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航空主兵の連合艦隊  作者: 蒼 飛雲
欧州遠征

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第47話 戦闘機掃討

 「鷹一番より第一次攻撃隊へ、敵迎撃戦闘機隊を発見。二〇〇乃至二五〇機程度。高度はこちらよりも上だ。急ぎ上昇に転じよ」


 鷹一番の符丁を与えれらた第一次攻撃隊指揮官が座乗する先行偵察機。

 その指揮官の指示に従い、第一次攻撃隊最先任の「大和」戦闘機隊長の元町少佐は各機に高度を上げるよう命じる。

 第一次攻撃隊は「大和」型空母からそれぞれ二個中隊二四機、それ以外の空母から一個中隊一二機の合わせて二四〇機の零戦からなる。


 索敵機の報告によれば、英米連合艦隊は三つのグループから成り、空母は合わせて五隻が確認されていた。

 そのうちの一隻は搭載機数の多い「ヨークタウン」級、つまりはその最後の生き残りである「ホーネット」であることが分かっている。

 さらに二隻は「イラストリアス」級空母、残る二隻は艦型不詳なものの艦隊と同道していることから「フューリアス」ならびに「イーグル」だと第一機動艦隊司令部は判断していた。


 そうなってくると、すべての空母がその艦上機のほとんどを戦闘機で固めていた場合、最低でも二〇〇機、多ければ二五〇機程度になる。

 そして、敵の艦隊構成を見れば、まず間違いなくオール・ファイター・キャリアーとして運用しているはずだ。

 なにせ、戦艦や巡洋艦においては英米側のほうが圧倒的に優勢なのだから、爆撃機や雷撃機に頼らなくても砲雷撃戦にさえ持ち込めば容易に日本艦隊を撃滅出来る。

 それに、英米艦隊は日本艦隊を撃滅出来ずとも追い払いさえすればそれで事足りるのだ。


 一方、日本側からすればふつうに戦爆連合を出せば二〇〇機を超えるこれら戦闘機によって大損害を被ることは必至だ。

 いくら零戦が強い機体で搭乗員が熟練でも、これだけ敵戦闘機の数が多ければ撃ち漏らしは必ず出る。

 そこで、一機艦司令部は第一次攻撃隊についてはそのすべての機体を戦闘機のみで出撃させることを決断する。

 帝国海軍で言うところの戦闘機掃討、欧米ではファイタースイープと呼ばれているそれだ。

 眼前の空から二〇〇を超えるゴマ粒が染み出してくるのと同時に、元町少佐は一機艦司令部の判断が適切だったことを確信する。

 すかさず攻撃命令を下す。


 「目標選定は各中隊長に一任する。全機突撃せよ!」


 元町少佐の命令を受領した瞬間、第一次攻撃隊がその大編隊を解き、各中隊ごとに散開する。


 「『葛城』隊、俺に続け!」


 叫ぶように命令し、三里大尉は一一機の部下を引き連れ同高度正面の敵へ機首を向ける。

 ゴマ粒が飛行機の形を整えてくるにつれ、三里大尉は違和感を抱く。

 敵の機首はこちらと同様に太い。

 つまりは空冷発動機だ。

 てっきりシーファイアかシーハリケーンと戦うものだとばかり思い込んでいた三里大尉は、しかし咄嗟に機体を横滑りさせる。

 洋上における空冷発動機の敵戦闘機は、つまりは剣吞極まりない高性能機銃を持つ機体のはず。

 三里大尉の直感的中、直前まで機体があった空間を六条の火箭が貫いていく。


 「敵はF4Fワイルドキャットだ。『ホーネット』の機体か!」


 三里大尉の見立ては半分だけ当たっていた。

 自分たちに立ち向かってきた戦闘機はまごうことなきF4Fだったが、しかし母艦のほうは「ホーネット」ではなく「ビクトリアス」、つまりは英搭乗員だったのだ。


 F4Fであれば零戦の敵ではない。

 三里大尉は機体を旋回させF4Fの後方に食らいつく、はずだった。

 だがしかし、狙いをつけたF4Fもまたすでに旋回を終えておりバックを取るには至らない。

 F4Fが零戦と互角の旋回性能を発揮している。

 つまりは相手の搭乗員は手練れ。

 しかも、並の技量ではない。


 「全機気をつけろ! 機体はたいしたことはないが、連中の腕は本物だ!

 気を抜くとあっという間にやられてしまうぞ!」


 今のところ、敵機に食われた部下はいないようだが、かといって相手を撃墜しているようにも見えない。

 自分たちの後を追っている第二次攻撃隊は間もなくこの空域にやってくるはずだ。

 それまでに敵戦闘機を排除してしまわないと、なんのための第一次攻撃隊か分からなくなる。

 三里大尉が焦燥を感じた次の瞬間、自分たちと対峙していたF4Fが上空から銃撃を食らい次々に火を噴いて大西洋の海へと吸い込まれていく。


 三里大尉は知らなかったが、二四〇機の零戦と干戈を交えていたのは五隻の英米空母から発進した二二八機のF4Fだった。

 このうち零戦のほうはそのすべての搭乗員が実戦経験を持つ熟練で固められている。

 一方、一五六機からなる英戦闘機隊もまた空軍の熟練を引き抜いて編成したエース格の部隊だった。

 しかし、七二機の「ホーネット」隊は錬成途上の部隊であり、しかも三六機だったはずの戦闘機定数を今回に関してはそれを倍増させていたから、その練度は日英の搭乗員のそれに比べて明らかに劣っていた。

 そして、それらと戦った零戦中隊はそれこそ鎧袖一触、短時間のうちに米搭乗員が駆るF4Fを平らげてしまった。

 そのことで英米側は戦闘が始まった当初こそ一対一に近い戦力比を維持していたが、「ホーネット」隊があっさりと撃滅されてしまったことでそれが二対三となる。

 拮抗していた日英戦闘機隊の戦いは、しかし米戦闘機隊を短時間のうちに葬った零戦の存在によってそれこそあっという間にその均衡が崩れる。


 その恩恵にあずかったうちのひとつが三里大尉率いる「葛城」隊だった。

 他隊のありがたい横槍によって数的優勢に転じた「葛城」隊はその後は有利に戦いを進める。

 戦闘機掃討という任務上、深追いはかなりの程度まで許容されている。

 勝勢に乗った零戦がF4Fを追い回しはじめる。

 速力に、何より数において劣勢を決定づけられたF4Fに零戦の魔手から逃れる術は無かった。

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