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第28話 ルーちゃんのトコトコ日記➀

○○月○○日

 今日やっと、固いカラを割って、外に出ることが出来た。

 うれしいと思ったのに、どうしてだろう?空気を吸うたびに、息が苦しい。お母さんが何か呪文をとなえたら、少しだけ気分が落ち着いた。でも息を吸うたびに、毒のようなものがぼくに溜まっていく気がした。


○○月○○日

 ずっと息が苦しくて、お母さんの呪文も効果が無くなってきたみたい。ぼくを見るたびに、お母さんが悲しそうな顔をするから、ぼくも悲しくなってしまった。


○○月○○日

 今はもう体を動かすことも出来なくなった。ぼくは生まれてから、ずっと巣の中にいて、外にも出ていない。お母さんから、直接知識を分けてもらったから、空がどんなものかは知っているけど、ちゃんと見てみたいな。風はどんなふうに冷たいの?雲は本当に白い?


○○月○○日

 息をするたびに、毒が溜まる。もうお母さんでも、どうしようもないみたい。死が身近に感じる。

 突然お母さんが顔を上げて外を見た。そのままぼくを置いて飛び立ってしまった。もう見捨てられたんだと思ったけど、少ししたら、ぼくたちと違う生物を連れてきた。人間って言う生き物だ。食事の時間かな?

 お母さんは人間を食べないって言っていたのに、趣向が変わったのかな?

 人間の女の子がぼくを見た。たぶん可愛い部類の女の子というメスだ。女の子はぼくに近づいて手をかざした。少ししたら、少しだけ息がし易くなった気がした。どうしてだろう?


○○月○○日

 聖女だという女の子が、ぼくをルーちゃんと呼ぶ。なんだかうれしい気分だ。でもお母さんの分けてくれた知識では、名前を受け入れる行為は契約を結ぶということだった。

 この女の子を主として認める。そしたらずっと一緒にいられるんだ。ぼくはすぐに受け入れることを決めた。だってこの女の子の周りは、すごく気持ちがいいんだ。息を吸っても苦しくない。


○○月○○日

 オーレリアはぼくを治してくれた。でもぼくはまだ一緒にいたい。お母さんがぼくに最後の確認をした。

『ルーよ。聖女と一緒にいることを、望むということでいいのだな?』

 ぼくはもちろん一緒にいたいと答えた。少しお母さんが寂しそうにした。でも悲しそうではなかったから、きっとこれでいいんだ。

 巣立ちだと言って、お母さんがぼくを咥えてオーレリアに渡した。本当のドラゴンの巣立ちは、自らの翼で空を飛べるようになった時だけど、これはオーレリアには内緒だ。

 ぼくが飛ぶには、もう少し時間が必要だけど、ぼくはオーレリアについて行くと決めたから、だから今日が僕にとっては巣立ちなんだ。

 今日、初めて外に出た。お母さんの背中の上で見る空は、とっても青くて綺麗だった。風は冷たくて、飛ばされそうになったけど、雲はふわふわとして白かった。

 外の空気は、やっぱり少し息苦しいけど、オーレリアの側にいればきっと大丈夫だ。


いつも読んでいただきありがとうございます。

今回は作者お気に入りのルーちゃんの日記になっています。書いているのではなく、心の日記的な感じだと思っていただけると幸いです。

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