104話 マネージャーと仕事
何故その事を言ったのかは知らないが、綾乃さんが話を合わせろと言わんばかりに睨みつけられたので、仕方なくマネージャー役を引き取った。
「はい、自分は紗奈のマネージャーをやってる。早乙女千秋っす、宜しくお願いします」
慣れない敬語を使って、浅くお辞儀した。
チラッと紗奈の方を見ると、何事?とあたふたしていたのだ。
「ふーん、紗奈ねぇ...宜しくね。千秋君」
何故が俺が下の名前で呼び捨てしてた事に、何か引っかかっているようだった。
手を差し出して来たので、俺は握手をした。
コイツ...
力強く握りしめて来るが、俺にとってあまり痛くも無いものだ。モデルで体力があっても腕力はあまり無いようだな。
流石に握り返しても、相手を怪我させてしまったらこっちが色々と面倒になるので、俺はやり返そうとは思わなかった。
「ちっ、」
顔色一つ変わらなかった事に舌打ちを溢し、すぐにどこか行ってしまった。
2人から感じる異常な空気を気付いたのか、紗奈は心配そうな顔で耳打ちでたずねた。
「千秋様、何かありました?」
「ん?何でも無いよ。紗奈は仕事を頑張ってこい」
俺はいつもシャルロットにやってるせいか、無意識に紗奈にも頭を撫でてしまった。
紗奈は嬉しそうに撫でられていた、もし尻尾があるならフラフラと揺らしてたと違いない。
「ほーう、」
綾乃さんは関心を持ったような表情で、俺たちのを見て声を漏らしていた。
すると、次は40代の男性のが此方に挨拶に来た。
「君がSANAかな?初めまして、ブルーサイダーオフィスの社長をやってる、田代 憩だ。宜しく」
40代男性は今回の相手側の大手企業のブルーサイダーオフィスの社長だった。
田代社長と紗奈は軽く握手を交わし、次に俺をみた。
「君はマネージャーかな?宜しくね村雨千秋君」
俺は握手を交わそうとした時、本来と違った名前で呼ばれた事にピタッと体を止めて、社長の方をみた。
「あっはは、そう睨むなって。私は君のお父さんと飲み合う仲なんだ。君の事はお父さんから聞いてるよ。最初君がここに入って来た時驚いたよ」
っと笑いながら言った。どうやら、あのクソ親父と知り合いらしい。なら、俺がやる事はコイツとあまり関わらない事だな。てか、俺の事言いふらすなよ。
「驚いた、千秋君は何者?」
綾乃さんは俺と田代社長が仲良さそうにしてる事を見て、目を見開いて驚いていた。
「俺は普通の高校生っすよ」
そしてその後は紗奈達のCM撮影が始まった。
撮影時俺の方を紗奈がチラッと見ると、ニコッと笑った時はキュン!っと来たものだ。
紗奈の笑顔がやはり癒されるーー
「SANAちゃん、今日はいつも以上にいい顔をするね。何か良い事でもあった?」
「いや、特には」
っと笑うとカメラマン達は頬を赤らめさせていた。
1時間ちょいで撮影は終わったのだ。
「SANAさん、この後俺とお茶しない?」
俺たちが帰ろうとした時、田村が紗奈を呼びかけた。
「誘っていただきありがとうございます。ですが、私はこの後約束してる相手が居ました、行けません」
「...そうか、それは残念だ。では、また今度誘うとしよう」
そのまま自分の部屋に戻って行った。
俺達は綾乃さんの車に乗せて貰い、家まで送ってくれるらしい。
「千秋君、今日はありがとね」
「あのー、マネージャーって何ですか?」
「え?マネージャーって言うのは、業務の管理や運営を行う責任者だね。簡単に言うと、紗奈のマネージャーならSANをサポートする人にあたる」
「いや、マネージャーの意味を聞いた訳じゃなく。そもそも、マネージャーは綾乃さんのじゃないんですか?」
「私はアーティストマネージャーよ?貴方はロードマネージャーをやって貰えましょうか」
何それ?何がちがうの?
「千秋君、紗奈ちゃんのマネージャーやってみない?」
「えー、俺あまりそう言うの詳しく無いですよ?」
「大丈夫よ。そこの所は貴方は紗奈の身の回りを補佐してくれれば良いのよ、もしかして他の男にマネージャーを勤めさせても良いのかしら?」
「ど、どう言う意味ですか?」
「貴方達付き合ってるでしょ?」
「「え?」」
まさか綾乃さんに気づかれてた事に、驚いた。
「2人の反応を見れば分かるわ、私達はモデルであってアイドルじゃないから付き合うのは良いけど、あまり記者達にはバレないようにね?結構面倒くさくなるから。で?マネージャーはやるの?やらないなら、他の男にもやらせても良いけど」
結構ズルい言い方だ、別にマネージャーは女でも良いのにそこを男と選んで俺を断りづらくしている。
「ちゃんと給料もでるわよ。そこら辺の仕事より高いから貴方にとっては都合の良い話よ?」
確かに夏休み中バイトは探してたから丁度良いのでは?
「そうですね。やってみましょうか」
「千秋様、良いのですか?」
「良いよ別に。俺も暇したし、それに給料も出るし紗奈の撮影の時特等席で見れるから一石二鳥だよ」
「あ、ありがとございます」
2人の雰囲気に綾乃さんは微笑んで居た、2人に聞こえないような声で言葉を漏らした。
「本当の理由は千秋君が近くに居ると、紗奈ちゃん物凄く最高な笑顔が撮れるしね」
俺は少し思い詰めた表情になって居た。
「あの〜、綾乃さん。一つ頼みたい事があるのですよ」
「ん〜、じゃんじゃん言いなさい」
「ある人と会って欲しいです」




