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航空主兵の連合艦隊  作者: 蒼 飛雲
航空主兵

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第10話 改造艦

 帝国海軍ではマル一計画やマル二計画、それにマル三計画で新造艦の充実を図る一方で既存艦の改造計画もまた並行して進めていた。

 まずその俎上に上ったのは保有する六隻の戦艦を空母へと改造することだった。

 もともと巡洋戦艦として建造された「金剛」型戦艦は老朽化した機関を最新のものに換装することで三〇ノットの高速が期待出来るから、そうなれば空母としても十分な速力を持つに至る。

 また、竣工時には当時の戦艦としては破格の二六・五ノットの韋駄天を誇った「長門」型戦艦も「金剛」型戦艦と同じ措置を講じれば二九ノットの速度発揮が可能と見込まれていた。


 だがしかし、この件に関しては他国の戦備に掣肘を加える意味でも四一センチ砲を搭載する「長門」と「陸奥」の両艦はこれを戦艦として留め置くべきだという声が航空主兵主義者からも上がる。

 日本が戦艦を保有しないのであれば、それに対抗する戦力が不要になるのだから、それはつまりは米国や英国といった仮想敵国の戦備の自由度を高める結果となってしまうというのがその理由だった。

 伏見宮元帥も国民の間で人気の高い両艦の空母改造はさすがにやりすぎだと思ったのか、「長門」と「陸奥」の二隻についてはこれを撤回し、機関を換装したうえで高速戦艦とするよう指示を改めている。


 それと、四隻の「金剛」型戦艦の空母改造にあたっては、むしろ新規に空母を建造したほうがコストパフォーマンスが良いのではないかといった冷静な意見もみられた。

 「金剛」型戦艦がいくら脚が速いとはいっても、しょせんは明治に設計、建造が開始された老朽艦だ。

 艦内設備も古いうえにさほど遠くない将来に耐用年数の限界を迎える。

 そのような賞味期限切れ間近の艦に多大な改造費を投入するのはいかがなものかという至極まっとうな意見だ。

 そして、おそらくそれは正論だろうと伏見宮元帥も理解している。

 しかし、なにより大艦巨砲主義から航空主兵主義への脱却を最優先に考えている伏見宮元帥にとって「金剛」型戦艦の空母への改造、つまりは戦艦を潰して鉄砲屋の勢力を減衰させることこそがその秘められた真の目的であり、このことで空母新造案は却下されている。


 その「金剛」型戦艦は改造によって全長二二〇メートル、幅三四メートルの飛行甲板と二段の格納庫を持ち五四機の航空機を運用できる有力な空母に生まれ変わるはずだった。

 また、「長門」と「陸奥」は機関の換装で出力が七割アップ、さらに推進抵抗を減らすための艦尾延長工事と相まって二九ノットの高速戦艦となり、このことで運用の柔軟性も格段に向上するものとして期待されている。


 主力艦と同様、補助艦についても改装は目白押しとなっている。

 重巡のほうは「古鷹」型ならびに「青葉」型については四基ある一二センチ単装高角砲をより新しい一二・七センチ連装高角砲にし、さらに多数の機銃を増備。

 一方で兵装過多によるトップヘビーを避けるために次発装填装置ならびに予備魚雷を撤去する。

 「妙高」型と「高雄」型はそれぞれ三番砲塔を撤去、その跡地に高角砲や機銃を増備し、両艦型ともに八九式一二・七センチ連装高角砲を六基装備するいわゆる防空巡洋艦とする。

 さらに「妙高」型ならびに「高雄」型といった俗に言う一万トン級巡洋艦はそのいずれもが魚雷装備を撤去、そのスペースを生かして増加が著しい対空火器要員の居住区画等にあてることにしている。


 「天龍」型と「夕張」、それに五五〇〇トン型といった旧式軽巡は大砲や魚雷発射管の一部あるいはそのすべてを撤去したうえで高角砲や機銃を充実、他国の同クラスの軽巡に比べて一枚も二枚も上手をいく対空能力を得るはずだった。

 駆逐艦については「吹雪」型と「初春」型、それに「白露」型は主砲を平射砲から高角砲に換装し、さらに機銃も増備。

 その代償として「吹雪」型は予備魚雷、「初春」型と「白露」型は次発装填装置とともにこちらもまた予備魚雷を廃止する。

 「睦月」型以前の旧式一等駆逐艦ならびに二等駆逐艦についてはさらに徹底しており、自衛用に魚雷発射管一基を残してあとはすべて撤去、主砲も平射砲から高角砲に換装するとともに聴音機や探信儀といった対潜装備も可能な限り新型のものに更新する。

 もちろん、これら改造や改装は造修施設が貧弱な日本ではとうてい一度に出来るものではなく、さらに工員らの雇用確保や技術の継承といった副次的な目的と併せ、複数年にわたって行われることになる。

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