乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲーの主人公の手が握りたい。 その8
疲れ果てた、顔を浮かべる美月と宏美である。口論を続けた結果、滅茶苦茶に疲れてしまった二人なのである。
肩で息をする二人である。お互いぜぇはぁ、ぜぇはぁと息を整えるのである。お互い向き合って牽制しあうのである。
「いいですか~…美月さん…美月さんは、郁人様の彼女さんなんですから~、握手会に参加しなくても、後で握手好きなだけしてもらえばいいじゃないですか~!?」
「でも、でも、は、恥ずかしくて、い、いまさら、あ、握手してなんて言えないよ…握手会なら、自然に握手できるよね?」
「なんで、恥ずかしがるんですか~!? いつも手をつないでたんですよね~!?」
「だからだよ…ね…ひろみんなら、わかってくれるでしょ?」
「全然、全く、わかりませんね~」
顔を真っ赤にして、む~と頬を膨らませて、不満顔の美月に、最高のゆるふわ笑顔を浮かべる宏美である。疲れては、口論し、疲れては、口論してのエンドレスリピートである。アニメで例えるなら、8回は繰り返している事だろう。
「はぁ~…とりあえず、美月さん…今日はもう諦めてくださいよ~…後日わたしぃが何とかしてあげますから~」
「…だって…あの子は握手したんでしょ?」
「そ、それはですね~…まぁ…そうですけど~」
「じゃあ、私も、今日、郁人の握手会に参加したいよ!!」
美月に、梨緒と会話していたことがバレた結果、美月は、対抗心が芽生えてしまったのである。まぁ、これも、不用意に宏美が、美月に梨緒の事を話してしまった結果のため、自業自得なところがあるのである。
「無理を言わないでくださいよ~…もう、遅いですし…早く帰らないと、郁人様も心配しますよ~」
「…そ、それは…で、でも、郁人と握手したいよ~」
呆れるゆるふわ宏美は、電源を切っていたスマホの電源をつけるのである。郁人から、メッセージが送られていたことに気がつくゆるふわ宏美である。
郁人からのメッセージを読んで、ハッとなるゆるふわ宏美である。自己嫌悪笑みを浮かべる宏美は、美月の方に向き直るのである。
「…あ…そうですね~…わたしぃとしたことが…うっかりしてましたね~…美月さん…わたしぃがきちんと郁人様と握手させてあげますからね~」
「え!?」
いきなりの、宏美の行動方針の変更に戸惑う美月である。訳が分からない美月は、首を傾げて疑問顔であった。そんな、美月に、ゆるふわ笑顔を浮かべる宏美なのである、
郁人は、梨緒に帰ろうと提案して、ファンクラブの部室の戸締りをして、学校を後にしたのである。校門で、梨緒と別れて、郁人は、いつもゆるふわ宏美と朝に待ち合わせている場所に向かうのである。そして、その場所で待っていると、美月とゆるふわ宏美にメッセージを送っておいたのである。
郁人は、ボーっと空を眺めながら、美月達の到着を待っていた。そして、その間に梨緒との別れ際の会話を思い出すのである。
「郁人君…わかるよねぇ…宏美ちゃんの事…きちんと考えてあげてねぇ…」
「…なんで、俺が?」
「それは、郁人君がよくわかっているんじゃないかなぁ…私は、郁人君の事…よくわかっているからねぇ」
「…わかった…考えておく」
「うん…お願いね…郁人君」
梨緒の浮かべる清楚笑みに、底知れぬ恐怖を感じる郁人である。梨緒は、遠回しにこう言っているのである。宏美も、郁人や美月と同じように、嫌われ者になるぞと警告しているのである。そして、郁人が、美月のために、宏美を利用しているよねと、梨緒に言われている気がする郁人なのである、
「悪いが…俺は、それでも…」
郁人が独り言をつぶやいていると、見知った声が聞こえてくる。
「お待たせしました~…郁人様…って…美月さん…何してるんですか~!?」
郁人が、声をした方を向くと、ゆるふわ宏美が、手を振りながら、ニコニコ笑顔でこちらに挨拶をしていた。そして、何故か美月は、ゆるふわ宏美の背中に隠れるのである。
「美月…どうかしたのか?」
郁人は、不審な美月の行動に、首を傾げるのである。
「い、郁人…ひ、久しぶりだね」
「あ…ああ…朝…会ったぶりだな」
ひょっこり、宏美の背中から顔を出して、真っ赤に頬を染めて、そう言い放つ美月に、困惑する郁人である。ゆるふわ宏美は、迷惑そうに笑顔を浮かべている。
