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和の国異世界御伽噺〜妖気漂う異世界ファンタジー戦記〜  作者: 臣 治
第一章 伝説の始まり
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第十六噺 夜 under the starry sky

寝れない。

昨日の興奮の余韻がまだ抜けない。

俺が、あの俺があんな恐ろしい化け物を斬ったのか。

しかも初めて手にしたこの刀で。目を閉じるととあのウサギの妖怪と死闘が鮮明に蘇る。

嘘みたいな話だが事実だ。

今は河童達や狸達とこの訳のわからない世界で暮らしているここが俺の現実だ。


そして、1番寝れない原因がある。

隣でアメが寝てるんですけど!

長いまつ毛と潤った紅い唇、くそっ俺としたことがこんな隣で女の子が寝ているだけで動揺してしまうのか!

よし、ここは男だ丹波滝、ここは、ここぞとばかりは、、

いや風に当たって頭を冷やそう。冷静になろ、、


もうとっくに宴会も終わってるな、そっかここは地下だったな。広すぎて一瞬わからなくなるな。

地上に出て星でも見るか。


ーーーーー

「おーーー」

すごい綺麗な星だ。

こんな綺麗な星空生まれて初めて見たかもしれない。


「寝れないの?」

「うわぁ、びっくりした!」

「ごめん、ごめん」

アメも寝付けなかったのか、俺の後を追ってきたみたいだ。

気にしても心臓が飛び出るかと思ったほど驚いた。

もしかしてこいつも起きてたのか? 心の声漏れたりしてなかっただろうな!?

油断していた、星空を眺めて完全に自分の世界に浸っていた。


「ちょっと寝付けなくて」

アメとはあれから、逃げた時に怒られてからまともに会話していない。

少し変な空気だ。妙に緊張する。

「まだ自分の力に混乱してるの」

「それもあるけど、、、

こっちに来てこんなに星が綺麗なのことに今日初めて気づいて、ついつい眺めてたらなんだか、、、」

「こっちって、あんたのいた世界は星はないの?」

「あるよ。でもこんなに綺麗には見えない。

澱んでいて、霞んいて、、こんなに綺麗に輝いて見えないんだ。」

「ふーん、そうなんだ。でも、よかった。こっちの星はちゃんと輝いて見えるんだ。」

アメは微笑みながら俺の見ている星空を眺める。

何だ、あのことは触れないのか、それはそれで有難いけどちょー気まずいんですけど。


「あの時はひどいこと言ってごめんなさい、、」

謝ってきた、のか、、?

