59話 夏休みと問題発生⑨
「可笑しいですね。たった2人..1人が関わっただけで、こうも変わりますかね」
加藤はフードの男は戦力外と気付いたが、千秋がやってきただけで、押されているとは思わなかった。
100近い不良とたった8人の人間が互角に渡り合っている事に、目を疑って居た。
「くそぉ!!」
3人の不良は闇雲にバットを振り回して居たが、俺は全て避けて、不良の服を掴み隣に居た不良に投げ飛ばした。
そして、その隙にもう1人の不良が俺の顔にバットを振り下ろしたが、素手で受け止めて、顔目掛けて蹴りを入れた。
千秋の圧倒的な強さに、不良達は怯んでなかなか千秋に攻めたから者は居なかった。
「早乙女!!俺が相手してやるよ!」
「誰だお前は?」
「相変わらずうざい奴だな。俺はイエロータイガーのヘッドの宮園だ」
「...」
ダメだ、全然思い出せない。
俺に対する接し方に因縁はあると思うが、俺はどうしても宮園の事が思い出せなかった。
「この一年ボクシングを習ったからな。一年前の俺と比べ物にならないぞ?」
宮園は構えた。ステップを踏んで、ジャブ、ジャブ、ストレート、ジャブと繰り返して居たが、全て手のひらで防御した。
「ふーん、速いんじゃ無いの?」
「甘く見るな!ふっ、ふっ、はっ!」
ジャブ、ジャブ、そしてアッパーの時に俺は少し後ろに下がって避けてからの横から拳を入れた。
宮園はそれを軽く見切って、体勢を低くして避けてからの、俺が攻撃しづらい位置までに近づいて来た。
「終わりだぁ!!」
俺の顎に目掛けてアッパーを入れた瞬間、先に俺の膝が奴の顎に届いた。
「肘打ちだと...」
そして、脳が揺れたのか宮園はその場で倒れ込んだ。
「おい、加藤!そろそろ、来ても良いんじゃないのか?」
他の幹部クラスはミズキ達が相手をしていて、手を空いているのは加藤1人だけだった。
加藤は俺の戦いをずっとニヤニヤと笑って見ていて、不愉快だと感じていた。
「千秋ちゃん〜、俺と混ざり合おうぜ」
「気色悪い」
そして、お互い睨み合った。
先に仕掛けて来たのは、加藤の方だった。加藤が持っていた鉄パイプを思いっきり俺に襲った。
「ひゃはは!死ね!」
一直線だったので、俺は加藤に目掛けて前蹴りで吹き飛ばした。
吹き飛ばした加藤は受け身をとって、すぐに立ち上がって行ってまた一直線で突っ込んできたのだ。
「本当、タフな野郎だな」
「ギャハハ!そんな俺を倒したのは、ただお前1人だけなんだよ!」
「あっそう」
すると、鉄パイプの先を俺に向けて槍投げをして来た。
ギリギリ避けたが、いきなりの事に俺は体勢を崩してしまい、加藤がポケットから何か取り出して俺の左の額に当たった。
「「「千秋!!」」」
「...てめぇ」
「ぎゃっは!」
加藤の手に持っていたのはナイフだった、俺の左の額に切り口をつけられて、そこからタラタラと血が流れて行った。
「お前の血の味は美味いのかな?」
っと、不気味な笑みで俺の血がついたナイフをペロリっと舐めた。
「本当に、狂ってるよなお前」
「褒め言葉として、受け取りますぞい?」
「流石にガキがナイフを持つのは危ねぇな。少し、本気玉いくぞ?」
普通の人間ならナイフ相手に怯むはずだが、千秋は顔色変えずにそのまま加藤の所に向かって行った。
ナイフを持ったまま、俺の所に走って近づいた、俺は奴のふくらはぎを蹴り、あまりの痛さに奴は少し怯んだ隙に、奴の顎に目掛けて蹴りを入れた。
「ガハッ」
加藤は後ろに倒れ込み、俺はその上から馬乗りになって、ナイフを奪ってから顔面を殴り続けた。
「がフュ!がひゃ!さいがはっ!最高、おへっ」
タコ殴りにされているのに、加藤の顔から笑顔が消えなかった。
そして、俺は最後に深く息を吸って、トドメをと奴の顔面に思いっきり拳を振り下げた。
「終わりだ」
「がふっ!!」
「はぁ、お前はすげ〜弱くなったよ。一年前に感じたお前からの恐怖がいっさい感じなくなった。お前、復讐に囚われ過ぎじゃねぇか?」




