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和の国異世界御伽噺〜妖気漂う異世界ファンタジー戦記〜  作者: 臣 治
第一章 伝説の始まり
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第二噺 恩人はカッパ

もう死ぬと思ったその時、

白い何かが飛んできて滝を押さえつけていた蜘蛛の巣を切り裂いた。

「なんだ、、、」

力が入らない身体を捩らせてその白い物体を見た。


その白い何かは空中でブーメランのように、飛んできた茂みの中へ戻って消えた。

巨大蜘蛛もキコキコッと音を立てながら茂みの方を見る。


巨大蜘蛛がさっきの蜘蛛の巣を空中に3つも作り上げ、それをブーメランの飛んできた茂みに向かって振り落とす。

またもや茂みから白い何かが飛び出してその蜘蛛の巣すべてを切り裂いた。


今の白いやつ、円盤だったよな?

丸くて薄い何か、

いったいあの茂みの中に何がいるんだ。


茂みから音がして大きな亀が現れた。

太い足に1メートルちょっとはありそうな体。

リクガメのようだ。


その亀の背中には腰に布を巻いていて全身が綺麗なブルーの肌で覆われ、そのブルーの肌に所々にもっと濃いブルーの斑点が沢山ある生き物がいた。


顔にはおそらくクチバシのような、でも丸い感じのクチバシだ。頭には普通に髪の毛がある。ただ頭の上にはおそらく白い皿のようなものが!!、、 やはりこいつは間違いない、河童か!!


絶対におかしい。

デカい蜘蛛ならまだ突然変異でいるかもしれないと思ったけど、河童はどう考えてもおかし過ぎる。

今はそんなことよりも河童と蜘蛛の戦いだ。


巨大蜘蛛は河童の存在を認識すると河童めがけて突進した。

蜘蛛の巣が当たらないので直接攻撃といったところだろう。

河童は亀からスッと降りると蜘蛛の前に立ち塞がった。


よく見ると河童の腰には刀がある。

あの刀を使って蜘蛛を切るのか!

河童は右脚をゆっくりと後ろに下げた。

蜘蛛が飛び上がり河童に襲いかかる。

おお、ここで刀を抜くか!


パチンッ!!


物凄い音が響いた。

そのままパチンパチンと音は鳴り続ける。

河童は踏ん張りながら3倍ほどの大きさの蜘蛛に正面から張り手を何発も打ち込んでいた


「えーー素手!! 刀は!? あ、河童だから相撲か!  相撲の張り手か!いやいやここで!?」


俺のツッコミの間に蜘蛛は仰向けに吹っ飛ばされていた。

河童は亀の手綱を引っ張りながら、俺の方に近づいてきた。


河童は何語なんだ、河童だからやっぱり日本語か?

目の前までくると傷だらけで横たわる哀れな俺を見下ろした。

「殺さないでくだふぁい」

口を切ったせいで上手く喋れない。


河童は黙ったまま俺の身体の周りを周りながらじっくりと見る。顔、腕、背中、足、じっくり見る。


「いやなんか喋れや!!」

「うるさいやつだな!!」

「おお!日本語!!!」

言葉が通じたことにとりあえず感動しなんか安心した。


「お前、瀕死だぞ。身体もこんなにボロボロで喋る余裕があるなら大人しくしていろ。」

「めっちゃ流暢!!」

「だから黙れ!」

「助けてくれるのか」


河童は持っていた瓢箪を栓をあけて水を飲ませてくれた。

「あーー!生き返る!」

「お前見ない格好をしているな、見るところ刀も持っていないし」

「ここはどこなんだ?」

「ん?わからずに来たのか、ここは河童の里の領地だ。」


河童の里?俺が想像するに川のほとりに藁で作った家を立てて何匹も住んでいるのか?


「見ての通り動けません、助けてください」

「どのみちお前は得体が知れないからな、どこかの間者かもしれないから連れていくつもりだ。」

「間者ってスパイってこと?そんなんじゃない!来たくてきたんじゃないって!信じてください!!」

「そうと決まった訳じゃない、落ち着けて」

河童は滝を肩に担ぎ、亀の甲羅の上に投げてまた亀に乗ってその場を出た。


ーーーーー


河童の里に向かう途中、河童が訪ねてきた。

「お前本当に何者だ?」

「それはこっちのセリフだ!!」

少し怒りが湧いた!

それもそうだ意味のわからないまま身体がボロボロで死にかけた挙句に、河童に助けられて亀の背中の上にいるんだ。少しはおかしくなる。


とりあえず事情を話してみよう。

「俺は日本の東京というところから来て、、、」

川に落ちて目を覚ましたところから説明した。もちろん、河童や巨大な蜘蛛が日本にいないことも話した。


河童は考え込みながら話を聞いた。

「つまり、お前は全く違う文化を持った国から来たのだな。」

「浅いけど、そーゆーことです。」

「たしか昔何かの口伝で聞いたことがある。他の世界の話を」

「他の世界!?」

「この世界とは別の異なる世界が存在していて、その世界から渡来人がやって来るという昔話だ。」

昔話ってことは昔にも俺みたいなやつがいたのか?いや今はそんなことより、ここが異世界だということだ。


「ここは異世界なのか!」

「お前の話が本当ならそいうことになるな」

ここが夢にまで見ていた、俺のつまらない人生から解放してくれる異世界!!

おお! 神よ!! この哀れな男に祝福をお与えくださったのですね! ということは俺はこの先勇者のような特別に強い魔力を持ってこの世界を救う存在に!!


まずはこの世界のラスボスから聞いておこうか。

「この世界に魔王はいるのか?」

俺は生き生きとした顔で河童に聞いた。無論、動けず亀の甲羅に寝そべって河童を見上げながら。

「魔王?なんだそれは、どこかの王?」

「じゃあじゃあ、ギルドは魔獣は!!」

「何を言っているかわからんが、妖怪ならいるぞ、さっきの黒蜘蛛もそうだ。」


河童だからか、ギルドについて知らないとは。

異世界には欠かせないワードだろうに。

「てか、お前は妖怪じゃないのか?」

「俺らとあんな野獣を一緒にすんなよ、俺らは妖人だ。まあお前ら人間から見たら妖怪として一括りにするやつもいるがな。」

妖人? 魔物と魔人みたいな違いだろうか。

この世界には河童や蜘蛛以外にも人間がいるんだな、少し安心した。


「あいつは魔法を使って糸を出していた。お前のあの張り手も魔法なのか?」

「、、、、いやあれはただの張り手だ。」

「ただの張り手かよ!すげぇな!」

「蜘蛛が使っていたのは妖気だ。妖気を利用してあの蜘蛛の巣を作り出していた。」

「妖気?妖怪が使う?」

「まあ妖気はほとんどの生き物が持っているがな。俺らもお前ら人間も」

「え、人間も!?、ちょっと待ってくれ、、、魔法は?

詠唱とか魔法陣とかは?」

「何を言ってるんだ?よくわからんがそんなものはない。」

「え、エルフは!!容姿端麗なエルフは!!?」

「え、何だ? よくわからないがそんなものはいない。」


嘘だろー!! 

俺の異世界の醍醐味のエルフちゃんたちがいないだと!!

本当に何なんだこの世界わーーー!!


「え、じゃあじゃあ、、、」

それから俺は一方的に河童に質問しまくった。







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