30話 委員長と放課後デート
火曜日の放課後、灯里が一旦家に帰りたいと言ってきたので、2人は別々に家に帰った。
「千秋君、ごめんなさい。思ったより時間掛かっちゃいました。」
「別にだいじょ...」
俺はそう言って声がした方へ振り向くと、そこにはポニテで白のパーカーにズボンといった、普通の服装なのだが灯里が着る事によって滅茶苦茶可愛く仕上がっていたのだ。
「どうですか?七海ちゃんから勧められ、初めてパーカーというものを着ましたが、私に似合いますか?」
灯里は少し不安そうに俺にそう問いかける
「すげー、似合ってるよ」
変に飾る事なく素直に思った事を口にした。
灯里は、似合ってると言われ、少し嬉しそうに笑みをこぼした。
「あまり、デート服とは思いませんでしたが、千秋君に似合ってると言われると嬉しいです」
「...デート?」
「え?あ、何でも無いです」
何故か慌てて話を逸らしたのだ。
そして、2人は家から出て。
「それで、最初はどこ行こうか?」
「そうですね。私あまり騒がしい所が苦手なので、静かな所に行きたいですね」
「そうだな、じゃーあそこに行くか」
俺はスマホを開いて、目的地を調べて道を歩き初めて目的地の場所まで歩いて行った。
ついた場所は、花壇が沢山ある公園だった。
「灯里こういうのは好きだろ?」
「こんな、綺麗な場所あったんですね」
2人は肩を並べて綺麗な花達を見回っていた。
2人の距離は、後少しで肩がぶつかる程近かったのだ。
「灯里、あそこに行かないか?」
先程の歩いて10分程の場所にあるカフェを指差してそう言った。少しオシャレなカフェに入って行ったのだ
『いらっしゃいませ」
店の中に入ると店員さんに席へと案内された。俺が座る席に何故か前の席ではなく隣に座ったのだ。
席がそれほど大きくないので、密着するような態勢になってしまっている。
「...どうしたのですか?」
「いや、何でもないよ」
灯里はメニューを、開いた
「千秋君は何が良いですか?」
「灯里に任せるよ。俺は飲み物だけで良いよ」
「分かりました。すみません!」
「はい、ご注文は何でしょう?」
灯里は手を挙げて、店員を呼んだ。
「こ、これでお願いします」
「かしこまりました」
何故か灯里は顔を赤くして、メニューを指差した。
店員は、灯里が頼んだメニューに少し微笑んでいた。
「お待たせしました」
「あ、ありがとうございます」
「...え?」
店員さんが持ってきたのは少し大きめのハート型のケーキと、二つのストローがハート形に交わっているイチゴジュースだった。
「...灯里?これ1人で食べるのか?」
「違います!千秋君と一緒に食べましょう!」
「...え?まじで?」
「まじです」
「ほら、あーんして下さい」
すると、一口サイズのケーキを俺の口の前まで運んだ。
いきなりの事に俺は固まってしまった。
すると、いつまでも食べてくれないと、灯里は少し表情が暗くなって行った。
「もしかして、嫌ですか?」
「...まさか!食べるよ!」
周囲の客からの目線にも耐えつつ、俺はケーキをパクリと食べた。
「んまい」
「本当ですか?どれどれ、美味いですね」
灯里は千秋が使ったフォークを使って食べた、間接キスだと俺の母が少し赤くなってしまった。
それから、ケーキとジュースを堪能した。流石にジュースは同時に飲むのは恥ずかしかったので、別々で飲んだ。
「...そろそろ、話さないとですね」
「ん?何が?」
「私があの時公園にいた事ですよ」
「あー」
灯里は、何故あの時公園で泣いていたのかと話す決意が決まった様だ。
「まぁ、理由は大した事では無いですよ。ただ、母と喧嘩しただけです」
「喧嘩?」
「はい、母は自分の道具の様に扱ってくるのですよ。それに、嫌気を刺して逃げ出してしまいました」
悲しそうに笑った。どうやら、灯里の母親は、自分の思い描いた完璧な人間として教育をしたのだ。
それに、嫌気をさして口喧嘩してしまい思わず家出をしたと語った。
「私は母から愛してくれてると信じてました。でも、私が家出してから一度も探してる気配がありませんでした」
そんな母親でも、我が娘を愛してくれてると信じて居たかったが、自分が家出をしても心配も探して居る事さえしなかった事に、本当に自分の事を道具にしか思って居ないと気付いたのだ。
泣きそうな表情に、千秋は無言で灯里の手をギュッと握った。
「...本当に今は幸せです。千秋君達と知り合ってから、私は物凄く幸せと感じてます」
「俺もだよ。灯里と仲良くなってから楽しく感じるよ。ずっと、一緒にいような」
「...え?」
プロポーズの様な発言をしたが、俺はありのまま思った事を口にした。
灯里は頬を赤らめたが、少し千秋の顔を見つめて考え事をした。
「...いや、今のは違いますか...そうですね、ずっとずっと、一緒ですよ?約束して下さい」
灯里は残念そうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔に変わった。
「おう、約束だ」




