ーー第3章 「私の心が叫びだす」ーー
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……セレネの想像した通り、
その後も魔物の暴走は、起こり続けた……
……その度に、セレネは……魔物の力を吸収し続ける
……人が襲われないように……
見守る者として……人間を、守り続けた……
……そんな日々を過ごす、セレネに……ある変化が、現れていたーー
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セレネ「…………」
セレネ「(……あの時から……
……初めて……人間が、消えたときから……
暴走した魔物は……現れ続けてる……)」
セレネ「(……やっぱり、あれは……)」
セレネ「(…………
……崩壊の始まり……
だったのかも、しれない……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(……それでも……気付いたことも、ある)」
セレネ「(……魔物の暴走は……想いの、暴走は……
……人間が、消えるときにだけ……起こってる……)」
セレネ「(…………
……人間と魔物には……
……何か、繋がりが……あるのかも……)」
セレネ「…………
……ふぅ……」
セレネ「(……今の私には……
それぐらいしか、分からない……けど……)」
セレネ「(……けれど、大丈夫……)」
セレネ「(…………
……私が、いる……)」
セレネ「…………っ!」
セレネ「(……私が……
魔物たちの暴走を、抑え続ければ……大丈夫……)」
セレネ「(……私が、見守る者である限り……
みんなが繋いでくれた、この世界は……何も変わらないっ……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……でも……
怖いことも……あるんだ……)」
セレネ「(…………
……私に、起きている……)」
セレネ「(……明確な、変化が……怖い……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(……魔物たちの……
声が……聞こえるのっ……)」
セレネ「(…………っ
……今までは……力を吸収したときにしか、
聞こえなかった……のに……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……いつも……言ってる……
……消えたくない……って……)」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「(……その声を……
……聞いてしまって、から……)」
セレネ「(…………
……私、は……)」
セレネ「(……魔物のことを、背景の一部とは……
……空っぽの存在とはっ……思えなく、なってる……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(…………
……今までは……)」
セレネ「(……暴走、するまで……
暴走して、陰の力が……感じられるように、なる……まで……)」
セレネ「(…………っ
……普通の時の、魔物に……
……背景の一部のような、彼らにっ……)」
セレネ「(…………
……何も……思うことは、なかった……のに……)」
セレネ「(……魔物の、ことを……
……彼らのことをっ……)」
セレネ「(……寂しそう、って……思っちゃった……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(…………
……だから……私は……
……話しかけて、しまった……)」
セレネ「(……でも……
……彼らは……魔物は、応えては……くれなかった……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……私は……
……ほっと、していたんだと……思う……)」
セレネ「(…………
……そのとき……
……魔物に、話しかけて……応えが、なかった……とき……)」
セレネ「(……もし、応えが……返ってきてたら……
……私、は……魔物のことを……彼らの、ことを……)」
セレネ「(…………想って、しまう……から…………)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(……でも……
……私は……見守る、者……)」
セレネ「(…………
……人を、見守る者……だから……)」
セレネ「…………だから…………」
セレネ「(……魔物が、人を襲おうとするときには……
……消さなくちゃ……いけ、ない……)」
セレネ「(…………
……私には……力を吸収するしか……でき、ないっ……)」
セレネ「(……その……やり方、しか……
……私は、知らない……から……)」
セレネ「(……だから……
……消さなくちゃ、いけないのっ……)」
セレネ「(……彼ら、を……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……ちが、うっ……
……彼らじゃ、なくてっ……魔物、なんだ……)」
セレネ「…………
…………ふぅ…………」
セレネ「(…………落ち、つくんだ…………)」
セレネ「(…………
……だから……)」
セレネ「(……私が話しかけたとき、応えがなくて……良かった……)」
セレネ「(……消さなくちゃいけない、存在を……
……これ以上……心を持つ、想いを持つ……誰か、だって……)」
セレネ「(……思いたく、ないから……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……今の私じゃ……誰かの、想いは……
……受け止め、られない……から)」
セレネ「(…………
……自分が……壊れないために……)」
セレネ「(……私の心から……想い、から……
……逃げている、今の私じゃ……)」
セレネ「(……っ……
……誰かの想いは……受け止め、きれないっ……)」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「(……だから、こそ……
……ものすごく……こわいんだ……)」
セレネ「(…………
……普通の時の、魔物の声が……
……吸収、しなくても……暴走する魔物の声が……)」
セレネ「(……魔物たちの声が……
聞こえるように、なった……だけで……)」
セレネ「(……ここまで、魔物のことを……
……心を感じられない……魔物のことを……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……心を……想いを、持つ……
一つの、存在のように……思ってしまう……私が……)」
セレネ「(…………
……そんな、私が……これ以上、変わるのが……
……変わっていく、私がっ……)」
セレネ「(…………すごく、こわいっ…………)」
セレネ「…………っ…………」
セレネ「(……なん、で……?
