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和の国異世界御伽噺〜妖気漂う異世界ファンタジー戦記〜  作者: 臣 治
第一章 伝説の始まり
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第五噺 武士

「今日の稽古はここまでだ。」

「はぁはぁはぁ」

俺は稽古を終えて部活の比じゃないほど疲れている。

ツナはあれから毎日俺に稽古をつけている。


基礎的な構え方から腰の落とし方、四股の踏み方からみっちりだ。構え方だけでも初めての俺の脚には負担が大きい。

四股に至ってはできないと言っていい。

何度ツナをシバこうかと考えたことか。

だが、たしかに少しずつ体力と身体は出来上がってきている気がする。


でも妖気を手や足に込めようとしても全くモヤが発生しない。

「何も考えてる」

「魔法が上手く使えないんだ。」

「ま、なんて?妖気のことか。妖気は鍛錬で増大もするし、使い方の応用もできるようになる。」


そう言って、ツナは近くの水を手に取った。

水張すいちょう!」

手に含んだ水が大きな掌になり木々を薙ぎ払って消えた。


「これは妖気を使って水の形を変化させて掌にして、、お前はそんなのまだできねぇんだから今はいいだろ!」

「魔法だ!! これこそ魔法じゃないか!!」

「は?」

俺の偉大な魔法使いの夢がひらけてきた!

そんな興奮している俺を見てツナは変な物を見る目で心配していた。


ーーーーー


ここの生活にもすっかり慣れてきた。

河童たちとも仲良くなった。


モズは相変わらずフレンドリーなやつだ。

最近知ったことは、モズは相撲はあまり得意ではないが、刀を扱わせるとなかなか上手いということ。

「よっと!」

いとも簡単に薪を真っ二つに切ることができる。

しかも切り口が綺麗だ。これは太刀筋が綺麗な証拠らしい。

見かけによらずできるやつだ。



ガアクというやつもなかなかやる。

ガアクは見た目は人間で水掻きと皿があるタイプの河童だ。

祖父が人間らしい。そんなタイプも珍しくはない。


彼はサンズの下でテキパキと雑務をこなしている。

「サンズ様、見張り番の人数を数人増やしてはいかがでしょうか。近頃どうも近隣が何やら騒がしい様子で。」

サンズも頼りにしているようだ。キリッとした顔立ちで少し鼻に障るがまあいいやつだ。

俺によく気をかけてくれるしな。


「タンバ殿、ここの生活にも慣れてきましたか?」

「ああ、なかなか居心地いいよ!」

「それはよかった、ゆっくりしてくだされ。私は忙しいのでこれで。」

真面目なやつだし、頼りになりそうだ。


ーーーーー


俺の家はサンズの家を使わせてもらっている。

まさか河童と同棲することがあるとは思ってもなかった。

サンズは立場があるからなのか、他の家に比べて広い家に住んでいる。俺が住んでも充分に足りる。


やはり河童の里の土で造った壁や木で細工した屋根もクオリティが高い。風がちゃんと入ってこない。そのため、地下にある家だがちっとも寒くない。


たが、なんと言っても格別なことがある。

それは、

「タンバ様、ご飯の用意ができました。」

そうこれだ。

彼女が毎食俺とサンズにご飯を作ってくれる。

この里では地上の大鍋で女性たちが料理を行い皆に分配する仕組みのようで、彼女は夜になると家まで運んでくれる。

「ありがとうセンコちゃん。」


センコちゃんは見た目は河童だが、とても整った顔をしていて人間の俺から見ても可愛い。しかも胸もなかなかに大きい。髪はオレンジ色のショートカットでそれも似合っている。

