16話 事件と嘘
「愛香さん、今日暇かな?みんなでカラオケ行かない?」
愛香のクラスは、一年三組。
クラスメイトの男女のグループにカラオケの誘いが来た。
男子は愛香が、来ることにウキウキしていたのだ。
「ごめん、今日も兄さんと帰る約束があるの」
「良いじゃん。今日ぐらい」
誘いに断ったら、後ろに居た男子がしつこく迫ってきた。
「いつも兄妹一緒に居るのも疲れるでしょ?たまには友達同士で遊んだりしないか」
「私は兄さんと一緒にいる事に疲れた事はない」
「そんなに兄と一緒に居たいって、まるでブラコンみたいだぞ?」
毎日のように、兄と一緒に帰ってる事に男子は冗談のつもりで言った。
男子生徒の冗談はそこで止まらず、自分の兄の事を侮辱し始めた。
「それに、あ、愛香の兄ってさ〜。問題児なんだろ?優等生な妹と違って。あの噂知ってるぞ、中学の時の暴力事件。」
千秋の中学の時の暴力事件の事を、他の生徒に聞こえるように大声で言った。
その事に、気に食わなくどこか機嫌悪そうに鋭い目で見つめていた。
「あまり、兄さんの事を悪く言わなで」
「何でよ?本当の事だろ?10人以上の生徒を病院送りにしたんだぜ?まじであり得ない。あー怖い怖い」
「それは!私のせいで..いや、何でもない。なので今日は私は先に帰る。では、さよなら」
「ちょっと待てよ!」
すると男子生徒は、帰ろうとする愛香の腕を強く掴んだ。
相手はスポーツ男子で、掴まれた腕が痛みを走った。
「いたっ..」
「だから、そんな兄より俺たちの所に来いよ!」
「もう、ほっといて」
「ちょっと陣!!流石にやり過ぎよ!」
「あ、あーちゃんから..は、離れて...」
「うるせ、デブ!」
周りの女子達がこの状況がやばいと感じて、陣を止めようとしたが、彼は暴走していて周りを見えて居なかった。
「痛いって!離して」
もう、何でいつもいつもこうなるのよ。私はただお兄ちゃんと帰りたいだけなのに...もう、やだ。助けてお兄ちゃん!
あまりの痛さに陣に対しての恐怖が芽生えてしまった。心の中で好きな彼の名前を叫んだ。
すると、願いが叶ったように目の前に彼が現れた。
「痛!!」
「おい、俺の妹に何してる?」
愛香を掴んでいた陣の腕を千秋は強く握った。
あまりにも強い力に押し負けて、手を離してその場だしゃがんだ。
「ふざけんな!離せ!!」
陣は、俺の手を強く振り払い痛んだ手を抑えた。
「てめー、こんな事して許されると思うなよ。絶対チクってやるよ!」
陣は教師にこの事を報告すれば、千秋は停学、いや、おおごとに話せばなれば退学処分が免れないと考えた。
「おい、陣それはちがうじゃねーか?」
すると、俺の後ろから少し怒りの表情を浮かべてる潤が現れた。
どうやら、2人は知り合いらしい。
「お前が先に愛香に手を出したんだろ?見てたぞ」
「いや、その...」
「はぁ〜、正直に話せないのか。お前には失望したよ陣。もう、来なくて良いよ部活に」
「え?!」
どうやら、2人は同じ部活でこの学校のサッカー部は普通は3年が部長を任せられるはずだが、潤の厚い期待と信用によって今のサッカー部の部長は潤だ。
「そんな、嘘つく奴は内には要らないよ」
「何故ですか!何故部員である俺より、そんな問題児の肩を貸すのですか?!」
「じゃー、お前は先に手を出されたって言いたいのか?」
「そう言ってるじゃないですか!!」
「そうか、おい。裕二、健太どうなんだ?!」
3組に居た同じサッカー部員に聞いた。
すると、眼鏡を付けてる裕二が陣に指をさした。
「陣から先に手を出しました。顔を見れば痛がっているのに離さなくって、そこに早乙女先輩が助けに入りました。早乙女先輩は悪くはありません」
裕二の証言に、隣で座っていた健太はコクコクと頷いていた。
潤は呆れた表情で陣を見ると、青ざめていたのだ。
「お、俺が何したって言うんだ!!クソ!!」
陣は自分のバックを取り出し教室から飛び出した、飛び出す時に俺に睨み付けながら、何か言ってたように口を動かしていたのだ。
奴の取り巻きも追いかけるように教室から出て行った。
潤は裕二と健太を連れて行ってこの事をサッカー部の顧問に一応報告しに向かって行った。




