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和の国異世界御伽噺〜妖気漂う異世界ファンタジー戦記〜  作者: 臣 治
第一章 伝説の始まり
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第十八噺 能力

「はっけよーい、のこった!」

河童達が体と体をぶつけ合い相撲に打ち込んでいる。

昨日の夜一睡もできないままだが、俺もこの相撲の稽古に参加している。

理由はカントのサムライの何人かも参加していて、そのうちの1人が俺とどうしてもやりたいと言ったらしい。

勘弁して欲しい話だ。

俺は何の因縁もないし、むしろ野蛮そうなカントの連中とは極力絡みたくないのに。



「おい、お前昨日はしっかり飯食ってないんだろうな。」

サンズが話しかけてきた。

俺は昨日腹が減ってセンコちゃんの料理を食べようとしたがサンズに止められた。

「ああ、おかげさまで腹がぺこぺこで相撲どころじゃないぞ。ましてや寝れてもないし」

「寝れてないのか、昨日の戦闘のことでか?」

「いや〜それはまた別の理由ってゆーか、まあとにかく相撲させるならもっと万全の体制でしたかったんだけど」

サンズは口に手を当ててこちらを見る。

「これは俺の勘なんだが、、お前が昨日見せたあの力は何かと考えた。」

それは俺も気になっていたところだ。妖気が全くない俺のどこからあんな力が湧き上がってきたのかを。


「お前はあの時突然力を発揮できた。俺ら河童は妖気の流れを目で見ることができる。さらにいえば、誰しもが持っている尻子玉(しりこだま)という妖気を宿している器官があるがそれを感じ取ることができる。だが、はっきり言ってお前の尻子玉には妖気が全くない。でもあの時たしかにお前の尻子玉に妖気があった、それもお前から出ていると言うより周囲から妖気を吸収しているように見えた。」

「てことは、俺は妖気は持ってないけど周りの妖気を吸収することができるってことか! すごいじゃん!」

「お前と会ってあの時だけそれを感じた。つまり常に吸収しているわけではなく、ある一定の条件を満たした時に妖気を吸収できると俺は考える。そう、それは空腹だ。」

「く、空腹?」

どこか嘘くさい話だが、俺も妖気を吸収していることは何となく感覚から同じように考えていた。

だがそのトリガーが空腹にあるとは驚きだ。

確かにあの時俺は朝から飯を食べずお腹はぺこぺこだった。さらに戦闘中に余計に腹が減っていた。

辻褄は合うな。


「つまり、俺は空腹の状態の時に妖気を吸収することができるってことか。」

「ああ、あくまで推測だがな。そして、戦闘が激化してさらにお前の妖気が増した事を考えると周囲に妖気が充満すればするほどお前はより多くの妖気を吸収できるってことだろう。」

とても納得のいく考えだな。

と言うことは俺は戦場では無限に妖気を吸収できるってことか!


