53話 夏休みと問題発生③
これは完全にアウトだ。気絶してる不良どものど真ん中に立っていれば俺がやったって思われてもおかしくない。
「ねぇ、また喧嘩したの?」
「してない!俺は一度も手を出してないから!」
「...約束したのに、何でこんなに心配させるの」
本当に心配してたのか、ポロポロと瞳から涙が流れてきた。
やばいっと俺はどうしたら良いのか慌てていた。そんな状況に、ずっと見てたミズキが助けに来てくれた。
「あの、お姉さん。本当に千秋は何もしてないよ」
「...こ、怖いです」
お前が千秋を巻き込んだのか?と言わんばかりの目つきで、ミツキを睨むとミツキの中の本能なのか、思わず一歩下がってしまった。
「そもそも、先に手を出したのはこいつら..です」
威圧のせいか、ミツキは生まれたての子鹿の様に震えていて、思わず使い慣れてない敬語で喋っていた。
「本当に?」
「はい、本当です。逆に千秋は襲われて居ても絶対に手を出さなかったですよ。貴方ですよね?約束した相手は、貴方が悲しませると分かっていて、千秋は喧嘩に参加しなかった..です。だから、攻めるのなら僕を責めてくだい。僕が巻き込んだ事もありますし...」
今日のミズキは、めちゃくちゃ喋るな...
俺を庇ってくれている事に心から感謝をしていた。実際には、本当に手を出してないが。
すると、再確認なのか俺の方を見つめて来たので、俺はウンウンと頷いたのだ。
「そう...疑ってごめんなさい。私...」
信じるより先に疑ってしまった事に、暗い表情になった。俺はそんな表情を見て優しく抱きしめた。俺は何故そんな事したのかは、自分自身でも分からなかった。
「心配させちゃってごめん」
「千秋君は何もしてないのに、勝手に疑ってごめんなさい」
「いや、俺が」
「違います、私が」
「あの〜、僕がいる事忘れてません?」
2人は抱き合っている状態で言い合いをしてる中、完全にミズキがいる事を忘れ、その会話をジト目で見ていた。
ミズキがいる事を思い出し、2人は恥ずかしくなって顔を赤くして抱き合うのを辞めた。
「2人は、付き合っているのですか?」
今の見れば付き合ってと分かる事なのに、ミズキはニヤニヤと笑い揶揄って聞いて来た。だが、実際は2人は付き合って居ない。
「...いや、付き合ってないよ?」
「あれ?」
俺が付き合ってないと言って、後ろで灯里がブンブン顔を横に振っていた。
「本当に?」
何故かミズキは付き合ってない事を信じておらず、ずっと疑って居た。
「うーん、怪しいな...」
「何がだよ」
「だって、千秋って...いや、何でもない」
「おい!言い終わるなよ、気になるじゃねーか」
「あはは」
笑って誤魔化した。
俺はハッとアイスの事を思い出して、溶けないうちに冷蔵庫に入れなくちゃと焦りを出した。
「悪い、俺帰るよ!」
「千秋君、荷物持ちますよ?」
「良いよ、荷物少ないし。てか、愛香達は?」
「一回帰ったのですが、私が散歩しないと思い」
「あーね」
七海のせいで、自分らしくない用語を使ってしまった。
「んじゃ、アイスが溶けないうちに帰るか」
「はい」
「んじゃ、ミズキ俺らは帰る」
「おう、バイバイ」
ミズキは2人が帰る姿を見て、ずっと手を振って居た。
「...今の会話って同棲してるって事だよね?」
ミズキは勘が鋭かった。2人の会話聞いておかしいなっと思っていたのだ。本当は付き合ってるのでは?っと疑いの感情が強くなっている。
「女の子は分かりやすかったけど、千秋も好意あるよな?」
千秋の付き合いは長く、良く千秋の事を知ってからミズキ。
ずっと、顎を触りながら考えていた。
「うーん、楓さんの事が好きだと思ってたけど。分からないな〜、千秋って、気を許してない相手じゃないと、表情が一点張りだからな。初対面の時は目つきが悪かったな」
本人は気付いていないが、気を許してない相手だと笑ったり、泣きたりと色々な表情を見せないのだ。
ミズキは千秋との初対面の事を思い出し、少し笑ってしまい、不良どもが起きる前に帰って行った。




