ーー第1章 「終わりゆく世界」ーー
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ある始まりの夢の中にてーー
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ーー燃えている
争いがあったのだ
そんな場所で、一人の悪魔が倒れている
彼女は片翼を失っており、
いまにも命の灯が消えてしまいそうだ
ふと、彼女の手が動いた
闇の中で、光に縋るかのようにーー
そして、彼女の瞼がゆっくりと上がり、
その瞳が、光を捉える
ーー瞳の先には、天使の僕がいた
……彼女と同じく、片翼を失い、
消えようとしている、僕がーー
ーー彼女の声が、聞こえた
か細くも、はっきりとした声が、
僕の心に響く
「天使様……」
ーー僕を求める響きが、
消えゆく恐怖を、和らげてくれた
……僕は、求めていたのだ
恐れを覆い隠してくれる、暖かな闇をーー
こうして光と闇は交わり、ひとが生まれた
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ある洞窟の中にてーー
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悪魔「……きて……ね」
ひと「う~ん……」
悪魔「……起きてね~」
ひと「悪魔……さん?
……はっ!?
……おはようございます!」
悪魔「おはよう~
よく寝てたね~」
ひと「あはは……
なんか夢を見てたみたいで……
ぐっすり寝てしまいました」
悪魔「夢ね~
どんな夢だったの?」
ひと「……それが、
あんまり覚えてなくて……」
ひと「……周りが燃えていて、凄く怖い……
……そんなことしか、
思い出せないんです……」
悪魔「…………
燃えている……か」
悪魔「まあ、夢だしね~
あまり気にしなくてもいいと思うわ~」
ひと「そうですね!
ぐっすり寝れたし、良しとします!」
悪魔「うんうん!
元気だね~
その調子なら、大丈夫かな~」
ひと「……ついにですか!」
悪魔「ついにだよ~
天使さんも待っているだろうから、
行こうか~」
ひと「はいっ!」
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洞窟の入り口にてーー
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天使「zzz……」
悪魔「天使さ~ん、
いますか~」
天使「zzz……」
ひと「天使さーん、
おはようございまーす!」
天使「……!
二人ともおはよう
……夢を見ていたみたいだ」
悪魔「周りが燃えている、夢……ですか?」
天使「……!
ああ……そうか
また、同じ夢を見ていたんだね」
ひと「そうみたいですね
……いつものように、
あんまり覚えていないんですけど……」
ひと「……!
そういえば……悪魔さんは、
夢を見ることはないのですか?」
悪魔「そうね~
あなたや天使さんと同じ夢を、
見ることはないわね~」
悪魔「まあまあ、夢より今はあのことよ~
そうですよね~、天使さん」
天使「そうだったね
じゃあ、行こうか……外の世界に」
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ひとが初めて訪れる、洞窟の外の世界にてーー
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ひと「……ここが、外の世界ですか!
…………
なんだか……暗い、ですね」
悪魔「そうだね~
……昔から、
この世界は変わっていない」
天使「……しかし、
確実に崩壊へ向かっている」
天使「感じるんだ……急がないと」
ひと「……?
……崩壊……?
この世界は……
無くなってしまうのですか……?」
悪魔「そうね~
……今のままなら、無くなっちゃう」
悪魔「上を見て
……あの空に浮かんでいる、
この世界を照らす、丸いものを」
ひと「……上……?」
ひと「……!
空の丸いものって、
あの……大きいものですか?」
悪魔「そうよ~
……あれはね、この世界を映す鏡なの~」
悪魔「元々は白色に輝いていた……
……らしいのだけれど、今はーー」
天使「ーー中心を境に……
……黒色と黄色に分かれて、
輝いてしまっている」
ひと「……?
分かれていると、ダメなのですか?」
天使「……ああ
一つの器に、二つのものは入らないんだ」
天使「……無理に入れてしまうと、
器が壊れてしまう……」
天使「だから、
本来は混じり合っているものなんだ」
悪魔「今は……世界という器に、
二つのものが無理に入れられてしまっているの~」
悪魔「……だから……ね
……遠くない未来に、
壊れてしまうのよ」
ひと「っ……!?
……崩壊を止めることは、
出来ないのですか……?」
天使「……女神だ
女神に会うことができれば、
世界が崩壊することは……防げる」
悪魔「女神様はね~
この世界を創られた方なの~」
悪魔「だから女神様なら、
壊れかかっている、この世界を……
……きっと、
もとに戻してくれるわ~」
ひと「……!
なら、行きましょう!
女神さまのところに!」
天使「そうだね、行こうか
……そのために、
僕たちは外に出たのだから」