アメは星空を観ながら俺に話しかける。

「いや、言われても仕方ないってゆーか見捨てて逃げたのは事実だし」

そうだ、謝れる筋合いはない。俺は逃げた。死ぬのが怖くて皆んなを見捨てて逃げた。

こんな俺がみんなに感謝されちゃいけない。

本当に情けない感情で押しつぶされてしまいそうだ。

いっそのことこのまま押しつぶして欲しいくらいだ。


「でも、戻ってきたじゃない、、それに最後はあんたがあいつを斬った。あんたがいなかったらみんな、、、」

「やめてくれ。俺はたまたまできただけだ。

何がどうなってるのかあの時のことはよくわからない。それに俺はクズだ。」

「、、、自分を褒めてあげてもいいんじゃない?」

「え、」

アメが夜風に揺れる耳にかかった髪を掻き上げながら、照れくさそうに夜空を見上げている。

自分を褒めるか、、、

良いのかな、自分を認めても。


「ここも戦さになるのね」

「らしいな。」

「サンズって人もみんな戦うんだ、、無事に守れたらいいねこの里も皆んなも」

「そうだな。俺は何もできないけど、みんなが戦って勝てたら俺も嬉しい気がする。あいつらには世話になってるからさ。」

「そうね、みんなが戦ってくれる。私たちは何もしなくても良いのかな、、」

そう言われると俺も揺らぐじゃないか。

でも戦さなんてできる訳ないだろ。

生温い風が頬を当たる。


「俺、初めて剣を使ったんだ。

軽そうに見えて、すごく重かった。

返り血も生臭くて、少し温かくてきもち悪いし」


「そうなんだね。初めてが勝ちでよかったじゃん。」

馬鹿にされるかと思ったが予想していない返しに言葉が出ない。

「、、、どうしたの?」

「なんでもない、、」

アメはこちらを見ようとはしなかった。

ただ隣に座って星空を眺めている。


「怖かったんだ、恥ずかしいけど俺、めちゃくちゃ怖くて、あんなに血を吐いたのも体が痛くなったのも初めてでもう死ぬと思った。

もう嫌だ、あんな怖いのは死ぬのは」

この月明かりの星空のせいか、恥ずかしいけど本音が出た。

「でもあんたがあそこで逃げたままだったらみんな死んでたかもしれない。結果みんながそんな思いをせずにいられた。

よかったじゃん」

「、、、、」


「私も初めてこの力使わされた時は怖かった。」

特別な力があなたにはあるって言われて、自分が気持ち悪くて。あっ、ほらこの前アカデが熊になってた時に使った力。」

初めてアメがこちらを向いてきた。

やはりあれは妖気かなにかの力だったのか。


「戦さにでろって言われたらどうするの?」

1番考えたくない話題を振られた。

人を斬るなんてできない。ましてや自分が呆気なく無惨に、無慈悲に、簡単に斬られてしまうかもしれない。


「俺の元いた世界は殺し合いなんてほとんどない。

死ぬかもしれないって思うことなんてほとんどない。

、、、でも、父さんが死んだ。」

「なんで?」

「殺されたんだ。」

「、、、、」

「俺の父さんは警察、あっ悪人を捕まえる仕事をしてたんだ。そしてその日も悪人を捕まえようとして、そいつを捕まえてようとして逆に殺された。あっけなかったなぁ」

「、、、、」

アメは黙って話を聞いている。

俺は幼い子供のように膝を丸めて座り小さくなって話をした。

「こんな立派な刀じゃなくて、小さいナイフで

あ、ナイフってこんな大きさの刀みたいなやつな

でもそんなもので簡単に人は死ぬ。

昨日まで笑ってたのに、次に会った時はまるで作り物みたいに固くて冷たくて、、、

いつか俺も死ぬ、あんな簡単に死んで人形みたいになるのかもって怖くて。

死にたくない、、けど皆んないつかは死ぬってわかってる。だからどうせ死ぬなら、無駄死にはしたくない

それにあっけなく死にたくないっ!」


俺は何を唐突にこんな話をしてるんだ。

こんなに惨めで情けない話を。

父親の死を受け入れず怖がっているこんな情けない話を。


「あんたのお父さんもそう思って死んだのかもね。

怖かったでしょうね」

「え?」

今まで考えたこともなかった発言に思わず驚く。

「お父さんは家族を置いて、しかも1人死んでいった。

でも戦って死んだ。怖かったでしょうね。私なら怖いし悔しい。でも悪人から皆を、いえ、家族を守ろうとして戦った。」


父さんは何を思って犯人を追い詰めてやり合って殺されたのか、俺にはわからない。でもアメの言う通り父さんも怖かったのかもな、、。


「私も力使いたくないし、今の自分が嫌いなの。

だからこうしてここにいる。逃げてきたのそんなことが嫌になって。」

「そうだったんだ。俺も逃げるって気持ちは痛いほどわかるよ。」

「でもね、」

アメは立ち上がった。月明かりがアメを照らし出す。

「どんなに逃げても、自分からは逃げられないんだよね」

照らされたアメの顔は穏やかで悟っているようなそしてどこか悲しそうな顔だった。


「よし、じゃあ私はそろそろ寝るね!」

「あ、ああ」

「あっ、寝込みを襲うとかやめてよね。自暴自棄になったからって。」

「お、襲うかよっ。」

「じゃ、おやすみ」

「あ、あのさ、、ありがとう」

俺はアメに小さく丸まった情けない背中を向けたままなぜか感謝が溢れた。

アメはくすっと笑ったと思う。


もう少し星をみたら俺も寝よう。

俺は大きく手足を広げ大の字になって寝転んだ。

流れ星が一瞬の綺麗に燃えて消えていく。一瞬の輝きを放ちながら。

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