89話 夏休みと夏祭り⑥
「あ、お兄ちゃん達がやっと来たよ」
俺たちは人気が無い場所に辿り着くと、先に愛香達がレジャーシートとテントを貼って、寛いで居た。
ここは、俺と楓と愛香の3人しか知らない特等席の場所だ。
「悪い悪い、人が多くて」
「やっぱり?今の時間帯だと混むからね」
楓はこれから、何か始まると夜空を見上げていた。
俺は、楓の横顔を見て一年前の事を思い出していた。
「あの時は、3人だったよな。今じゃ、こんなに騒がしくなったよな」
俺は後ろで楽しく騒いでる、灯里達を見つめてた。
「そうね。一年後はどうなってるのかな?みんな、彼氏とか出来てもっと増えたりするのかな?」
楓はニコッと揶揄う様に言ってきた
そうか、あいつらに彼氏が出来たら...
ズキンッ
俺は何故か息苦しくなった心をを抑えた。
一緒にいる事が多かったから俺は考えてなかったけど...いや、考えない様にしてたけど、もし、あいつらに、彼氏を作らないなんて保証はどこにもないんだよな。
他の男なんて、あんなに魅力的な彼女達をほっとく訳がないよな?
俺はあいつらとずっと一緒に居れば良いと思ってたけど、彼女達の隣に他の男がいる事を想像したくない。
「ちー君?」
俺が思い詰めた表情になってた事に、楓は少し心配する様な目で見つめていた。
「ご、ごめん。なんでもないよ」
「...もしかして、私達の誰かに彼氏が出来たら、嫌?」
俺は楓の問いに、目を見開いて楓に振り向いた。
「そ、それは...まぁ、結構嫌」
「ふ〜ん、致命的な鈍感君じゃなくて良かった」
何かボソボソと喋っていたが声が小さくて聞こえなかった。でも、何故が楓は嬉しそうに、笑っていた。
「ちー君は、どう思うの?これから、私達の関係を」
「...俺はずっと、みんなとこのままと一緒に居たい」
「ふ〜ん、でも変わらない関係何て存在しないんだよ?さっきの話に戻すけど、もしも彼女達に誰かが告白して、付き合ったら、ちー君がどう思うが貴方とその子の関係は変わるよね?」
「...」
確かに、彼女達...楓を含めて、彼氏が出来たら。
彼氏の方を優先して、俺らと一緒にいる事は出来なくなる。
例え俺が彼女達達の関係を変えたく無いと願っても、彼女達はそうとも限らない。
俺は考えたくなかった、このままずっと一緒に居たいと思ってたが、現実はそうは出来ない。
「まぁ私から言うのは、今の関係を無くしたくないのであれば、変えないんじゃなくて、今の関係以上に変えれば良いんじゃない?」
っと楓は微笑んで言った。
俺はずっと心のモヤモヤに息苦しかった。
俺って何で彼女達の事をこんなに依存してるんだ?
「...そうか、俺ってもしかしてお前らの事が」
バァン!
すると、夜空に大きな光が照らされた。
そう、花火だ。だが、まだ一つしか上がられてなく、どうやら、開始の花火の合図だろ。
みんなは、花火に気がついて俺の近くに座り始めた。
すると、次々と花火が上げられて、色々な形や色など全て迫力もあり、綺麗だった。
「もう、終わっちゃったね」
愛香は少し寂しそうに呟いた。
花火は大体20分近く打ち上げられていたが、感覚では一瞬の時間だった。
「よぉし、少し寛いでから、帰るか」
俺は立ち上がり、出たゴミを片付けて様とすると、楓達が顔を赤くして一列に並び始めた。
「?」
「ねぇ、ちー君、少しだけ私達から大事な話があります」




