ーー第2章 「過去から響く叫び声」ーー
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……そして、穏やかな世界が続く中……
初めて、一人の人間が……消えようとしていた……
……その時、セレネは聞いてしまう
あの、旧い世界を……思い起こさせる、叫びを……
……小さくとも、
確かに聞いたことのある……産声のような、叫び声をーー
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セレネ「……っ……!
……この……叫び、声はっ……!」
セレネ「……っ!
……なん、でっ……!
どこからっ……!?」
セレネ「……っ……!
あの……魔物から……!」
セレネ「(…………?
……魔、物……?)」
セレネ「(……なんで、魔物がここに……)」
セレネ「(…………
……境界を越えた……ここに、いるの……?)」
セレネ「…………っ!?」
セレネ「(……っ……
……これ、はっ……)」
セレネ「(……これは……力……!?)」
セレネ「(……あの、魔物から……
大きな陰の力を……感じるっ……!?)」
セレネ「…………っ
……どう、してっ……?」
セレネ「(……なんでっ……?
……あの、世界じゃないのに……
……天使と悪魔の世界、じゃないのにっ……)」
セレネ「(……っ……
……この、新しい世界で……
心じゃなく……力を、感じるのっ……?)」
セレネ「…………!」
セレネ「(…………
……あの……旧い世界の、暴走みたいに……
姿が……変化している様子は、ない……けれど……)」
セレネ「(……でも……今も、響いてる……
この、叫び声……この……声、はっ……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(…………
……忘れるはずが……ない……)」
セレネ「(……小さいけれど、確かにっ……
……確かに、暴走の時の……叫び、声だ……)」
セレネ「…………っ!?
……人を、襲おうと……して、る……!?」
セレネ「ーーだめっっ……!」
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……そして……
人が、魔物に襲われる瞬間……セレネは……
……見守る者では、いられなくなった
……彼女の力で、
魔物に満ちる陰の力を、吸収したとき……
……彼女は、初めて知るのだった……
……魔物の言葉を……そして、想いをーー
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……き…………たく…………ない……
……き……え……たく…………ない……
………………きえたくない………………
………………消えたくない………………
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セレネ「…………っ!?」
セレネ「(…………
……これ……は……
……知って……る……)」
セレネ「(…………っ
……あの……ときの……
……陰の、女神さまの……とき、の……)」
セレネ「(……っ……
……あの時より……
……すごく、小さいけれど……同じだ……)」
セレネ「…………!」
セレネ「(…………
……それなら、この……魔物の、想い……は……)」
セレネ「(…………
……女神さまが言っていた……
……人間の……最後の、想い……?)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(……なん、で……?
……なんで、魔物から……?)」
セレネ「…………っ!
……消え……た……?」
セレネ「……っ……!?」
セレネ「ーーいけないっ……!
ここに、居てはーー」
セレネ「(ーーここに居ては……人と、関わってしまうっ……!
……早く離れないとっ……!)」
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……そして、独りになったセレネは……
あの……陰の力を持った、魔物について考えるーー
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セレネ「…………」
セレネ「(……あれは……
……想いの、暴走……だった、の……?)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(……分から、ない……
……今の私じゃ……何、も……)」
セレネ「(…………
……でも、あの……叫び声と……)」
セレネ「(……っ……
……なに、より……感じてしまった……
この世界に……あるはずのない、力が……)」
セレネ「(……陰の、力がっ……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……私に、思わせる……)」
セレネ「(…………
……この、世界にも……あるのだと……)」
セレネ「(……想いの、暴走はっ……)」
セレネ「…………っ…………
……変わって、ないっ……」
セレネ「(……っ……
……何も……変わって、ないっ……
……あの、崩壊する世界から……何もっ……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(…………
……いや……信じ、よう……)」
セレネ「(……っ……
……信じ、たいっ……よ……)」
セレネ「(……変わってる、はずだって……
……ちゃんと、世界は……救われたんだ、って……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(…………
……そうじゃなきゃ……救われて、なきゃ……)」
セレネ「(…………っ
……何のために……女神さまと……お母、さんはっ……)」
セレネ「(……っ……
…………何のために……私、はっ…………)」
セレネ「…………っ…………
…………ふぅ…………」
セレネ「(…………
…………落ち、着こう…………)」
セレネ「(…………
……大丈夫……
……女神さまの、言葉を……思い出すんだ……)」
セレネ「(……女神さまは、言ってた……)」
セレネ「(……新しい世界では、
何が起こるか……分からない、って……)」
セレネ「(……だから、見守ってほしい……と……)」
セレネ「…………っ!」
セレネ「(……私は、そのために……)」
セレネ「(……世界を、崩壊させないために……
……見守る者として、ここに……いるんだっ……)」
セレネ「…………」
セレネ「(……だから、もし……
……もしも、私の想像通り……)」
セレネ「(……これからも、想いの暴走が……
暴走した魔物が……現れる、としても……)」
セレネ「…………っ」
セレネ「(……私の力なら……吸収の力なら、大丈夫……
さっきも……大丈夫、だった……)」
セレネ「(…………
……それに……魔物の力を吸収する、だけなら……
……人間と、関わることには……ならない……)」
セレネ「(…………っ
……ならない……はずっ……)」
セレネ「(…………
……その、はず……だから……)」
セレネ「(……まだ、私はっーー
ーー見守る者で、在り続けられるっ……)」
セレネ「……っ……」
セレネ「(…………
……だから、大丈夫だよ……)」
セレネ「(……女神さま……お母さん……お父さん……
……心配しないでね……大丈夫、だから……)」
セレネ「……私が、いるからっーー」




