第十七噺 夜② on the bed
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部屋に戻ってきたけど、これが一番の問題だな。
寝室には大きめクイーンサイズほどのベッドがある。
クイーンサイズで寝たことはないので予想だが、おそらくそれぐらいだろう。
確かにフカフカの綿で作られていて気持ちいい。
のだが、しかしだ。
同じベッドに赤髪の美少女が寝ている。
そして耳は何と言ってもエルフ耳!!
俺が中学生の頃から憧れ続けているエルフ、そしてそれによく似た耳がそこにある。
エルフなどこの中世日本のような異世界には存在していないようだが、何と言ってもそそられる。
でもどうしてもアメの耳は他の人間と違ってとんがっているんだろうか。カントのサムライたちは俺と同じ謂わゆる普通の耳だった。
何か血統に関係があるんだろうか。
いや今はそんなことよりこの状況だ。
薄い麻の生地の服を着て、うぉ! 足が太ももが出ている!
これは緊急事態だ!
あんなにズバズバ言ってくるこいつがこんなにエロく感じるんだ。
さっきまであんなふうに神妙な趣きで話していたのに俺は何を考えているんだ!
「むにゃむにゃ」
むにゃむにゃって言った!
寝言でむにゃむにゃ言うやついんのかよ!
可愛いぃ、いやいや、いかん! 落ち着け俺、こいつはさっきも外で俺の弱音をからかわずに聞いてくれた。
そんな相手に何で今こんな感情を!
俺は声を殺しながら竹で編んである枕に頭をぶつけ続けた。
どうにか横になることはできたが、どうしても意識してしまう。横にいるこいつは刺激が強すぎる。そうだ俺は思春期だったんだ、こんなの耐えられるはずがない。
ましてや俺はディー、、ティー、、
うおぉぉぉ! これがディの呪いなのかー!
「まだ起きてんの?」
やべっ、びっくりするほど俺は寝たフリに成功した。
「あー、まだ完全には寝てないよ」
「今暴れてなかった?」
「は? 何で暴れんだよ。寝ぼけてんのか。」
「そっか」
セーフっ! ギリセーフ!
「まだ寝ないの?」
「寝るよ」「私ももう寝たい」
なんか良い匂いがする気がする。
落ち着け俺、お前は冷静になる必要がある。
戦さのことでも考えろ。ふー、まずは呼吸を整えていこう。
「あのさ、、、彼氏とかいないの?」
何聞いてんだ俺は!!
「かれし? なにそれ?」
「あー、えっと、好きな人とか」
「え、何急に、あんたが知ってどうすんのよ」
「い、いや、別にただ訊いただけだって! 別に答えなくていいし、そんなに興味はないってゆーか、、」
何自分から質問しといて強がってるんだよ!
ダセェ、ダサすぎるぞ俺!
「、、、いない」
「そっか、、」
何だよこれ! いないのかよ! てか、気まずくなってるじゃん、どーすんのまじで!
「あんたはいるの、その、、そーゆー人」
えーー! 質問返し来たー! 何これ、そういうことなのか! いや、質問したから同じように返されただけだろ。
調子に乗るな丹波滝よ。
「いるわけないだろ、まだこっちに来て日も経ってないのに」
「そっか、それもそうよね。前の世界にはいたの?」
うおー! なんかグイグイ来ていなか? ここは正直に答えるべきなのか、それともいないと嘘をつくべきなのか。
なんか良い雰囲気なのか、もしかして良い感じなのか!
「別に」
はい、出たっ! 中二か! 別にってなんだよ、クソきもいわ。なんて返し方だよ!
「ふーん、、、。」
なんか良い雰囲気なのか、もしかして良い感じなのか!
