3話 名前呼びと夕食
「あの、早乙女さん」
「ん?」
「はい?」
「あ、次は兄の方です」
両方早乙女だったので、再び2人が反応しちゃった。
次は俺の方に用があった。
「早乙女さんは、料理が出来るのですか?」
「んー、ある程度は、愛香の方がうまいよ」
「へ〜、羨ましいですね。」
「あの〜、成瀬先輩。私達も下の名前で呼び合いません?毎回、苗字で呼ばれると、どっちか分からなくなって」
俺も愛香も、早乙女なので毎回早乙女と呼ばれるとどっちを呼んで居るのかは分からなくなるので、下の名前で呼び合おうと提案してきた。
「良いですよ。愛香さんで合ってますよね?」
「え!覚えて居たのですか?!」
「勿論、前回のテストの点数は学年一位と有名だったもので..」
愛香は、一年生の中で1番頭が良かった。兄の俺と違って、俺の成績は下から数えた方が早い。
「宜しくお願いします。灯里先輩」
「悪りぃ、お茶出すの忘れてた」
俺は成瀬の前にお茶を出した、出されたお茶にペコリと頷いて感謝した。
「早乙女さん、ありがとうございます」
「俺も下で良いよ」
「...えっと....千秋さん、ありがとうございます」
「ん」
下で呼んで良いと言って、そのままキッチンに戻っていった。
何故か少し言いづらそうだったが、まぁ中学からずっと上の名前で呼ばれて居たから、呼びずらいのもしょうがないか。
そして、机に料理を並べて4人で夕食をとった。
「これ、全部早乙..千秋さんが?」
「まぁ、殆ど愛香から教わったものだけどな。じゃんじゃん食えよ。いっぱいあるから」
そう笑顔で言って、灯里は肉じゃがを口に運んだ。
「美味しい...」
「それは、よかった」
☆☆☆☆☆
「本当に、ありがとうございます。何か手伝える事はありませんか?」
「んー、良いよ良いよ」
千秋が皿を洗って居る事を見て、泊めさせてくれる身として何もしないのも落ち着かなかったのか、何か手伝える事が無いのかと聞いた。
「でも...」
家主が大丈夫って言ってくれるが、それでも灯里の性格的に引き下がらなかった。
俺は何かないかと考えた
「じゃー、俺の話相手してくれないか?皿を洗って居て暇なんだ」
他にする事は全部愛香が終わらせてしまったので、話相手として付き合ってくれないかと提案した。
そう言っても、前までは良く口喧嘩をする仲だったから灯里は何を話して良いのか迷って居た。
そんな灯里を見て、先に千秋が話を始めた。
「好きな食べ物とか、食べられない食べ物とかあるか?」
「え?」
「何日か泊まるんだろ?なら、好き嫌いなものを知らないとね」
「...殆ど食べれる、嫌いな食べ物はないと思います」
「強いて言うなら?」
「...カレー」
「...ぷっははは」
「ちょっと!笑わないで下さい」
灯里から意外な料理が出てきて思わず笑ってしまった。
「すまんって、カレーね。明日カレーにしようかな」
明日の夕食が決まったようだ。
そんな笑って居る、千秋の顔をずっと見つめて居た。
「...ごめんなさい、私貴方の事勘違いして居たわ。ダメな人間だと思って居たけど、案外家庭的で心優しいね。いつも怒鳴ったりして、ごめんなさい」
灯里はずっと問題児な千秋の裏が、本当は優しく家庭的な事を知っていつもダメな人間だと見る様な目線で怒鳴って居た事に誤った。
「別に、謝る事はないよ。実際、俺は遅刻もするし喧嘩だって良くする。灯里が思ってる様な人間だぞ?俺は1人だとダメな人間だからな」
そして、俺は明日の支度をしようとしたが、灯里の服装を見てある事を思い出した。
「てか、学生服どうするの?」
「明日、乾くと思う。少し濡れて居たら我慢すれば良い」
「風邪引くぞ?愛香..はダメか」
愛香の学生服を貸そうとしたが、胸辺りを見て入らないと確信した。愛香はBカップに対して、灯里はその倍近くあるのだ。
「楓に借りるしかないな」
俺は引き出しから、楓の学生服を取り出し灯里に投げた。
投げた学生服は見事にキャッチした。
「楓さんに悪いですよ」
「良いって、楓も多く買って殆ど使って無いからな。使わない方が勿体ないだろ?」
「ありがとうございます」
「ん、俺は先にシャワー浴びて寝るからね。俺の部屋使って良いぞ。俺は親の部屋で寝るから」
部屋まで貸すのも悪いと思い灯里の唇が動く前に背を向けて、シャワーに向かって行った。
ポツリと、リビングに取り残されてしまい、周りを見渡した。
「よく、見ると女のものばかり...」
千秋の家と言いながら、愛香と楓の化粧品や女の様の服が沢山置かれており、千秋のものがあまり見当たらなかった。




