18話 ぼっちとナンパ
「千秋〜、今日こそゲーセン行かねーか?」
机の上でベターっとくつろぎながら、放課後にゲーセン行かないかと誘ってきた。
「別に良いけど、お前今日部活じゃね?」
「...そうだった」
いつもタイミングが悪く、最近千秋と遊べてない事に頭を抱えていた。
「てか、お前最近学校来る様になったよなー」
「そうか?」
「うん、週4ぐらい遅刻、早退してるのに。今じゃ、週一に一回するかしないかだもん」
最近、灯里に学校行けと念押しされていたのでジョギングの後の二度寝は出来ていない状況だった。
楓も同じで、最近遅刻する事が少なくなって来てるのだ。
「それほど、俺は真っ当な人間になった事だよ」
「何言ってんだよ、真っ当な人間なら授業中に寝ないよ」
朝二度寝出来てない代わりに、学校で爆睡して居る俺だった。
ピロン
すると、3通程メールが届いた。
俺は確認すると、楓、灯里、愛香からだった。
楓< ごめん〜今日クラスの子と遊ぶ予定が出来たから先に帰っといて
千< 了解、楽しんで来いよ
灯< 今日はバイトがありますので先に帰ります
千< 了解、ファイト!
愛< 今日特売日の日だから、先に出るよ〜
千< 了解、手伝い不要か?
すると、再び犬なのかワニなのかよく分からんキャラが、大丈夫と言って自分の胸をぽんっと叩いてるスタンプが送られてきた。
「うーん、今日は1人か...」
潤は今日は部活で放課後遊べないので、一応大智と千寿にも暇なのかとメールを送った。
千< お前ら今日暇?
大< 彼女
沢< 今日新作のゲームの発売日だから、暇じゃない。
ちっ、どうやら2人も今日は暇じゃなかったらしい。
千寿に関しては暇の分類に入るのではないのか?っと心の中でツッコミを入れた。
どうやら、大智が彼女と一緒にいる事に千寿が嫌味を言って居たが、俺はメール内容を見る気もなかった。
う〜ん、どうしよっかな。
家に帰っても誰も居ない為、ものすごく暇だった。
「...仕方ねぇ、適当に歩いてるか」
☆☆☆☆☆
特に行く事が無かったので、食べ歩き目的で桜坂高校からは徒歩で20分ほどの場所にある。それなりに活気のある地域密着型の商店街だ。
ちなみに、前にカレーの具材を買うために灯里と行った場所はここだ。
やはり、主婦ばっかりだった。
商店街なので、学生は少なかった。
ゲーセンは近くにあるが、商店街まで足を延ばす者はあまりいない。
「お、猫だ」
俺は猫を見かけた、何故追いかけたのか今の自分でも分からないが多分相当暇だったので追いかけてしまったんだろう。
猫を追いかけ続けると、人並みも少なくなり商店街の裏通りに出た。
「――――ふざけんな、気持ち悪いんだよ」
「ん?、」
「別に何もしないって~、ちょっと俺らと遊ぶだけって言ってるだけじゃん」
「そうそう!少しくらいいじゃん」
声がする方の隙間を覗き込んだ時、少し慌てた感じの金髪の女性の声が聞こえてきた。
どうやら、強引にナンパされて居る様だ。
「今どき、ナンパなんて存在するんだな」
俺はナンパなんて、漫画とテレビにしかない都市伝説の様なものだと思っていた。
流石にこれ以上見てられないのか助けに向かって行った。
「おい、そいつ困ってるだろ?」
「あ?」
男達は楽しい時間に、いきなり湧いて出てきた俺の胸ぐらを掴んできた。
「おい、なんだこの手は?」
「いきなり出てきやがって。ヒーロー気取りか?高校生になってヒーローごっこって恥ずかしくないのか?あ?」
「はぁ〜恥ずかしいのはお前らだろ?1人の女を囲んでナンパって...」
男は殴りかかろうとしたので、その腕を掴んで殴り返そうとするが灯里の言葉を思い出した。
"約束ですよ"
「ちっ、」
殴るのをやめて、手首を握り締め、手の平の色が変わり始めた辺りで男は膝をついた、殴りかかろうとしてきたもう一人の男の攻撃を軽く避けると尻餅をついてしまったのだ。
「いてててて、やめろ!離せ」
「てめぇ――」
「ほらよ、離してやるよ」
俺は男の手首を放し、二人を見下ろす形で告げた。
「早く失せろゴミども」
「ふざけんな!」
「待て!!」
男は立ち上がり再び殴りかかったが、もう1人の男に止められた。
すると、俺の顔を見て何か思い出し震え上がっていた。
「何だよ!離せ!!」
「こいつ、早乙女千秋じゃねーか?」
「...は?まじで?」
おっと、どつやら俺のことを知ってるらしい。
俺の正体に気づくと2人の男は青ざめて逃げ出してしまった。
てか、人の名前を聞いて青ざめて逃げる程って。俺は一体どんな噂を流されてるんだ?
っと憂鬱そうに深いため息を吐いた。




