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航空主兵の連合艦隊  作者: 蒼 飛雲
ミッドウェー海戦

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第68話 奮龍

 少佐から中佐に昇任すると同時に攻撃隊総指揮官の任についた「大和」飛行隊長の花隈中佐は四群発見された敵機動部隊のうち、空母五隻のグループに対する攻撃を第一艦隊に割り当てた。

 それぞれ四隻の空母を擁する残りの三群については、北から順に第二艦隊と第三艦隊、それに第四艦隊が攻撃するよう指示している。

 その花隈中佐が指揮する第二次攻撃隊に対し、米機動部隊は第一次攻撃隊との戦いで生き残った一〇〇機あまりのF6Fヘルキャット戦闘機を差し向けてきた。

 しかし、一九二機におよぶ烈風がそれらを完封、流星の被害をゼロに抑え護衛の仕事を完璧にこなした。

 一方、四三二機の流星は各艦隊ごとにそれぞれ一〇八機の集団となって米機動部隊に向けて散開していく。

 第二艦隊と第三艦隊、それに第四艦隊の指揮はそれぞれ各艦隊の最先任飛行隊長に委ね、花隈中佐は直率する第一艦隊に指示を飛ばす。


 「攻撃手順について再度達する。『天城』隊と『葛城』隊、それに『武蔵』隊と『比叡』隊は小隊ごとに輪形陣の外郭を固める巡洋艦ならびに駆逐艦を攻撃せよ。それが終わり次第『大和』隊が空母を叩く。

 なお、攻撃は『比叡』隊の次に『天城』隊、さらに『葛城』隊、『武蔵』隊の順とする。目標の選定は各小隊長に委ねるが、攻撃が重複しないよう留意せよ」


 花隈中佐の命令一下、「比叡」隊の一二機の流星が小隊ごとに分離、それぞれ目標と定めた敵艦にその機首を向ける。

 輪形陣まではまだかなりの距離があるのにもかかわらず、しかし四機ずつに分かれた「比叡」隊の流星の腹から爆弾でも魚雷でもない異形が切り離され、それらは煙の尾を引きつつまるで目があるかのように米艦に向かって突進していく。


 帝国海軍名称「奮龍一型」。

 ドイツのHs293をベースに帝国海軍が流星でも運用出来るように改造された動力付き誘導爆弾だ。

 オリジナルのHs293に欠けていた貫徹力を付与し、さらに射程延伸のために燃料を増載、このことで二〇〇キロ近く重くなったものの、それでも総重量は一〇〇〇キロ以下に抑えられ、さらに流星の腹の下に搭載出来るようにその形状にも若干の変更が加えられている。


 実を言えば奮龍のような兵器は一斉発射による飽和攻撃が理想だ。

 対空砲火が分散されるし、敵に与えるリアクションタイムも最小限で済む。

 だが、奮龍は無線誘導ゆえに周波数チャンネルの制約を受けた。

 同時だとオリジナルのHs293と同様に一八チャンネルが限界だ。

 逆に言えば一八発まで同時発射が可能なのだが、冗長性を持たせるために一度に攻撃するのは一個中隊一二機までの運用とされている。


 輪形陣には四隻の巡洋艦と一六隻の駆逐艦の姿があったが、「比叡」隊の三個小隊が狙ったのは、そのいずれもが巡洋艦だった。

 あるいは、大物狙いは艦攻乗りの本能なのかもしれない。


 発射された一二発の奮龍のうち、推進機構あるいは無線の送受信装置に問題が生じたのか二発が脱落し、同じく二発が敵巡洋艦の対空砲火によって撃ち墜とされる。

 飛行機より遥かに高速で的の小さい奮龍を撃破するのだから、米巡洋艦が備える対空能力は極めて高いものがある。

 だがしかし、それが米巡洋艦の限界でもあった。

 残る八発の奮龍のうち一本が的を外してしまうが、残る七発は三隻の米巡洋艦に次々に吸い込まれていく。

 少ない艦で二発、多い艦で三発が命中する。

 緩降下爆撃や雷撃ではなかなか望み得ない高い命中率だ。


 一〇〇〇キロ近い弾体の中に三〇〇キロの炸薬が詰め込まれた奮龍を、しかも複数食らっては装甲の薄い巡洋艦はたまったものではない。

 三隻の米巡洋艦は猛煙を噴き上げ、そのいずれもが大きく速度を落とす。

 「天城」隊と「葛城」隊、それに「武蔵」隊もまた「比叡」隊に続く。

 それらもまた、米巡洋艦や米駆逐艦に対して奮龍を撃ち込み、少ない艦で二発、中には全弾命中した艦もあった。

 二〇隻の護衛艦艇に対して二一個小隊が攻撃にあたったものだから、攻撃順が最後になった「武蔵」第二中隊第三小隊はすでに気息奄々状態だった米巡洋艦に奮龍を撃ち込みこれを撃沈してしまった。

 「比叡」隊と「天城」隊、それに「葛城」隊と「武蔵」隊が攻撃を終えた時点ですでに輪形陣は崩壊しており、二〇隻あった巡洋艦と駆逐艦はそのすべてが撃破され、駆逐艦の中には早くも沈み始めているものもあった。


 「『大和』第二中隊は小隊ごとに小型空母を狙え。間違っても大型空母には手を出すな。第一中隊は俺とともに今しばらく攻撃を待て」


 花隈中佐の命令で、それまでお預けを食らっていた「大和」第二中隊が解き放たれた猟犬のごとく米空母に向かっていく。

 すでに巡洋艦や駆逐艦といった番犬は始末しているから、言ってみれば空母は丸裸の状態だ。

 狙われた三隻の小型空母はありったけの対空火器を動員して奮龍を撃墜しようと躍起になる。

 本来であれば、母機である流星を撃墜すれば奮龍はコントロールを失って無力化されるのだが、咄嗟のことでそのことに頭が回らない。

 奮龍に向けて放たれた機関砲弾や機銃弾は、トラブルを起こさずに向かってきた一〇発のうちの三発の撃墜に成功する。

 しかし、残る七発は次々に小型空母に吸い込まれていく。

 難を逃れた小型空母は一隻も無かった。


 敵の被害状況を見てとった花隈中佐は直率する第一中隊の部下に対し、各小隊ごとに小型空母を目標とすることを指示する。

 複数の奮龍を食らって満身創痍の小型空母にさらなる追撃の奮龍が突き込まれていく。

 建造途中の巡洋艦を空母にでっち上げた防御力の低い小型空母はそのいずれもが洋上の松明と化した。

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