ーー第4章 「灰色の世界にて」ーー
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……世界が変わった後、セレネは……
魔物たちの領域にて、時を過ごし続けた
……その場所で彼女は、何を考えるのかーー
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セレネ「(……私は、今……)」
セレネ「(……生きてる……のかな……?)」
セレネ「…………」
セレネ「(……あの、とき……)」
セレネ「(……世界が……灰色に……
……包まれた、とき……)」
セレネ「(……私は……叫んでた……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……いや……ちが、う……)」
セレネ「(……っ……
……私が……叫んだ、瞬間に……)」
セレネ「(……世界はっ……灰色に、なった……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(……もし、かしたら……
私の……叫びがっ……)」
セレネ「(…………っ
……世界を、変えてしまった……
……かも……しれない……)」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「(……あの瞬間、から……
……白く輝いてた……鏡は……)」
セレネ「(…………
……灰色に、輝き続けてる……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(…………
私に似た、魔物が……)」
セレネ「(……っ……
……ううん、違うっ……)」
セレネ「(……あれは、私……私の、心……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……私、が……
……この世界をっ……)」
セレネ「(…………っ
……いらない、なんて……
思って……しまったからっ……)」
セレネ「(……っ
……私がっ……)」
セレネ「(……みんなが、繋いでくれた……世界、をっ……
……壊しちゃった……のかなっ……?)」
セレネ「……ぅ……
…………」
セレネ「(…………
……もう、私は……)」
セレネ「(…………っ
……見守る者では、いられない……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……そもそも……
……あの、私を……見たときから……)」
セレネ「(……これ以上、私が変わるのが……)」
セレネ「(……変わって、しまうのが……怖く……て……)」
セレネ「(…………
……吸収の力は……使えない、しね……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……こんなっ……
世界を、変えてしまうこと以上に……)」
セレネ「(……自分が……
……変わってしまうことを……)」
セレネ「(……怖がって……恐れて……
……何者でも、いられない……私はっ……)」
セレネ「(…………
……もう、人間たちの近くに……
……いては……いけない……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(……それに……あの場所にも……)」
セレネ「(……あの、暖かな場所にも……戻れない……)」
セレネ「(…………
……私、が……)」
セレネ「(……私の、心が……いるから……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……だから、
私は……ここに、いるんだ……)」
セレネ「(…………
……人間たちのいない、魔物の領域に……)」
セレネ「(……ここなら、私は……)」
セレネ「(……何かに……ならなくていい、から……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……わかってる……)」
セレネ「(……これが、ただ……
……逃げている、だけって……ことくらい……)」
セレネ「…………
…………でも…………」
セレネ「(…………
……でも……疲れ、ちゃったよ……)」
セレネ「(……だから、今は……)」
セレネ「(……これで……いいんだ……)」
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……そして、魔物の領域で過ごすセレネは……
魔物について、新しいことを知り……考えに、耽る……
……これが、彼女の日常になっていたーー
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セレネ「(……ここで、過ごすようになってから……)」
セレネ「(……魔物たちのことばかり、考えてる……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……世界が変わっても、
魔物たちは……何も、変わっていない)」
セレネ「(……突然、暴走して……人を、襲う……)」
セレネ「(……でも、その時以外は……
ただの……背景のような存在……)」
セレネ「(…………
……あの声が、なければね……)」
セレネ「……ふぅ……」
セレネ「(……でも、ずっと……)」
セレネ「(…………
……長い間、ずっと……聞いてたら……)」
セレネ「(……いつの間にか……
気にならなく……なっちゃった……)」
セレネ「(……なっちゃった……んだ……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……私って……)」
セレネ「(……魔物たちの声に……
……消えたくないって、声に……)」
セレネ「(……何を、思ってた……んだっけ……)」
セレネ「…………」
セレネ「(…………だんだんと…………)」
セレネ「(……私が……分からなくなって、くる……)」
セレネ「(……怖い……苦しい……けど……)」
セレネ「(…………けれど…………)」
セレネ「(……何かを、するのは……
……何かに……なるのは……)」
セレネ「(…………もっと、こわいっ…………)」
セレネ「(…………
……今度こそ、本当にっ……)」
セレネ「(……今、以上に……
……私が……壊れちゃいそう、だからっ……)」
セレネ「(……っ……
……だから、今は……)」
セレネ「(……このままで……いいんだ……)」
セレネ「…………
……それに……」
セレネ「(……ここに、いるからこそ……
新しく、知れることも……ある、しね……)」
セレネ「(……魔物は、突然……
生まれるってこと……とか……)」
セレネ「(……魔物は、暴走した後……
……自然に消えること……とか……)」
セレネ「(…………
……色々と、知ったんだ……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……色々……
知ることが、できたのは……)」
セレネ「(……私が、何者でも……なくなった、から……
……力を……使えなく、なった……から……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(…………
……違う、ね……)」
セレネ「(……力を使わなくなったから、分かったんだ……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……魔物たちは……突然、生まれる……)」
