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航空主兵の連合艦隊  作者: 蒼 飛雲
第二次オアフ島攻撃

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第58話 挟撃

 作戦二日目、各空母から発進した一個中隊、合わせて一九二機の紫電改からなる第一次攻撃隊はオアフ島の各地に点在する飛行場を空爆した。

 土木車両をはじめ大量の機械力を惜しみなく投入する米軍の復旧力は想像を絶するものがある。

 だが、それでもやはり限界はあるようで、飛行機の離発着が可能になるまでには回復していなかった。

 それでも、やはり念には念を入れるべきであり、第一次攻撃隊の紫電改は四〇〇発近い二五番を滑走路や生き残った付帯施設に叩き込み、容赦なく追撃を加えていった。


 第二次攻撃隊もまた第一次攻撃隊と同様に一九二機の紫電改から成り、こちらは発電所や変電所、それに浄水場や橋梁といった社会インフラを攻撃した。

 これら施設は前回の反省から巧みに偽装されていたものの、しかし英本土決戦における地上攻撃で経験を積み重ねてきた第一機動艦隊の熟練搭乗員たちの目を欺くには至らず、そのほとんどが爆砕されてしまった。


 午後には二五〇機あまりの紫電改ならびに一式艦攻の戦爆連合が真珠湾を攻撃。

 同湾にあったはずの潜水母艦や工作艦、それに給油艦といった支援艦艇は一機艦が来るまでに逃げ出したらしく、一隻たりともその姿を見ることはなかった。

 しかし、浮きドックのほうはさすがに避退が間に合わなかったのだろう、真珠湾の奥にその姿を露にしている。

 他に目ぼしい目標も無いことからそれら浮きドックは一式艦攻の格好の目標とされる。

 一式艦攻に狙われた浮きドックは散々に爆弾を叩き込まれ、元が何だったのか分からなくなるくらいに破壊されてしまった。

 その頃には一式艦攻に同道していた紫電改も港湾施設のそこかしこに爆弾を浴びせ、真珠湾の復旧をより困難なものへとさらなるダメ押しを加えている。


 艦上機隊が仕事をしている間、水上艦艇も遊んでいるわけではなかった。

 機動部隊の駆逐艦は一式艦攻と協力して米潜水艦を追い立て、水上打撃部隊の駆逐艦は補給部隊に随伴してきた掃海艇とともに掃海作業を実施して艦砲射撃のお膳立てを整えている。


 そして、真打登場とばかりに「長門」と「陸奥」がオアフ島各地にある米軍の重要施設に向けて四一センチ砲弾を叩き込む。

 また、二隻の戦艦が手の回らない個所には「妙高」と「羽黒」、それに「足柄」と「那智」の四隻の重巡が二〇センチ砲弾を撃ち込んでいく。

 一〇〇〇発の一〇〇〇キロ弾と二〇〇〇発を超える一二〇キロ弾を盛大に浴びたオアフ島は二度目の煉獄行きを余儀なくされる。

 さらに前回と同様、敷設艦がさらに進化した各種機雷をオアフ島周辺海域に散布、その復旧に対して盛大なる嫌がらせを仕掛けていった。


 合衆国海軍の意識がオアフ島ならびに西海岸に向けられている隙を突き、ドイツとイタリアの連合潜水艦部隊は米東海岸全域で大規模な海上交通破壊戦を実施する。

 これに対し、ウェーク島沖海戦やオアフ島沖海戦、それに北大西洋海戦での相次ぐ敗北で大量の駆逐艦とその乗組員を失った米海軍は有効なカードが切れない。

 「フレッチャー」級駆逐艦をはじめとした対潜艦艇こそそれなりの数を擁してはいたが、しかしそこに乗り組む将兵らはいまだ錬成途上の中途半端な術力しか持ち合わせていなかった。

 そこを英国との激戦を生き抜いてきた歴戦のUボート乗りたちは徹底的に突く。

 駆逐艦と潜水艦の戦いはそれこそ相手に対する化かし合いだが、経験不足の米艦側はその勝負にことごとく敗北し、そのことで艦艇と将兵の大量喪失の憂き目にあっていた。

 それと、実際のところドイツ海軍上層部は米商船の撃沈よりも米駆逐艦の撃沈こそを奨励していた。

 いくら沈めてもキリが無い商船を狙うよりも、牧羊犬が未熟なうちに始末しておいたほうが後々楽になるという計算だ。

 ドイツもまた、米軍のボトルネックが物よりも人にあることを看破していたのだった。


 東で船乗りの大量喪失、西で飛行機乗りの大量喪失というダメージは米軍に強烈なボディーブローとなった。

 そのことで、側背の安全を確信したドイツ軍は遅い春の来訪と同時にソ連に対して大攻勢をかける。

 ソ連軍にとって誤算だったのは、ドイツ空軍が従来の戦術空軍からごく短期間の間に戦略空軍へと変貌を遂げていたことだ。

 ドイツ人パイロットが英国製の四発爆撃機を駆って自分たちを空爆するという悪夢のような状況にソ連兵は右往左往するばかりだった。

 それと、ここ一年の間、米国や英国からの支援をまったく受けることが出来ずにいたソ連軍と、英国から潤沢な戦争資源を半ば収奪に近い形で獲得していたドイツ軍とではその戦力、中でも質の差が大きく開いていた。


 さらにもうひとつ、情報に対するそれもまた従来のドイツ軍とは一味も二味も違っていた。

 英国との講和の過程で、自分たちが完璧だと思い込んでいたエニグマ暗号が英軍に筒抜けになっていたことに驚愕したドイツ軍情報部はそれこそ恐慌に近い状態となった。

 だが、その問題点を克服し、今では情報に対する意識やその取り扱いは従来のそれとは大きく異なる。

 担当者らは事前の情報収集に万全を尽くし、ソ連軍の戦力配備や部隊配置を入念にかつ貪欲に調べ上げていった。


 そして、それら情報は戦略爆撃群や地上部隊にフィードバックされる。

 ドイツ空軍重爆部隊が投じる爆弾は正確にソ連軍の頭上に降り注ぎ、ドイツ陸軍もまた奇襲を受けることなく最低限の犠牲で進撃を続ける。

 防戦一方のソ連軍は輸送車両の不足から迅速な後退が出来ず、包囲殲滅される部隊が相次ぐ。

 それらが積み重なり、ソ連軍というよりもソ連という国家の退潮が明らかになるにしたがって同国に呑み込まれていた小国が反旗を翻す。

 もちろん、その裏にはドイツによる工作があったが、そのこともまたソ連という国家あるいは共産党組織を急速に瓦解させていく大きな要因の一つになったことは間違いない。

 そして、負けが続けば指導者の求心力もまた低下する。

 独裁国家の独裁者の弱体化は新たな権力闘争の勃発を意味した。

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