56話 夏休みと問題発生⑥
「はぁ〜、結局帰ってきちゃったよ」
大智は、廃墟を見て深くため息を吐いていた。
元は病院だったが何十年前にある事件により経営者が捕まって、今に至る。不良の溜まり場になっておりそこらじゅう、落書きだらけだ。
特に多いのはピエロの落書きだ。
一年前にピエロマーチと言う不良チームが住処にしており、千秋達はそいつらと歪みあって解体させた。
ミズキ達が何故こうも嫌がっているのかは、ピエロマーチのリーダーとその人数がトラウマだったのだ。
あの時は千秋達で7人に対して、ピエロマーチは70人近くは居た。あまりにも人数差に何故勝てたのはミズキ達しか知らない。
そして、もう一つのトラウマはピエロマーチのリーダーの怖さだ。
千秋とタイマンで負けたが、ピエロマーチのリーダーはサイコパスに近いやばい奴で、ミズキ達はを恐怖に至った。
「ふー、」
「何だ、琉樹?最後の一服か?」
「ふっ、何で俺らが負ける前提で話すんだよ」
千寿は空気が重かったので琉樹を揶揄って、笑いをとって場を和ませる。
そして、蓮達は入る覚悟を決めた。
「行くか...」
廃墟に入ると、一年前とほとんど変わっていなかった。
不良どもが貼っていった、グラビアのポスターや。
ソファーや椅子。そして、どこで盗んで来たかは謎だが古いゲーム台。
壁には外と同様に多くの落書きがあり、床には弁当や漫画のゴミが散らばっていた。所々にガラスの破片までが落ちている。
廃墟の中は広いので、真斗が何処に行くのかとみんなに相談し始めた。
「とりま、どこ行く?」
「...王座の間」
「「「だよなー」」」
琉樹が言う王座の間とは、一年前にピエロマーチの幹部とリーダーが居座っていた、廃墟の中で一番広い部屋だ。
そして、千秋とのタイマンで決着ついた部屋でもある。
恐る恐る、王座の間に近づくと人がいそうな音が聞こえてくるのが分かる。
恐る恐る中に入ると、中に居たのは長髪の男..森が真ん中の椅子に座っていて、周りには40近い不良が立っていたのだ。
「やぁ、久しぶりだね。千秋は来なかったのか?」
森はミズキ達を見渡すと、千秋の姿がいないと気付いた。
そんな余裕そうな顔が気に食わなかったのか、ミズキは挑発を入れた。
「千秋は来ないよ。お前ら程度には必要ないからね」
「ふふふ、ははは」
ミズキの挑発に森は顔を押さえて笑い出した。
「何がおかしい?」
「いや、悪い。そうか、俺ら程度では勝てないのか」
「当たり前だろ?」
「...そうか」
森は片手を上げて、振り下ろした瞬間周りの不良達が動き出した。
琉樹は落ちてた木の棒を広い、真斗は腰にある警棒を開いた。
「おらぁ!!」
次々と不良が襲ってきて、ミズキ達は返り討ちにしていた。
あっという間に、40人近かった不良達は半分に減っていたのだ。
「うーん、やっぱりダメか」
「はぁ、もしかしてこれで僕達に勝てると思ってたの?」
「はは!まさか。次は俺1人が相手してやるよ」
「お前1人なら、俺が1人でやる」
森が立った瞬間、真斗が前に出て森とタイマンを貼ると言った。
森は近くの不良から、鉄パイプを借りた。準備運動がてら、肩をブンブン回した。
「よぉし、お前から来いよ」
「はっ、舐めてんじゃねーよ。俺から言ったらすぐに終わっちゃうじゃん?」
「なら、お言葉に甘えて」
森が走って近づいてバットを薙ぎ払った、真斗の警棒で受け流し、森の足を狙った。
「イテッ」
「終わりだよ」
警棒を振り下ろした時に、森はギリギリに後ろに転び込み避けた。
そして、真斗に向かってバットを投げたが、それを軽く避けて森の顔面に蹴りを入れた。
「ガハッ」
「案外弱いなお前」
「クッククク」
負けたというのに、森は笑っていた。
「遊びは終わりだ!!!」
っと言った瞬間、左右のドアからゾロゾロと不良達が出てきた。
その中に元リーダーだった連中も混ざり込んでいて、そして、最後に出てきたピエロの様なメイクの人物を見た瞬間、ミズキ達は顔をしかめた。
「ひゃっは!久しぶりだな!諸君!」
丁寧なお辞儀をした、男は元ピエロマーチのリーダーだった。




