第七話「絶体絶命」
雨が降ってきて僕らは雨宿りできる場所がないため、とりあえず進むことにした。
「でもさ、雨の中に崖を進むってのはいいのか?」
不安になった正憲が真実に聞いた。
「まぁ、しょうがないじゃん、雨宿りできるところはここを超えないと無いからさ。」
真実に聞いたつもりが後ろにいた愛琉が答えた。
「雨の中、じっとはしたくないでしょ?」
「…それはそうだな。」
愛琉に言いくるめられて正憲は頷いた。
「待って。」
真実が急に引き止めてゆっくりと僕に近寄る。
「え、な、何?」
すると真実が僕の左のカバンのポケットを指差して
「これ、何?」
それはまさしく折りたたみ傘だった。
「あ。」
しかし、一本しかないので意味がなかった。
「使わないってのもなぁ。」
ということで、愛琉が片手で持ちながら萌守に傘をさすという形になった。
「危なくねぇか?」
「大丈夫大丈夫。」
なぜかとても嬉しそうな顔で正憲の質問を跳ね返した。
ゆっくりと地道に歩いて進んでいくが、一向に進んだ気にはならなかった。
「雨のせいかな。なんか、全然、動いてる気がしないんだけど。」
「でも足は動いてるんでしょ。」
正憲が投げた質問に美奈に言われて首を傾げていた。
「今こっちから見えてる下の森は動いても景色なんて変わるもんじゃないしね。」
愛琉がそっと正憲の質問に答えた。
「やっぱそうか。森だもんな。」
今、正憲が言ったことは意味が分からなかったが、理解していたようだから別にいいかと思った。
どれくらい進んだだろうか、おそらく五分もまだ経ってないだろうけど、真実と愛琉以外は景色に飽きてきていた。
「ねぇ、どれくらい続く?」
痺れを切らした美奈がふと真実と愛琉に質問を投げかけた。
「あとすこし。」
真実がハッキリとそう言うが、さっきからそんな言葉しか言われてない気がする。
「なぁ、あとすこしってこの故郷で言うとどれくらい?」
同じく痺れを切らした正憲が愛琉の方を向いて聞いた。
「んー、30分以内かな。」
「マジか。」
その言葉に都会に住む僕らは少しだけ絶望を味わった気がした。
「そんな顔しても変わらないよ?でも30分って言うとアニメ一話分だよ?」
優しい愛琉の励ましによって変わるかと思いきや、僕らにとってはアニメ一話分も長く感じる。
「中学生だと仕方ないか、長く感じるのは。」
真実がそう言ったが、よくよく考えてみれば真実も中学生じゃねぇか。ってツッコミを入れようか迷ってたら
「いや、真実ちゃんも中学生じゃんか!」
と愛琉が咄嗟にツッコミをした。
そんな感じの会話をしていたら20分ほど立っていた。
「…これこそあと少しだな、本当に。」
足場が少しだけさっきよりも広くなっていたため、横向きに歩くことはなくなった。
だが、少し広くなっただけですぐ横は断崖絶壁。落ちれば、おそらく死ぬだろう。いや、多分、この高さだと普通に死ぬと思う。
「…怖いよ。」
まだ萌守は怖がっていて美奈にしがみついていた。
「もうすぐだから大丈夫だよ〜。」
その姿を見て未来の嫁かのような気分で見ていた。まだ早すぎるってのは分かってるんだけど、なんだろう、ますます好きになってきてしまう。
その瞬間、地面が欠けて片足が落ちてしまう。
「うわっ!!」
パシっとギリギリで美奈に掴まれセーフだった。
「大丈夫?危ないから気をつけてね?」
その姿はとてもカッコよかったっていうのもあり、可愛かったというのもあり、恥ずかしいという気持ちもあった。
そりゃこんな惨めな姿なんだもんな。とりあえず、色んな気持ちが混ざりあってカオスな状態だった。
上に引き上げてもらって再び歩き始める。
「ありがとう。」
「もう、お兄ちゃんったら。」
萌守にも恥ずかしい姿を晒したことも少しだけ恥ずかしい気持ちがあった。
「おいおい〜、恥ずかしいな〜おい〜。」
正憲がニヤニヤしながら言っていた。正憲は知っているが僕は美奈のことが好きで、それを応援してくれてはいるんだがフォローが少ない。
「早く、前向いて進んで。」
こっちを向いていたため愛琉に怒られてしまう。しぶしぶため息を少しついてから前を向いて進み始めた。
そして、数秒したところで真実が前を指さして言った。
「ほら、見えたよ。」
そう言われて見てみると目で見て分かるほどの道が開けているのが見えてきた。
「ここ、木があるから気をつけて。」
真実がくぐり抜けた木を強引に正憲が上にあげた。
その時、突然、正憲の目の前に鳥が飛び出してきた。
「うわ!」
「キャッ!」
それに驚いた正憲が後ろに下がり愛琉に当たって、最悪なことに二人は崖から落ちてしまったのだ。