第三噺 河童の里
河童に質問して一通りのことがわかった。
まず、河童の名前はサンズというらしい。
サンズは河童族が治める河童の里の軍師的な立ち位置にいる立場のあるやつだった。
そして、この世界は紛れない異世界だ。
どうやって来たのか定かではないが、おそらく俺の落ちた川と流れ着いていた川が何故か繋がっていたのだろう。
自分の身体はそのままだし、転生のように死んだわけではないみたいだし、おそらくそんなところだ。
残念なことに、本当に非常に残念なことにこの世界にはどうやら魔法というものはないらしい。
さらに俺が大好きなエルフもいない。
まあ河童がいるし、ここは日本の中世っぽい異世界だ。
魔法はないが代わりに妖気というものが存在する。
早い話が、妖怪などが持っている力のようなものだ。
妖気はほとんどの生き物が生まれながらに持っており、人間も持っている。
そしてこの世界には人間もいるし、俺を襲った蜘蛛のような知能の低い妖怪やサンズのような妖人と呼ばれる、知能の高い人間のような生き物もいる。
基本的に人間も妖人も妖気を使いこなして生活や争いを行うらしい。
最も日本っぽいと思ったところが、刀だ。
種類は様々みたいだが、サンズが使っているのが日本刀だ。
この刀に妖気を込めるらしいが武器に妖気を使うのはやはり鍛錬がいるらしく、俺には難しい。
しかしできるようになればかなりの武器になるらしいのでほとんどが刀を使っている。
そんな刀を携えた者を、サムライと呼ぶみたいだが、何とも日本だ。
この世界にはいくつもの国がそれぞれの領地を保有していて、河童の里は河童族が主に暮らしている国らしい。
そのための世界を総称する呼び名はないらしいので、俺はこの大地、引いてはこの世界を和の国と呼ぶことにした。
そのままだが、それ以外思い当たらない。
サンズから聞いた情報だけではこれぐらいのことが理解できた。
なんか他にも、天大王という存在がいるとか、その国がアマノ国と呼ばれているとか、他にも大きな国や小さな国があるとか、まあその辺のことは今はパンクしそうなので頭の片隅に置いておく程度にすることにしたのだった。
ーーーーー
何はともあれ、俺はサンズに連れられて河童の里に入った。
俺が想像していた藁の家は一つもなく、石を積み上げて作り上げれた見事な建築だった。
大きな川から方々に穴が繋がっていて、そこから各民家に水が湧き出ている。その穴を泳いで川の底に作った地下の御殿は龍の飾り物が堂々とかざられていてそれは素晴らしい。
本当にすごいな、俺の世界でも同じようなものはない気がする。建築のレベルが高い。
「すごいだろ、そーだろ」
サンズだ。俺にこの国を案内している。
口数は多くないが俺が驚くたびに自慢げな顔をする。
「ここは河童の里の宮殿だ。ここに領主様がいらっしゃる。」
「河童はもっとショボいのかと思った。」
「おい、聞こえてるぞ!言葉も選べよ。まあ驚くだろうな、ここは河童の里の宮殿とその城下町、カッパドルキアだ。」
カッパドルキアか、かっこいいな。河童の里から町の名前に国の名前を変えた方がいいじゃないか。まあ言わないでいいか。
ーーーーー
そこで、河童の里の領主にあった。
つまりはこの国のトップだ。
領主は奥に座っていて、周りには片膝を立てた家臣たちがずらっと並んで座っている。
もちろん皆河童だ。
色は緑や青、茶色だ。そこでこれまでの経緯を話した。
サンズの計らいもあり俺はサンズの保護観察のもと、この国に住む許可が出た。
「丹波滝よ、サンズと2人にしてくれ。他の者も。」
『はっ』
一斉に部屋から出た。当然俺も出された。
「お前、変わった身なりだな。商人か?どこの国から来たんだよ。」
侍の甲冑のような鎧を纏った河童サムライに尋ねられた。
「まあちょっと色々ありまして、」
「歳はいくつだ?」
「17です」
「え、同じじゃねぇか!!」
「え、!!高二で、もうサムライ!刀持ってんの!!」
「なんだコウニって?小鬼族か?」
「いや、すまん、」
そうか、昔の日本も17歳って立派な大人だな。てか、小鬼族ってなんだ。まあいいか。
「仲良くしようぜ!俺はモズ!」
「おお、俺は丹波滝だ。」
「よろしくなタンバ!」
名前に関しては日本っぽくないような名前もいるが、現代の感覚ではないのでよくわからないな。
漢字もわからんし。
とりあえず友達? ができた。
でもこのまま河童とこんなところにいるなんて考えられないぞ。
早くこのよくわからない世界から帰らないと。
、、、でも帰って何があるんだ、またあの世界に帰って俺には何があるんだ。帰ったところで俺の将来は何があるんだ。
いっそこの世界で自分の可能性を拡げたほうが。
なんて、可能性も何もないか。今の俺には何もないな。
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「サンズよ」
領主のダクリがフワフワの座布団に腰掛けたままサンズと2人になって話を始めていた。
「はっ、領主様」
「よせ、そんなに畏まるな。2人ではない」
「わかりました。ダクリ様」
サンズはそう言って、ダクリの前に胡座をかいて座った。
「あの者の申すことは誠なのか。」
「私の見る限り概ね事実かと思います。あの身なりに全く違う文化。そして、少し変わった妖気を感じます。」
「そうだな、あの妖、気色がないな。」
サンズは考えるように下を向きながら話を続ける。
「あの者は間者ではないと考えます。さらにいえば特殊な妖気、これは我が河童の里の今後のために使える力になるかも知れません。」
「サンズよ、最近将軍の様子がおかしいと聞く。天大王様も何やら戦闘準備を少しずつ始めておるらしい。」
それを聞いたサンズはなるほどと言った様子で切り返す。
「、、サイシ大国ですか。」
「流石サンズ、察しがいいな。」
「サイシ大国は天大王様と同じ天族が治める国、しかも、高い武力を誇る大国。天大王様もどう動かれるのか。体制を整えるよう準備致します。」
「頼んだぞ、この前も国が一つ滅んだと聞く。何があるかわからん。とりあえず先ほどの者は今後使えるかもしれん。
お前に一任することにするぞ。」
「はっ!」
サンズが立ち上がり、引き戸を開けようとした時ダクリが訪ねた。
「妹は大丈夫か?」
サンズは少し間を空けて返す。
「ええ、今のところは問題なく、、」
「そうか、、、ならよかった」
「では、失礼致します。」
サンズは俯いたまま領主ダクリの部屋を後にした。