1番のいいところはこのゆったりとした喋り方とおしとやかさだ。


「ここに置いておきますね。」

「センコちゃんも一緒に食べようよたまには。」

「え、いいのですか。でしたらお言葉に甘えさせていただきますね。」

ニコッと微笑むその表情が俺は癒される。


今日メニューは鶏の卵を焼いたスクランブルエッグのようなものと蒸した魚のムニエルとキュウリの一本焼きだ。

基本的に食事はキュウリと魚が主なようだ。

鶏は地上で飼っているのでそれを使う。

俺も卵をとりにセンコちゃんといったが鶏に手をつっつかれ怪我をした。

それから一緒には行っていない。


「今日はサンズのやつ遅いな。」

「そうですねー、上で忙しそうになされてますね。」

そうなのだ。近頃サンズたちは何やら忙しくしている。

だから今日は相撲の稽古はお休み!一日中ゆっくりできていた。

でもみんな忙しくしてるので、兵士じゃないタロウと一緒に川で魚を取って遊んでいた。


「なんか最近バタバタしてるなー、なんかあるの?」

「最近周りの国々の動きが色々あるみたいですよ。」

どうもこの世界は安全ではないような感じだ。

たしかに文化的に見ても日本の中世か、いやもっと昔の雰囲気はある。物騒なもんだ。


「私の兄も忙しそうにしています。」

「え、お兄ちゃんいるの?」

「はい。兄が1人おります。皆さんと一緒になにやら慌ただしく動いてます。」

「へー、大変だね」


その時、サンズが帰って来た。

「何だ、センコも来ていたのか。」

「サンズ様、お帰りなさいませ。タンバ様に食事に誘われていました。すぐに食べ終わりますので」

「いやいい。ゆっくりしていけ。俺もまたすぐにでる」

どことなく疲れているみたいだ。

それもそうか、俺以外のみんなはそれぞれの仕事があり、日々働いているんだ。

俺は何となく焼きキュウリを持つ手を一回置いた。


「サンズー、なんか忙しそうだな。何しに帰って来たんだ?」

「何でもいいだろ。俺の家だぞ。これを研ぎに帰ってきた。」

そう言ってサンズは腰に差してあった刀を抜き取り砥石で研ぎ始めた。


「へーそうやって研ぐんだな」

「お前、刀も研いだことないのか。」

「だってそんなもん必要ないもん。物騒だろ。」

サンズはスースー音を立てながら刀を研ぐ。


「そうかお前の世界は平和なんだな。これを使わないに越した事はないのかもしれんな。」

フッと寂しそうな笑いながらまたゆっくりと研いだ。


◼️◼️◼️◼️



「あーー!よく寝た気がする。もうこんなに明るいな。」

ここは地下だが、天井には穴がいくつも空いており、光が差し込むような造りになっている。


腹も減ってきたし、いつものように外に出れば大根やキュウリの入った汁が配給されているはずだ。

あれは朝ご飯には最適だと思う。


家を出ると何だか街が静まり返っている。

何だ、誰もいないな。

いつもなら子供達がはしゃいで遊んでいるのにそれもない。センコちゃんたちの配給もしていないみたいだ。

まさか、皆んなどこかへ避難したのか? 

避難ならこの地下にしそうだが、、


明日は何かがあると2人が言っていた。

近隣の国が騒がしいとも。

ガアクも見張りを増やすとか言っていたし、何かあったに間違いなさそうだ。


俺は慌てて地上に出た。それでも誰もいない。

街の様子から襲われた形跡はない。

みんなどこへ行ったんだ。まさか冬眠したのか。

いやそんなはずはないな。

とにかく探そう、お腹も空いたし。

学校の前は朝ごはんなんか食べなくても平気だったのに今は無性に腹が減る。


「おーい!サンズーー!、おーい、モズーー!」

誰もいない。

「センコちゃーーん!」

センコちゃんまで居ないなんてこれはただ事じゃないのかもしれない。

地上にもいないとなると、里の外に出たのか?


それはそうと、さっきからカチャカチャ音がしてうるさい。それはこの腰に備えた刀だ。


武器庫にサンズと行った時にかっこいいと思って日本刀に見惚れていたら、

「どうせ使いこなせんだろうが、持っていて損はないだろ」と偉そうに言ってきてこの刀を渡された。

一応怖いので刀も腰に差してきたが、慣れてないので邪魔で仕方ない。

「置いてくればよかったかな」


ん?何か声が聞こえるぞ。微かに何人かの声が聞こえる。

「おーい! だれかー!!」

呼びかけても返ってはこない。

でも、どこからか声が聞こえる。

これは相撲の時のような歓喜の声か?

また相撲でもしてんのか。

とりあえず声の聞こえる方に行ってみよう。


ーーーーー


丘の斜面に着くと下の方でみんながぎゅうぎゅうになってワイワイやっている。

何か祭りでもあるのか?


群衆の最後尾に到着した。

「なんかあるの?」

「お、あんたか!今日は同盟国んとこの武士団体が到着するんだよ!もう来るらしいがな!」

同盟国ってたしかチラッと聞いた気がする。

サンズたちが忙しくしていたわけか。

武士団体か、カッコ良さそうだな。

ここからじゃよく見えないな。


「すみません、失礼します。ごめんねー」

群衆の中を縫うように進んでいくと、道を一本通すようにみんなが並んでいる。駅伝でもあるのかようだ。


お、何かがこっち進行している。武士団のようだな。

そこへ領主のダクリが現れた。

その傍にはサンズともう1人茶色の河童がいる。


そして、武士団はダクリたちの前で止まる。

甲冑に身を包んだ姿や動きやすそうな簡易的な鎧を着た者がいる。

先頭の武士は甲冑を纏い、角の生えた熊に乗っている。

獰猛そうなバケモノ熊を従わせて、堂々とした姿は貫禄がすごい。


俺は武士団体のあまりの迫力に見惚れてしまった。

あれが武士か、、、


「久しいなダクリ。」

先頭で熊に乗った甲冑の男が口を開いた。

「ああ、いつぶりか、、それにしても相変わらずの気迫だな、タイゼン。」


「戦争が近いのでな。皆に武装を施してきた。なに、お前らに戦を仕掛けたりはせんよ。」

「こちらも戦争に向けて準備をしておる。まあ、話は私の宮殿で聞こう。」


ダクリがそう言うと、タイゼンは手を挙げた。

それを見た後ろの兵が抜刀し、刀を天に掲げる。

100人以上はいるであろう人数の抜刀はそれだけですごい音と迫力。

そして、一斉に鞘に収める。

すごいなサムライ。俺は思わず生唾を飲んだ。


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