セレネ「(……何の前触れも、なしに……
魔物の……領域で……)」
セレネ「(……その後は、境界を越えずに……
ただ……在り続ける)」
セレネ「(……声が聞こえない人から、見れば……)」
セレネ「(……背景の一部みたいに……
空っぽで、心がない存在として……在り続ける……)」
セレネ「(…………
……でも……)」
セレネ「(……突然、暴走する……
暴走して、陰の力を持つ……)」
セレネ「(……そして、あの叫び声をあげながら……
……境界を越え、人を襲う……)」
セレネ「(……暴走した後は……
時間が経つと、自然に消えていく……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……私が……)」
セレネ「(……っ……
……見守る者、だった……ときは……)」
セレネ「(……魔物が暴走しても……
すぐに、私が……力を吸収していた……)」
セレネ「(…………
……だから、分からなかった)」
セレネ「(……魔物は……
暴走すると、消える……)」
セレネ「(……私は、ただ……)」
セレネ「(……その時を、早めていただけ……
……なのかも……しれない……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(……そして、思ってしまった……)」
セレネ「(…………
……魔物の生まれてから、消えるまでの流れは……)」
セレネ「(……人と、同じ……
なんじゃないかって……)」
セレネ「(……もしかしたら……)」
セレネ「(…………
……魔物という存在は、人間を映す鏡ーー)」
セレネ「(ーー人の心、そのもの……
……なんじゃないかって……)」
セレネ「(…………だから…………)」
セレネ「(……一人の人が生まれたら、
一体の魔物が生まれ……)」
セレネ「(……その人が消えるとき、
その魔物も、消えるんじゃないかって……)」
セレネ「(……思って……しまうんだ……)」
セレネ「…………」
セレネ「(…………
……魔物たちが、抱いている……
……いつも、言っている……想い……)」
セレネ「(……消えたくない……という想い……
……人の、最後の……想い……)」
セレネ「(……それに……)」
セレネ「(……っ……
……あの……私の心を叫ぶ……)」
セレネ「(……もう一人の私……のような、魔物……)」
セレネ「(……なにより、あの魔物の存在が……)」
セレネ「(……魔物は……
ある一人の、人間の心……)」
セレネ「(……繋がっている、存在だって……)」
セレネ「(…………
……そう、思わせるんだ)」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「(……もし……
……もしも、私の思った通りならーー)」
セレネ「(ーー魔物は……
暴走するから、消えるんじゃない……)」
セレネ「(……繋がっている、人間が……消えるから……)」
セレネ「(……暴走、しているのかも……しれない……)」
セレネ「…………
……もしも……」
セレネ「(……もしも、そうなら……)」
セレネ「(…………っ
……私が、いなくても……)」
セレネ「(……世界は、変わりなく……
……進んでいく……のかもね……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(…………
……でも……)」
セレネ「(……今は……それで、いいんだ……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……魔物たちが変わらない限り……
人間たちも、変わらないはず……だから……)」
セレネ「(……っ……
……………………
……そう……思い込もう……)」
セレネ「…………
……思い、込むんだ……」
セレネ「(…………せめて…………
……逃げられなく、なるまでは……)」
セレネ「(……ここに……いたいから……)」
セレネ「(…………
……何者でもない、私で……)」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「(…………
……それに……)」
セレネ「(……まだ魔物について、
分からないことばかり、だしね)」
セレネ「(…………
……なんで、私は……)」
セレネ「(……暴走した魔物に、襲われないんだろう……?)」
セレネ「…………」
セレネ「(……前から……
違和感は、あった……)」
セレネ「(……暴走した魔物は、
最も近い人間を……襲おうとする……)」
セレネ「(…………
……なのに、私が……)」
セレネ「(……私が、一番近くにいても……
見向きも、されない……)」
セレネ「(……私の、存在なんて……ないように……)」
セレネ「(……私以外の、人を……
最も近くにいる人を……襲おうと、する……)」
セレネ「(…………っ
……まるで、私が……人では、ないと……)」
セレネ「(……そう、伝えてくる……みたいに……)」
セレネ「……っ……
……ふぅ……」
セレネ「(…………
……まあ、そのおかげで……)」
セレネ「(……今、こうして……
……魔物たちの領域でも……過ごせてる、し……)」
セレネ「(…………
……実際に、私は……)」
セレネ「(……普通の人とは……違う、から……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……魔物たちは……
何か、私に……感じてる、のかな……)」
セレネ「(…………
……うん、そうかも)」
セレネ「(……今は、ここまでしか……分からないかな)」
セレネ「(…………
……そのうち……分かると、いいな……)」
セレネ「…………
…………じゃあ…………」
セレネ「(……じゃあ、次のこと……)」
セレネ「(…………
……私の、魔物について……かな……)」
セレネ「(……なんで、私の魔物の声は……)」
セレネ「(……耳をふさいでも聞こえてくるほど、
大きい声……だったんだろう……)」
セレネ「(……他の魔物の声は、暴走していない限り……
……小さいもの……なのに……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……でも、私の魔物は……
……暴走していなかった……)」
セレネ「(…………
あの、叫び声が……聞こえなかった……)」
セレネ「(……陰の力も、感じなかった……から……)」
セレネ「(…………
……そして……もう一つ、気になるのは……)」
セレネ「(……叫んでいる声が、言っていたことが……)」
セレネ「(……消えたくない、って想いとは……
違った……ってこと、かな……)」
セレネ「(……他の魔物と同じで、空っぽ……
……陰の心も、陽の心も……感じなかった、のに……)」
セレネ「(…………なのに…………)」
セレネ「(……私の、心を……叫んでた……)」
セレネ「…………
……やっぱり……」
セレネ「(……あの魔物は、何か……違うんだ……)」
セレネ「(…………
……何が違うのかな……?)」
セレネ「(……いつか……分かる、かな……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……考えていれば……)」
セレネ「(……私は、冷静でいられる……
……私を……保って、いられる……)」
セレネ「(……だから……今は……)」
セレネ「(……今の私の、ままで……いいんだ……)」




