ーー第8章 「私の頬を伝うのは」ーー
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……そして、三人は……
魔物の領域へと、辿り着くーー
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セレネ「……帰って、きましたね」
シーア「……っ!
……ここが……魔物の……」
クロハ「……うわっー!
魔物たちが、いっぱいっ……!」
セレネ「……ふふっ」
セレネ「……大丈夫、ですよ」
シーア「……!」
セレネ「……人間たちが、いないだけで……
それ以外は、あまり変わらないですから」
シーア「…………
……本当に、人が……」
セレネ「……はい
ここには……私たちしか、いません」
クロハ「…………!
本当に、魔物たちしかいないんだっ……!」
セレネ「…………
……だから……」
セレネ「……あなたたちが、
住んでいた村……みたいに……」
セレネ「……多くの人同士の、助け合い……
みたいな生活は、出来ませんが……」
シーア「……っ……」
セレネ「……でも、今は……
私と、あなたたちが……」
セレネ「……助け合える存在が、三人もいますから」
シーア「…………っ!」
クロハ「……助け、合えるっ……!」
セレネ「……村のようには出来なくても、
私たちで助け合って、生きていきましょう」
シーア「…………っ…………!」
シーア「……本当に……ありがとう、ございますっ……」
シーア「……あなたに出会えて……
……あなたが、いてくれて……よかったっ」
セレネ「…………!」
クロハ「……お姉ちゃんっ……
……本当にっ、そうだねっ……!」
クロハ「……お姉さんみたいに、
笑いながら……微笑み、ながら……」
クロハ「……私たちに接してくれる人、なんて……
……初めて……だもんねっ……!」
セレネ「…………っ
……はじ、めて……」
クロハ「……うん、そうだよっ……!」
クロハ「…………」
クロハ「……村の人たちは、
いつも……なんだか、辛そうだったし……」
シーア「…………っ
……ええ……そうねっ」
シーア「…………
……私たちを、恐れずに……」
シーア「……接してくれる人、なんて……
……いないのだと……諦めて、ました……」
クロハ「……っ……」
セレネ「…………
……そんな……」
シーア「……………………」
シーア「…………
……よけ、れば……」
シーア「……あなたのっ……」
シーア「……あなたの、お名前……を……
教えて、いただけ……ませんかっ……?」
セレネ「…………!
…………な、まえ…………」
クロハ「……うんっ!」
クロハ「……そうだねっ!
私も、知りたい……なっ!」
クロハ「……お姉ちゃんにとっての、光に……なってくれてる……」
クロハ「……私たちの、大切な……お姉さんの名前っ!」
セレネ「……っ……!」
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……初めて、名前を聞かれたセレネはーー
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セレネ「(…………っ
……あり、がとうっ……こんな私に……)」
セレネ「(…………
……あなたたちは、本当に……)」
セレネ「(……優しくて……凄い……)」
セレネ「(……あなたたちも……
傷ついてきた……のに……)」
セレネ「(…………)」
セレネ「(……それでも、他の存在を……)」
セレネ「(……怖がりながらも……
信じようと……受け入れようと、している……)」
セレネ「(…………っ…………)」
セレネ「(……………………
…………私、も…………)」
セレネ「(……私も、いつか……
あなたたちを……信、じて……)」
セレネ「(……私のことをっ、話す……からっ……)」
セレネ「(……っ……)」
セレネ「(…………
……今はまだ……怖い、けれど……)」
セレネ「(……けれど……
少しずつでも、いつか必ず……)」
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……そして、セレネは……
大切な名前を……初めて、伝えるーー
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セレネ「…………」
クロハ「……?
……お姉、さん……?」
セレネ「…………
……分かり、ました」
シーア「…………!」
セレネ「……遅く、なりましたが……」
セレネ「……私の……」
セレネ「……私の、名前は……
…………セレネ…………」
セレネ「……セレネ、とーー」
セレネ「ーーっ……!?」
シーア「……っ!?
……どうしたのですかっ……?」
クロハ「……お姉さん……?」
クロハ「…………!
……泣いてる、の……?」
セレネ「…………っ…………!」
セレネ「……ない、てる……?
…………私……が…………?」
シーア「……はい……
涙が……大丈夫、ですかっ……?」
セレネ「…………っ!」
セレネ「……どう……して……
……どうしてっ……涙、がっ……?」
シーア「……セレネ、さん」
セレネ「……っ」
クロハ「……悲しい、の……?
……どうしたのっ……?」
クロハ「……セレネ、お姉さん……?」
セレネ「……っ!
……いいえっ……大丈夫、ですよっ……」
セレネ「…………っ」
セレネ「……ごめんなさいっ、嬉しくてっ……」
セレネ「…………!」
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……セレネは、気付く
思わず出た、自身の言葉で……自分の想いにーー
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セレネ「(…………)」
セレネ「(……そう……か……)」
セレネ「(…………
……嬉、しいんだ……私はっ……)」
セレネ「(…………っ…………)」
セレネ「(…………
……女神様と、お母さんから……
貰った……もの、だから……)」
セレネ「(……っ……
……今でも……)」
セレネ「(……離れ離れになった……今でもっ……)」
セレネ「(…………
……確かに、残っているもの……だからっ……)」
セレネ「(……………………
…………だから…………)」
セレネ「(……私の、大切な存在は……
確かに……いたんだよ、って……)」
セレネ「(……誰かに……世界、に……)」
セレネ「(…………っ
……伝えられたっ……証明、できたっ……)」
セレネ「(……っ……)」
セレネ「(…………
……そんな気が、するからっ……)」
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……そして、三人はーー
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セレネ「…………っ」
シーア「……セレネ、さん……」
クロハ「……セレネ、お姉さん……」
セレネ「…………
……ごめんなさい、大丈夫……ですっ」
セレネ「……………………」
シーア「……っ……」
セレネ「…………
……人、に……」
クロハ「…………!」
セレネ「……私以外の、人に……」
セレネ「……私の、大切な方から……
貰った……大切な、名前をっ……」
セレネ「……初めて、伝えられて……
嬉しいだけ……ですからっ……!」
シーア「…………っ!」
シーア「…………
……よかっ、たっ……!」
クロハ「……うんっ、よかったよっ……!」
シーア「…………
……でも、そういうこと……なら……」
シーア「……これからは……
ちゃんと、名前で……お呼びしないと、ですねっ!」
クロハ「……うんっ、そうだねっ!」
セレネ「…………っ!」
シーア「……改めて、これからも……
よろしくお願いします……セレネさん!」
クロハ「……よろしくねっ!
セレネお姉さんっ!」
セレネ「……っ……!
…………はいっ…………!」




