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80話 夏休みと海⑤

「お嬢様!」


紗奈はシャルロットの後を追って、後ろから名前を叫んだ。

シャルロットはそのまま振り替えず、背を向けながら、紗奈と会話を始めた。


「なぁにー?」


「...何かありましたか?」


「んー?特にないよ?」


「じゃ、何故泣いているのですか?」


「...」


 夜で暗い場所だったので、泣いていた事に見えないと思っていたが、紗奈に見られていた。

シャルロットは、どんどん肩を震わせて、声が震えていた。


「ぼ、ボクは泣いてよ?」


「もしかして、千秋様に何かいわれました?」


 何も悪い事をしてない千秋が、責められてしまうと思い、シャルロットは紗奈の方を振り向いた。


「ちあきは何もしてない!ただ、ボクが勝手に落ち込んでるだけ!」


「何があったのですか?」


「...バカねイギリスに帰る事になったの」


「は?もしかして、父上様が勝手に決めた事ですか?」


 紗奈は、せっかくシャルロットが日本の生活を楽しんでいたので、帰れと言われたと勘違いしたが、シャルロットが自分の問いに首を横に振ったので、どうやら違うらしい。


「ボクね、お父さんに言ったの、許嫁をなかった事にしてって。まぁ、そもそもウチの親が勝手に決めた事だから、ちあきにも迷惑だしね」


「お嬢様...何故ですか?」


「だって、紗奈も見てて分かるでしょ?ちあきの事を想ってる女性が周りに居るんだよ?こんな、後から来た私は邪魔でしょ?」


「...そうですか、じゃ後で千秋様達にも伝えないと行けませんね。私も帰国の支度をしないと行けませんね」


 紗奈は、千秋達と離れ離れになってしまうと思い、少し寂しい気持ちになったが、シャルロットも同じ気持ちだったので、ここは我慢して笑顔で接した。


「紗奈は日本に居ても良いんだよ?」


「え?」


「ボクがお父さんに言っといたよ、紗奈は日本に残ると」


「な、何故ですか!」


「だって、紗奈さちあきの事が好きなんでしょ?」


 紗奈は、何故許嫁の事をなかった事にしたのか気付いてしまった。シャルロットが辛い思いをしたのは、自分のせいだと気付いたのだ。


「お嬢様...それって」


「ライバルが1人減った方が気が楽でしょ?まぁ、まだ強敵は沢山居るけど、ボクは応援してるよ」


 シャルロットは辛さに笑った。だが、紗奈はそんなシャルロットを許さなかった。相手の幸せの為に自分の幸せを犠牲にするシャルロットのやり方が気に食わなかったのだ。


「お嬢様、なら私も帰らせてもらいます」


「紗奈のチケット買ってないよ?」


「そもそも、プライベートジェットなので、チケットが必要ですか?」


「...うーん、困ったな」


シャルロットはどうしても紗奈の幸せを願いたいと思っていたが、自分の気持ちより、シャルロットを選んでしまう事に困っていた。


「ごめんね、少しズルい事するね。紗奈、これは命令、貴方は日本に残って、貴方の幸せを掴み取って来て」


「...無理です。私の幸せはお嬢様...いえ、シャルの隣にいる事が幸せなんですよ」


 紗奈は昔みたいに、シャルロットを愛称で呼んだ。


「紗奈、お願い。ボクの言う事を聞いて、貴方と口論したくないの?」


「私はそれ以上に、シャルと離れたくもないし、シャルが悲しい気持ちになるのも嫌です」


カラン!


「誰だ!」


 紗奈の後ろから、ホテルに飾ってある大きな少し花瓶が倒れ込んだ。

紗奈はシャルロットを狙うものだと思った。


「やばい!これ高い奴じゃないですよね?」


「うわー、灯里の奴やりあがったよ。私、しーらない」


「ちょっと!七海さん!助けてください!」


「ななみんも、あかりんも落ち着いて?バレるよ?って言ってもバレたかな?」


「灯里さんに楓さんに七海さんまで?どうしてここに?」


3人は紗奈に見つかってしまったので、申し訳無さそうに出てた。 

 何故3人がここに居たのかと、そして先程の話を聞かれてしまった事に驚いていた。


「シャルロットは、チー君の許嫁だったんだね」


「...」


 隠していた事をまさか聞かれてしまった事に、シャルロットはうつむいて黙ってしまった。


「別に責めてるわけじゃないよ?そもそも、ちー君が全て悪いからね」


「え?」


「しょうがないよ、あんなに優しくしてくれるし、助けてくれる。誰だって惚れちゃうんだから。さなもそうでしょ?」


「...」


 まさか、楓達に自分の気持ちを知られていた事に、紗奈も何を言えば良いのか言葉をつまってしまった。


「うん、丁度良いじゃん!」


楓は両隣にいる七海と愛香を交互に見てアイコンタクト取った、2人は楓の考えに気付いてコクリと頷いた。


「...ちー君。本当にこれが最後だよ?これ以上はないからね」


っと楓はポツリと言葉をこぼした。


「私から君たち2人にある提案があります」

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