42話 後輩と事件
「座る?」
「...はい」
ずっと立たせるのも悪いと思い、楓が座っていた席に座らせた。
「...」
「...みーちゃん、最近家に来ないけどどうしたの?」
3人が廊下の外でコソコソと話してる時に、俺は無言の空気に耐えきれなくなり、適当に話の話題を作った。
「さ、最近...い、忙しく...」
「そうなんだ」
「...」
「...」
また無言の空気に戻ってしまった。次は何とか喋らないと、美音が最近の出来事を思い出して話題を出した。
「ち、千秋先輩...体育祭の時凄く、か、カッコ良かったです」
「...」
「...ち、千秋先輩?」
俺はニコニコと無言になっていた。話の振り方に失敗したのかとソワソワと美音は慌てていた。
慌てている姿が、可愛いと思ってそのままにしようとしたが、流石に可哀想と思って無言をやめた。
「みーちゃん、先輩はやだなー。昔みたいに呼んでくれないか?」
「...で、でも。ち、千秋先輩に..わ、悪いと思って」
「...」
「ち、ちーちゃん..先輩」
「う〜ん、先輩が要らないけどな。まぁ、良いか」
俺はこれ以上要求したら、しつこい野郎と嫌われるかもしれないので、ちーちゃん先輩で我慢した。
「みーちゃんは、お昼済ませたの?」
「は、はい。わ、私はもう済ませました」
「そうなんだ。あ、飲み物買うの忘れちまったな、ちょっと買ってくる」
俺は立ち上がろうした瞬間、俺の袖を掴み泣きそうな目でブンブンと頭を横に振っていた。
「あ、」
先輩の教室に1人で残すのも可哀想だと気付き、愛香に助けを求めようとしたが、いつの間にか愛香の姿がいなかったのだ。
「一緒に買いに行くか」
2人は学校の自動販売機がある階に降りていった。
すると、見覚えのあるうざい後輩がこちらにやって来たのだ。
「おい!デブ、愛香はどこに行った?」
「わ、分かりません」
「ちっ、使えねーデブだな」
「おい、」
「あ?...お前は」
どうやら、陣は俺が隣にいる事に気付いていなかった。俺の姿を見た瞬間強く鋭い目で見た。
だが、俺はそれよりも美音の呼び方に気に食わなかったのだ。
「お前、どうしようもない奴だな。女にその呼び方はないんじゃねーの?」
「は?お前に関係ないだろ?デブにデブって言って何が悪いんだ?」
「ちーちゃん先輩...私はだ、大丈夫なので」
大事になる前に、美音は俺の袖を掴んで止めようとしたが、俺は流石に調子に乗っていると頭に来ていた。
「ぷっ、ちーちゃん先輩?お前、愛香の次はそいつに媚びあるのか?まじ笑える!」
ああ、こいつボコって退学になっても後悔しなくなって来たな。
俺が拳を握った瞬間、メガネの男に..確か潤の後輩の裕二がスマホを持ってやって来た。
「おい、陣。お前、潤先輩に早乙女先輩に関わるなって言われてないか?」
「はぁ?先に話しかけて来たのはあっちだぞ?」
「まぁ、確かにそうだけだ、今のはお前がわるいぞ?」
「うるせ!」
陣は、裕二を突き飛ばした。
「あーあ、お前が押したせいで潤先輩に送っちゃったよ」
「は?」
裕二はスマホを見せた。すると、先程からの会話が撮られていて、潤に送ってしまっていたのだ。
「取り消せよ!」
「既読しちゃったから、無理だね」
「ちっ」
陣は慌てながら、どこか行ってしまった。
裕二は立ち上がり、ホコリをはいていた。
「悪いな、後輩君」
「別に良いですよ。潤先輩に何かあったら報告してくれと伝えられてますから」
「そうか...」
また、あいつに助けられてしまったか。
あいつの分の、ジュースでも買うか..
「それに、僕は体育祭の早乙女先輩を見て尊敬してますから」
「お、おう。あ、ありがとう」
いきなり、褒められて気恥ずかしいそうになった。
「では、僕はこれで」
裕二はお辞儀をして、自分のクラスに戻ってい行った。
俺はずっと、俯いている美音を心配しそうに見た。
そっと、頭に手を置いて励まさせようとした。
「あまり、気にすんな」
「...ひゃい」




