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私を捨てたい   作者: 中村りん
2/2

私を捨てたい ②

苦しみを抱えた少女が、心の居場所を見つけるまで……


競争社会に苦しむ人に届けたい思いを書きました。


あの一件以来、私は児童相談所に怒りの感情しかなく今後は一切頼らないと決めた。

" 緊急性がないから保護できない "

その言葉にずっと疑問を抱いている。

もっと危険な状態に遭えということなのか。

「もっとつらい思いをしている子はたくさんいるよ」

そんなことも言われた。

私は心の中で叫んだ。

『つらさの競走なんてしてねーよ!』

私のつらさは私のもの。みんなそれぞれに自分の苦しみを抱えている。

つらいの基準って何?

勝手に私の苦しみを捨てないでよ。




それでも学校側は私に手厚く対応してくれた。

無事高校受験も終え、先生方の配慮で高校にも私の家庭事情について説明してもらえた。


そして高校に入学して数日経った頃、全て事情を知っていた養護教諭の先生に声をかけられた。林先生だ。

その日から林先生と仲良くなり、気づいたら保健室が私の居場所になっていた。




「私よりつらい思いをしている人はいっぱいいるからさ、我慢しないと」

林先生の手伝いをしながら、私はそう呟いた。

すると、林先生は手を止めて私の顔を見つめて言った。

「比べなくていいんだよ。そう思うことで結衣ちゃんのつらさは軽減されるの?」

びっくりした。そんな優しい言葉が返ってくるなんて。

「でも言われたんだ。

"もっとつらい思いをしている子はたくさんいるよ"

って。

それに私、最低な人間なんだ。あんな簡単な言葉で片付けられて母の態度がもっと酷くなって。それで思ったの。どうせならもっと殴ってくれよって。身体中に痣とか火傷の痕があれば誰か助けてくれたのかなって。最低でしょ」

言ってしまった。すぐに後悔した。きっと今の言葉で林先生も私のこと嫌いになっただろうな。

すると急に体が温かくなった。目を開けると、林先生が私を抱きしめている。

「苦しいね。ずっと色んな気持ちと葛藤しながら過ごしているんだね。もっと吐き出していいんだよ」

そう言って、頭をポンポンと撫でてくれた。

「ねぇ、私のこと見捨てないの?」

抱きしめられたまま聞いた。

「見捨てるわけない。結衣ちゃんは何も悪くない」

何でそんなに優しい言葉を言ってくれるんだろう。

「私は私を捨てたいよ……」

私は声を上げて泣いた。泣くのを止めようとしても止まらない。やっぱり私は弱い。

「泣かないことが強いとは限らないよ。いっぱい泣いていいんだよ」

林先生は私の心を見透かしたように優しく言った。

やっと落ち着いた時、林先生は私の目を見つめた。

「話してくれてありがとうね。苦しくなったらいつでもおいで」

また泣いた。

林先生のこと、信じてみてもいいのかな……



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