて、クロハが……傍に、いない時を……」
シーア「……過ごし……ました」
シーア「…………っ」
シーア「…………
……ものすごく、怖かったっ……」
シーア「……もう二度とっ、感じたくないっ……」
シーア「……そう、思うほどの……怖さだったんですっ……」
シーア「……っ……
……だからっ……」
シーア「……二度と、離れ離れに……ならない、ように……」
シーア「……セレネさんに、お願いを……したんです」
シーア「…………
……人間たちの、いないところへ……」
シーア「……私たちをっ、引き裂く存在が……いないところへっ……」
シーア「…………
……魔物の、領域へ……」
シーア「……連れて行って、くれませんか……って」
シーア「……………………」
シーア「…………
……今、思えば……」
シーア「……あの時の私は……
役割を、演じることよりも……」
シーア「……クロハの……幸せよりも……」
シーア「……私の心を……
優先していたのかも……しれないですね」
シーア「…………っ
……それほどまでに……怯えていたっ……」
シーア「…………っ…………」
シーア「…………」
シーア「……それは……
クロハも、同じだったと……」
シーア「……同じ怖さを……感じていた、と……」
シーア「……後で……クロハが、教えてくれました」
シーア「…………」
シーア「……っ……
……嬉し、かったっ……!」
シーア「……本当に、嬉しかったんですっ……!」
シーア「……クロハも……
私のことを、そんなに……必要と……」
シーア「……そう、感じてくれて……いたことがっ……!」
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……そして、今へと辿り着くーー
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シーア「…………」
シーア「……そして……
魔物の領域に、来て……」
シーア「……もう……離れ離れには、ならないと……」
シーア「……そう、安心していた……時に……
あの……魔物の暴走が、起こったんです」
シーア「……………………」
シーア「……あの時、私は……」
シーア「……クロハは動けないと……
動かないで、くれると……思って、いました」
シーア「…………っ
…………だって…………」
シーア「……あんなにっ……
あれだけの、怖い思いを……したんですっ」
シーア「…………
……私と……離れ離れに、なることをっ……」
シーア「……その、結果を……
生んでしまった、行動は……」
シーア「……怖くて、もう……出来ないと……
……そう……思って、いたんです」
シーア「……っ……」
シーア「…………
……でもっ……」
シーア「……でも、クロハは……強かった」
シーア「……怖くても、動いたんです」
シーア「…………
……そんなクロハを、見て……」
シーア「……私は感じた……感じて、しまったんですっ……」
シーア「……クロハは、いつか必ずっ……
魔物たちに、想いを……届けることができるっ……と」
シーア「…………っ」
シーア「……そう、感じたときっ……」
シーア「…………
……クロハの……ことが……」
シーア「……クロハの、存在がっ……」
シーア「……今まで、以上に……
遠く、感じて……しまった……」
シーア「…………っ…………」
シーア「……そしてっ……
気付いて、しまったんですっ……」
シーア「……っ
……今の、私がっ……」
シーア「……役割、を……
演じきれなく……なっている、ことにっ……」
シーア「…………
……あの、怖さをっ……」
シーア「……離れ離れになる、怖さを……
……知って……しまった、からっ……」
シーア「……っ……」
シーア「……………………」
シーア「…………
……だから……」
シーア「……だから、私は……
クロハと、どう接していいのか……」
シーア「……分からなく、なって……しまったんですっ……」
シーア「…………っ…………」
シーア「…………
……これが、私のっ……」
シーア「……想い、であり……叫びっ……」
シーア「……………………」
シーア「……セレネ、さんが……
聴きたいと、言ってくれた……」
シーア「……っ」
シーア「……私がっ……セレネさんに……
伝えたいことの……全て、ですっっーー」




