2話 雨と公園
「おい、風邪ひくぞ?」
ことの発端は、成瀬灯里が雨が降って居るの中、公園でベンチに俯いた姿で座って居るのを見かけた時だ。
「早乙女さん?...ほっといて下さい」
俺の姿を見かけたが、直ぐに視線を下に下げてしまった。
どうしたら、良いのか困っていた。
成瀬灯里とは、中学から呪いの様にずっと同じクラスだった。
文武両道で、学校では評判が高いと言われる美少女だ。
逆の俺は、学校で評判が悪く度々何かしらの問題を起こして、問題児だと言われて居る。
俺みたいな、問題児をほっとけなく良く喧嘩する仲だった。
だが、仲が悪くてもこんな大雨で傘もささずに公園で1人、ベンチに腰をかけていたら、誰でも心配する。
俺は周りを見渡すが、誰かを待って居るといった訳でもなさそうで、ただただ濡れる事を抵抗もなく地面を見つめていた。
「はぁ〜」
「何?」
ずっと、こんな状態でいられたら、風邪を引きかねない状態だ。そんなの俺はほっとけなく、おせっかいと思われるが俺が持っていた傘を差し出した。
「早く家に帰れよ、風邪ひくぞ」
「いい、私帰る家がないの」
「...」
思ったより話が重そうな雰囲気に、無言になってしまった。
どうしようと、頭をかいていたら。
「...帰る家がないなら、家に泊まってくか?」
「貴方の?」
「ああ、嫌なら良いけど」
っと、言ったが警戒心剥き出しに怪しげな目で見つめていた。
「安心しろ、家には妹も居るし。別にお前をどうしよとしないよ。興味ないし」
楓だって、ちょくちょく家に泊まるしな
「...りがと」
掠れた声で感謝された、雨で濡れていたせいか気付かなかったが、少し泣いて居るようにみえた。
「何であんな所に居たんだ?」
「...」
「悪かった、話したく無いならそれで良いよ」
そして、俺はマンションに入りエレベーターで7階までに上がり、家の前についてカギを開けて家に入った。
家に入っても声が聞こえないので、愛香はまだ帰って居なかった。
困ったな...流石に2人きりは
「風邪引くと悪いから、風呂そこにある使ってけ。服は適当に俺の使っても良いよ。俺はちょっと夕食の買い物に出かけるから」
流石に、クラスメイトでもある男女が2人きりに居るのは、誤解を招くかもしれないので、早めの買い物に出かけようとした。
その気遣いに、気付いたのか公園から初めて笑った。
「ふふ、貴方って結構家庭的な人なんですね」
「悪いか?」
「悪く無いです。少し見直した気がします」
「...そうか」
あんな笑った彼女の表情は美しく忘れる事が出来ないだろう。少し、頬が赤らめて居る事を悟られ無い様に俺は直ぐに背を向け家から出た。
☆☆☆☆
数時間ちょい、4人分の夕食を買い物して家に帰った。
リビングに入ると、何故か灯里と愛香が対面で正座して居た。
「お兄ちゃ...兄さん、これってどういう事?何故、成瀬先輩が家に居るのですか?」
愛香も俺と成瀬は犬猿の仲だと知っており、その成瀬が家に居る事に驚きを隠せて居なかった。
「うん、まぁ、色々あった」
説明するのも、面倒くさかったので素気なく答えた。
「早乙女さん」
「ん?」
「はい?」
「あ、妹の方です」
早乙女と呼ばれたので、俺と灯里が同時に反応した。
どうやら、妹の方を呼んだらしい。
「その〜、2人には迷惑ですが、家の事情で数日間だけ泊めさせても宜しいでしょうか?」
「え、全然良いよ。てか、2人ってより実質3人暮らしみたいなものだし、1人増えようが今更って感じだよ。多い方が楽しいし」
「早乙女さん、ありがとうございます」
成瀬は深く頭を下げた。3人暮らしと言う言葉に俺は聞かなかった事にした。高校生になってから、泊まる頻度が多くなってきて、実家よりここに居る時間が多い気がする。
誰の事を言って居ると、丁度その子は帰ってきた。
「ただいま、今日の晩御飯なに?」
家は隣同士で、俺の幼馴染の氷室楓の事だ。
楓がリビングに入ると、直ぐに成瀬と目が合ってお互い見つめ合い固まって居た。
「え?!成瀬さん?何で!」
「えっと...氷室さん?」
楓は、何があったの問いかけて来たが、ある程度の説明を本人と愛香がした。
「へぇ〜、成瀬さんも、ここに泊まるんだ。良いじゃん!成瀬さんとは仲良しになりたいなって思ってたし!」
笑顔でそう言った。
「...も?もしかして、氷室さんも泊まってるのですか?」
「下の名前で良いよ、あかりんって呼んでも良い?」
「はい...楓さん」
流石にフレンドリーの楓、すぐに仲良しになったな。
っと、俺はキッチンからその光景を覗きそう思った。
「私もね、良く泊まるの」
「...前々から、気になってましたが、お付き合いしてるのですか?」
「え!」
そんな、言葉に楓は赤面になって慌ててしまった。
「お、お付き合いなんて..ちー君とは、その〜えっと..」
完全に暴走状態になってしまったが、いつもの事なので愛香はそれをほっといて、話を続けた。