……私に何が……何が起こって、いるの……?)」
セレネ「(……このまま……
……この日々を、続けていたらっ……)」
セレネ「(…………
……私は……今の、私で……)」
セレネ「(……みんなが愛してくれた、私で……
……いられる……かな……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(…………怖いっ…………)」
セレネ「(…………怖い、よ…………
……女神さま……お母さん……お父さん……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……また……
……いつもみたいに、会いに行こう……)」
セレネ「(……あの……大きな樹なら……
……あの、暖かい場所なら……
……怖くなくなる……から……)」
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……そして、セレネはいつものように訪れる
……暖かな、大きな樹のもとに……
……しかし……いつもとは、違った……
……このとき、この瞬間……世界は、変わるーー
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セレネ「…………っ!?」
セレネ「(…………
……誰か……いる……?)」
セレネ「(……樹のところで……何か、してる……?)」
セレネ「……っ……!?」
セレネ「……ぇ……
…………」
セレネ「……あのっ……
あの姿や、顔はっ……わた、し……?」
セレネ「…………っ
……なん……で……?」
セレネ「……なんで……私が、いるの……?」
セレネ「…………!」
セレネ「(…………
……でも……
背中に……黒い翼が、ある……?)」
セレネ「(……私には……ない……)」
セレネ「(…………!
あの翼は……もしかして、魔物……?)」
セレネ「……っ!?
それよりも、なんでっ……」
セレネ「(……なんで、
私の姿で樹を……叩いて、るの……?)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(……そんなに必死に……
……誰かを、呼ぶように……)」
セレネ「……っ!
……何か……聞こえる……?
……何か、言っているの……?」
セレネ「……何をーー」
せれね?「ーーどうしてっ……!?」
セレネ「…………!」
せれね?「……どう……してっ……
私を……置いていったの……?」
せれね?「……なんでっ……
……なんで……私を……独りに、するの……」
セレネ「……っ……!?」
セレネ「(……だめ……これはっ……)」
セレネ「(……これ……以上……
聞いちゃ……ダメっ……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……決定的に……明確、に……
…………壊れて、しまうっーー)」
せれね?「ーー私は……ただ……」
せれね?「……ただ、みんなと一緒に……
……いたかった、だけ……なのに……」
セレネ「…………っ…………!」
せれね?「……それだけで……よかったのに……」
せれね?「……その、願いが……叶うなら……
……あの……崩壊する、世界でも……よかったーー」
セレネ「ーーっ……!?」
セレネ「(……なん……でっ……
耳を、ふさいでるのに……)」
セレネ「(……声がっ……聞こえてくるっ……)」
セレネ「(……やめ……て……
それ以上は……いっちゃ、だめっ……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……私の……声で……
……私の……姿で……
私の、心を……さらさないでっーー)」
せれね?「ーーこんな、世界……」
セレネ「……や……めてっ……」
せれね?「……大切なみんなが、いない……
独りぼっちの……世界なんて……」
セレネ「……だ……めっーー」
せれね?「ーー……いらないっっ!」
セレネ「……い……やっ……
……いやっーー」
せれね?「ーー女神さま……お母さん……お父さん……
……私を……愛して、いないの……?」
セレネ「……っ……!」
せれね?「……愛してる……なら……
…………ずっとっ…………」
せれね?「……ずっと……傍に……
一緒に……いてよっっーー」
セレネ「ーーっ!?
……やめ……てっ……」
セレネ「……やめて……よっ……」
セレネ「……もう……いやっっっーー」
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……セレネの叫びが、世界に届いたとき……
白く輝いていた、世界の鏡は……灰色に染まった……
……以降、この世界は……
白ではなく……灰色に、照らされるようになる
……そして、世界の鏡が灰色になった瞬間……
……後に、セレネが導き出す答え……
その答えのきっかけとなる、陰と陽の双子が……生まれた
……しかし……セレネが、双子の姉妹のことを知るのは……
……もう少し、先のことであるーー
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シーア「…………
……ぅ……ぉ……おぎゃぁぁっぁぁ」
クロハ「……ぅ……
……おぎゃぁぁぁっーー」