「それで今日の相撲はやけに皆んな妖気を使ってるのか。」

「察しがいいな、今朝から皆が相撲をとっている。皆んなには戦さに向けて妖気を存分に使って相撲しろと言ってある。」

「まあな、直感力は自信あるんだ。」

俺の体のメカニズムを把握するために相撲を取れってことか。

でもそれがわかったところでどうしろって、、まさかな。


「次はツナとタキがやってくれ。」

サンズが指示をだすが、横槍が入る。

「おい、待ってくれサンズ殿。そいつとは俺がやる。」

「ナクノ殿」

ナクノサキ、女武士だがカントのサムライの中でもこいつが1番荒らしい。

「悪いけど、あんたは俺より強い!」

「は?」

皆が呆気に取られる。

「だから女でも俺は全力で行かせてもらうぞ」

「ふっ、当たり前だ。お前の力を見せてみろ、お前が使えないとわかれば即刻切り捨ててやる。」

とにかく俺は全力でやってみるしかない、早く力を知って飯を食わないとまずい。2日間の空腹そろそろ限界だからな。


「はっけよーい、のこった!」

行事の声と共に2人はぶつかり合う。

「河童みたいな妖人のようにはいかなくても、俺ら人間は刀がなくても力を込めることぐらいはできるさ。」

ナクノの足と腕に妖気が集中する。

くそっ、パワーが急に上がるやがった。やってやるか。

「こいっ!」

俺は妖気というものに呼びかけたが気付けば投げ飛ばされていた。


「話になりゃしないね!」

「ちょっと待って、もう一回だけ!」

「情けないな、こんなんじゃ俺も納得いかないもう一回だ。」

何とかもう一戦。どうして妖気が集まってこないんだ。

時間がかかるのか、それともコツがいるのか。


もう一度ぶつかり合う。

ナクノはまた四肢に妖気を込める。

まだ妖気が集まらない、どうしたら。

『あの時お前の尻子玉(しりこだま)には妖気があった。』

そうか、よくわからないが俺もその尻子玉(しりこだま)とやらに意識を集中させて、




ナクノが声を上げながら投げ飛ばそうとする。

が、ナクノは異変に気づいた。

さっきは簡単に投げ飛ばせた体が動かない。


どうなっている、こいつさっきは簡単に、はっ!

こいつ足に妖気を集中させているのか!

にしてもなんて力だ、こんなにびくともしないなんてあり得ない!


外野からサンズは滝の妖気の流れを見ていた。

やはり、周囲に漂っていた妖気がタキの身体に流れ込んでいく。それに、今あいつの足に纏わせた妖気尋常な量じゃないぞ。普通の人間は武器なしでは妖気をあそこまで放出できない、やはりあいつは普通じゃない。

サンズの口が不気味に上がる。


くそ、何でこんな

ナクノは滝のあまりの変化に動揺している。

滝は妖気の流れに意識を集中していて周囲の反応には気づいていなかった。


よし、今だな。

「はぁーー」

滝は腰を捻らせ腕を大きく後ろに弾く。


「あ、あれは! あいつやってみるつもりか。」

サンズはその動作が何をするためのものか瞬時に理解できた。

「何のつもりだ、てめぇ突きでもするつもりか? お前の突きごとに痛くも痒くもないね!」

ナクノは身体に妖気を纏わせていく。


滝は長い溜めの後目を見開きナクノだけ見た。

そして腰と腕を一気に解き放つ。

「し・ん・ちゅ・う・突きっ!!!」

解き放たれた滝の掌は真っ直ぐにナクノのみぞおちに当たる。それと同時にドンッという鈍い音が響き衝撃で風圧が飛ぶ。

ナクノはあまりの衝撃に白目を剥き、くびれのある綺麗な身体は海老の字に曲がって奥の林まで飛ばされた。

ナクノの後ろにいた何人かも衝撃で気絶している。

何が起こったのか皆呆然としていた。




おー! よくわからないけどなんか心中突きが成功したみたいだな。

てか、ナクノのやつ飛び過ぎじゃないか、、

なんか気絶してるギャラリーもいるし、やり過ぎたのか?


「す、すごいだっ!」「流石です!」「やるな兄弟!」

俺らの相撲を見ていたシバ衛門とアカデやモズが声をかけに来る。

サンズはまた考えている様子だった。


「お前、今の心中突きかなり良かったぞ!」

あのツナに褒められると嬉しいことだ。

「え、そう? 俺すごかったかな?」

思わず照れるが正直すごく気分が良い。


でも、今のではっきりした。

この場の妖気が流れ込んでくる感覚があった。そして妖気を吸収すると空腹間が少しずつ満たされていく。

やはり空腹と関係があることは間違いない。

さらに集中したら妖気を好きなところに集中させられるということもわかった。

あの時も同じように無意識に刀へ妖気を集中させていたんだろう。サムライはこうやって刀に妖気を纏わせて斬撃を飛ばしてるのか。


「サンズ様、いくら命令とはいえタキはまだ、やっと妖気が扱えるようになったばっかりだし、無茶ですって!」

何だかサンズとモズが揉めているみたいだ。

俺の話みたいだな。

「サンズ様ってば!」

モズが必死にサンズを止めているみたいだ。


「どうかしたのか? 俺の名前が聞こえたけど」

「タキ、、いや別になんでも」

モズがはぐらかそうとしているがサンズからは何か重たい空気を感じる。

そしてサンズが口を開いた。

「タキ、この里をでろ」

え? 今なんて?


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