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第48話 エピローグ(一部完結)

第一部完結となります

 翌朝早く、クリスは陛下に謁見するために王宮に向かった。私は荷物を最終確認してから、いつも通り祈りを捧げるため、天界樹に通じる扉をくぐった。夜から降り始めた雨はあがって、今日は快晴だ。


「今日から少しの間来られませんが、どうかこの世界が平穏でありますように」

 祈り終ると、天界樹の葉がキラキラと輝きを増した。樹の根元に設置された保存用の魔石も一応確認しておく。両手に乗るほどの大きさの青い石は、約10日分の祈りを保存してある。

 聖女が天界樹の祈りをお休みできるなんて、ガレア帝国にいた時には想像も出来なかった。きっとカイラ様も、この魔石の存在を知れば喜んでくれるだろう。そう思うと、今から会うのが楽しみになってきた。

 私が屋敷に戻ると、クリスも王宮から戻っていた。今朝より、何故か不機嫌になっているようだ。

「クリス、どうでしたか?魔石を渡してもいいと、陛下は許可してくださいましたか?」

「ああ、ついでに仕事を増やされた……。アウレリーア国に着いたら、あちらの国王と謁見することになった」

「謁見、ですか……」

 クリスが嘆息する。面倒くさいと顔に書いてある。

「せっかく10日分の仕事を片付けて、リアとゆっくり出来ると思っていたのに、ドンドン仕事を増やすんだ……本当に厄介な狸おやじだよ」

 狸おやじとは、陛下のことだ。不敬罪で捕まらないのは、狸が認めているから……ではなくて、本人の前では言わないからだろう。

「クリス、誰かに聞かれたら困ります。それで、アウレリーア国王陛下に謁見すれば、仕事は終わりですか?」

「いや、陛下からの親書を渡して、ロウド王国の交易の進捗状況を説明して来いってさ。ついでに保存用魔石もいくつか持って行って、その説明もする……。くそっ本当に次から次に……国王主催の夜会にも招待されているから、そこへも参加しなくては……ごめん、リア」

 しょぼんと項垂れるクリスの頭を、よしよしと撫でてあげる。こういう時のクリスは、10歳年上の男性には見えない。可愛い旦那様である。

「大丈夫ですよ。その夜会には、私も参加するってことでいいんですね?」

「うん、面倒をかけてごめんね。本当は海に行って、ぼんやりする時間とかイチャイチャも、いろいろ考えていたのに、あの狸のせいで……」

「いいですよ。クリスと夫婦になって初めて参加する夜会です。王族主催の夜会なのはちょっと緊張しますが、頑張って着飾りますよ。楽しみましょう」

「そ、っか、初めての夜会か……リアが着飾ってくれるなら、面倒な夜会も楽しみになって来たよ」

『ルー、ルル!』

「あ、ルーちゃんはお留守番かな。子供は、夜会には参加できないのよ……」

「ふははは、残念だったな、チビ」

 大人気なくクリスが勝ち誇ったので、怒ったルーちゃんが口から冷気を放って、クリスの前髪を凍らせてしまった。

「このチビ、やっぱりお前は連れて行かん!留守番だ!」

 素早く人間の姿になったルーちゃんが、私の後ろに隠れてべーっと舌を出した。

「もう、クリス。そろそろ出発しないと、お兄様が集合場所で待っていますよ。今日中に東の辺境伯領へ着かないと、ますます予定が立て込んでしまいます」

「……わかったよ。では愛しの奥様、いざ新婚旅行へ参りましょう」

 初めての旅行に、期待で胸が高鳴る。恭しく出されたクリスの手に、私は微笑んで手を添えた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

活動報告でも書いたのですが、この作品は「白の魔法使いは、弟子を逃がさない」の続編です。前作は42話完結だったので、当初はこの作品も42話くらいかな?と思っていたのです。ところが、42話を過ぎても終わる兆しがない。迷いましたが、しっかり完結させるためにも、今回は二部仕立てで行かせていただきます。

二部は新婚旅行編を中心に進めていきます。書き溜め中ですので、暫くお持ちいただけると幸いです。

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