いやいや騙されるな、客観的に見ればただの何でもない会話だ。空気飲まれるな。
数分間の沈黙ののち、アメの寝息が聞こえて来た。
疲れていたんだろうか、意外と早く寝たな。
俺も馬鹿なことは考えずに寝よう。
、、、でも、ちょっと手が身体に当たるぐらいはいいんじゃないか。これぐらいバチは当たらないだろう。ちょっとだけなら、、
おいおい、俺の右手そんなに歩いて行くんじゃない、こらこらダメだろう
この時の滝の顔はとてつもなく下品で卑猥な顔をしていたのだった。
手がアメの身体に触れた。
手の甲だが、柔らかさがわかる。
これが女の子の感触なのか。
今俺はスーパーキモいかもしれないが、それでもこれは間違っていないと俺は信じている。
ん? これはお尻か! いきなり俺はケツを触ったのか! すごいな俺!
一方でアメはまだ寝てはいなかったのだった。
何なのこれ、あいつ寝たの?
当たってるあいつの手が当たってる私のお尻に。
結構あったかいかも、なんか恥ずかしい。
どうしよう、払い除けるのは気まずいしどうしたらいいの。
そもそも男と一緒寝てるじゃん!
今までこんな距離で寝たことないよ!
鼻息聞こえるし、変に緊張してきて寝れないじゃん
どうしよう!
「タンバ様」
突然窓からアカデが入って来た。
「アカデ!?どこから」
「え、アカデ!? 何いきなり!」
あっ、起きてたの?
お互いに驚きと恥じらいがあるがそこは何も触れないとそれぞれが密かに違うのだった。
「すみません、その、お二人でいると、聞いたものですので、その、、」
「二人? アメのこと?」
「はい、だからその、ちょっと気になってと言いますか、遊びに来たといいますか、、」
「遊びってなー、今夜中だぞ」
「ちょっと寒いのでそちらに行っても構いませんか?」
「え、うんいいけど」
「ありがとうございます。あったかいです。」
って、俺の隣かよ! 案の定の人型のアカデが俺の布団に潜り込んでくる。
普通アメの隣だろ! これじゃ俺真ん中になるじゃねぇか
恐る恐るアメの方を見る。
「狭いならもっとこっち寄れば?」
何言ってんのよあたし!
「ああ、悪いな」
おお、予期せぬ好展開!
にしても余計に寝れない。どうしたらいい。
アメとアカデに挟まれて、ってえー、アカデのやつ俺の腕に抱きついて来てないか。
今は人間の女の姿だ。胸が腕に当たってるし!
それに頭に隠しきれていないもふもふの狸耳。
しかも美少女に変化してるだけあって可愛い。
あり。
ありじゃねぇよ!!
くそ、こいつら両方とも可愛いな。異世界って魔法がなくてもやっぱり良いところなのか。
どうしたらいいんだ。
「なぁ、アカデさんちょっと近づき過ぎじゃないかな?」
「そ、それは、、寒いんです。こうしておけば少しは暖かくなって。」
「部屋もそんなに寒くないと思うけどな」
「いいえ、ここが一番暖かいです。」
何でこいつこんなに懐っこいんだ。狸の習性か?
はっ、まさかこいつ俺のことが!
いや勘違いするなとにかく落ち着くことだけ考えて、
「私ってスタイルいいんですよ」
急に耳元でアカデが囁く。
僅かな吐息が耳をくすぐる。
「そ、それは化けてくるからだろ。」
余談だが耳が敏感なことに俺は自分で初めて知った。
「化けてても私は私です! 人間化けるのは個性が出るんですよ。だから私の人間の姿がこれってことなんです。
もう私はこの姿が本当の姿なんですぅ!」
「なんでだよ。てか、化けてるとその分妖気使うんじゃないのか?」
「そんなの気にしませんよ人型への変化なんて微々たる妖気ですから」
もう一度耳元で囁く吐息攻撃、俺の耳はもう瀕死だ。
「だ、だからなんでだよ。」
そうして俺は寝れないまま朝を迎えた。
こいつらは意外にもあの後すぐ寝た。疲れていたんだろう。
俺は疲れよりも思春期が勝ったらしい、、。




