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航空主兵の連合艦隊  作者: 蒼 飛雲
ミッドウェー海戦

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第61話 第五艦隊

 「日本艦隊の目標はミッドウェー島。そして、その目的は同島を占領してそこを新型四発重爆の根城とし、オアフ島攻撃の際の策源地とすることか」


 ハワイの情報部から上がってきた報告に、太平洋艦隊司令長官のニミッツ大将は相も変わらずオーソドックスな戦術をとってくる日本軍のやりように思わず苦笑を漏らす。

 日本軍の、特に日本海軍の戦い方は堅実そのものだ。

 まず、大量の戦闘機でもって制空権を獲得、しかる後に戦爆連合が艦艇や地上施設に大打撃を与え、反撃能力を奪ったうえで水上打撃艦艇がこれにとどめを刺す。

 一六隻の空母と一〇〇〇機を超える艦上機の物量攻勢に対し、常に数的劣勢を強いられてきた連合国軍は無残な敗北を積み重ねてしまった。


 そして、英国を打倒する原動力ともなった第一機動艦隊に対する恐怖は合衆国海軍将兵はもちろん、米国民の間にも広く伝播している。

 欧州遠征の実績をもつ一機艦が、今度はアラスカやシアトル、あるいは下手をすればサンフランシスコやロサンゼルスに猛襲をかけてくるのではないか。

 そのような噂が将兵や西海岸の住民の間でまことしやかに流れていたが、さすがにそれは無かった。


 「英国が脱落、そしてソ連が死に体の今、なぜ合衆国だけが戦争を継続しなければならないのかという国民の声は日増しに大きくなっている。

 もし、太平洋艦隊が敗れ、そしてミッドウェー島が占領され、さらにオアフ島が三度目の業火に沈めば、いかにルーズベルト大統領が継戦を訴えようとも国民はそれに耳を貸すことはないだろう」


 ニミッツ長官が考えることに対し、ルーズベルト大統領もまたその意を同じくするところなのだろう。

 近代海戦の要となる正規空母と高速軽空母については、そのすべてが太平洋艦隊に配備されている。

 逆に言えば、使える空母はすべて与えるから絶対に負けるなということだ。


 一方で新型戦艦はただの一隻も配備されていない。

 「アイオワ」級の「アイオワ」と「ニュージャージー」、それに「サウスダコタ」級最後の生き残りの「アラバマ」はそのいずれもが大西洋艦隊にその籍を置いている。

 ドイツとイタリアは「ティルピッツ」や「ヴィットリオ・ヴェネト」級、それに英国から接収した「キングジョージV」級といった新型戦艦を保有している。

 これらが米本土を直接攻撃することは考えられないものの、しかし北米と南米をつなぐ航路で交通破壊戦を仕掛けてこないとも限らない。

 「アイオワ」と「ニュージャージー」、それに「アラバマ」はそれらへの対抗戦力として大西洋に拘置しておかざるを得なかった。

 また、一〇隻ある旧式戦艦は日本やドイツの本土侵攻を恐れる国民を安心させるために本国近海で活動を続けているが、実際のところは若年兵や新兵を育てるための練習艦のような有り様であり、とても戦力にカウントできるような状態ではなかった。


 しかし、もはや海戦は戦艦から空母へとその主役が代わったことがはっきりしている。

 ウェーク島沖海戦で一度に六隻の空母と五隻の戦艦を日本の艦上機によって沈められた時点で合衆国海軍は水上打撃艦艇よりも空母の建造こそを最優先にすると決意した。

 そのことで、「アイオワ」級戦艦は六隻建造するところを四隻に、「アラスカ」級大型巡洋艦は同じく六隻建造するところをこちらは二隻にその数を減じている。

 また、「ボルチモア」級重巡洋艦は大幅に建造計画が縮小され、六万トン級戦艦に至っては計画そのものが白紙撤回されてしまった。

 そして、そこで捻出された資材や人材はそのすべてが空母の増勢に回された。

 建造にあたっては破格の賃金で工員をかき集め、二交代かあるいは造船所によっては三交代の昼夜を分かたぬ作業によって空母の工事期間短縮に邁進した。

 だからこそ、戦争が始まって二年しか経っていないのにもかかわらず、すでに大小二〇隻もの空母を建造し、そのうち慣熟訓練を終えた一七隻を此度の戦に投入することがかなったのだ。


 「一七隻の空母を準備出来たのは重畳だが、しかしそれでも艦上機の数は一機艦と同数かあるいはわずかに上回る程度だろう。そして、戦力が互角の機動部隊同士の戦いは差し違えだ。もし、仮に太平洋艦隊が勝利を収めたとしても空母の半数は失うだろう。

 だが、現状においてはそれで十分だ。仮に日本艦隊がこちらのすべての『エセックス』級空母を撃沈したとしてもそれは全体の二五パーセントにしか過ぎん。同空母はすでに三二隻が発注されているのだからな」


 太平洋艦隊は一機艦相手に必ずしも勝つ必要は無い。

 引き分けあるいは相打ちにさえ持ち込めば十分だ。

 そうすれば、日本軍はミッドウェー島を占領維持することは出来ない。

 そして、それはオアフ島の安全を意味する。

 後は再び「エセックス」級空母の数が十分に揃うのを待って反撃に転じればいい。

 その頃には日本海軍の空母戦力も弱体化しているはずだから、負ける心配は皆無だ。


 「だが、それもこの戦いをうまくしのいでこその話だ」


 ニミッツ長官は太平洋艦隊司令部の壁に貼られた編成表に目をやる。

 そこには一機艦に立ち向かう復讐の艨艟たちの名前が記されていた。



 第五艦隊

 第一群

 正規空母「エセックス」「ヨークタウン2」

 軽空母「インデペンデンス」「プリンストン」「ベロー・ウッド」

 軽巡四、駆逐艦一六


 第二群

 正規空母「エンタープライズ2」「ホーネット2」

 軽空母「カウペンス」「モンテレー」

 軽巡四、駆逐艦一六


 第三群

 正規空母「レキシントン2」「サラトガ2」

 軽空母「ラングレー」「カボット」

 軽巡四、駆逐艦一六


 第四群

 正規空母「ワスプ2」「レンジャー2」

 軽空母「バターン」「サン・ジャシント」

 軽巡四、駆逐艦一六

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