「いいですから~…ほら、美月さん!!」
「ちょ…やめて、ひろみん…まだ心の準備がね…できてないの」
宏美は、あわあわとなっている美月を、無理やり郁人の前に突き出すのである。
「ど…どうかしたのか?」
「では、郁人様…最後の握手会のお客さんですよ~」
「は?」
ゆるふわ宏美が、人差し指を口元に当て、満面な笑顔を浮かべて郁人にそう言い放つのである。突然、ゆるふわ宏美にそう言われて、困惑する郁人である。
「う~…ひろみん…いきなりすぎるよ!!」
顔を真っ赤にして、宏美に対して、頬を膨らませて怒る美月は、チラリと郁人の方を見ると、顔をさらに赤くして、顔を伏せるのである。郁人は、よく状況が理解できてないが、心の中では、美月可愛いなと思っていた。
「ですから~…郁人様の、ファン第一号さんと…握手してあげてくださいね~…美月さんが郁人様と、どうしても握手したいそうなんですよ~」
「え…そ、そうなのか…べ、別に…言ってくれれば、いつでも握手するぞ…美月」
「べ、別に…その…すごく…握手したいわけじゃないよ!! ただ、郁人の握手会って、参加したことないから…参加したかっただけだよ!! それだけなんだよ!!」
そう言われて、真っ赤になって、頬を、膨らませてそっぽを向く美月である。そんな美月に、笑いだす郁人は、右手を美月に差し出すのである。
「郁人…馬鹿にしてるよね?」
「してない、してない…美月は、可愛いなと思っただけだ」
「それ…絶対馬鹿にしてるよね…もう…」
美月は、頬を膨らませ拗ねるが、ジーっと郁人の差し出した右手を見つめて、そっと両手で握り締める美月である。
その光景に、微笑みを浮かべ眺めるゆるふわ宏美である。ブンブンと手を振る美月に、されるがままの郁人である。
「フフフ…郁人…久しぶりに手をつないだね」
「そうだな…最近、美月俺の横を歩かないからな」
「え…何…私のせいなの!?」
「美月…俺が、横歩こうとしても、照れて、離れていただろ…まぁ、照れる美月が可愛いから、俺はいいんだけどな」
そう郁人に言われて、顔を真っ赤にして、伏せる美月である。そして、ムッと頬を膨らませて怒り顔で郁人を睨む美月である。
「…はいはい、俺が悪かったな…明日から、手をつなごうな…美月」
「べ、別に…手がつなぎたかったわけじゃないよ!! でも、郁人がつなぎたいなら…いいよ」
郁人と美月は、お互いそう言って、笑い合うのだった。
「はいはい~…これで、郁人様の握手会は終わりですよ~…全く…美月さんの我儘には、ほとほと呆れますよ~」
「…ゆるふわ…その…悪かったな…美月が迷惑かけたみたいで」
郁人は、先ほどの梨緒との会話を思い出して、素直に頭を下げるのである。そんな、郁人の行動に、驚くゆるふわ宏美である。
「フフフ、別に気にしなくてもいいですよ~…郁人様とわたしぃは、お友達ですからね~それに、わたしぃが好きでやってることですからね~…気にしないでくださいね~」
満面なゆるふわ笑顔で、そう郁人に言い放つ宏美である。そんな宏美に美月が抱き着くのである。
「私とは、大親友だもんね!! ひろみん!!」
「いつ、わたしぃが美月さんの大親友になったんですか~!!」
「う~ん…いつの間にかだよ!!」
嬉しそうな美月に、迷惑そうな宏美である、その光景を、ジッと眺める郁人は、心が痛むのを感じるのである。
「ゆるふわ…お前は…その…俺らと…その…あまり仲良くしない方が…」
ぼそりとそう言う郁人に、ゆるふわ宏美は、疑問顔を浮かべる。
「フフフ…郁人様、わたしぃの心配してくれるんですか~…フフ、郁人様の中でのわたしぃのランクも上がりましたね~」
美月は、郁人と宏美の会話に、宏美を抱きしめながら、疑問顔を浮かべるのである。
「フフフ、心配しなくても大丈夫ですよ~…先ほども言いましたが、わたしぃも好きでやってますからね~…ただ、郁人様はわたしぃに感謝はしてくださいね~」
ドヤ顔のゆるふわ宏美に、呆れる郁人である。しかし、どこか、ホッとした郁人は、笑みがこぼれるのである。
そして、そんなやり取りをした後、郁人と美月は手をつないで、帰宅するのである。そして、その光景を眺めるゆるふわ宏美は、ニコニコ笑顔である。
「今度は…わたしぃは、絶対に…親友を裏切ったりしませんからね~」
ゆるふわ宏美は、そう独り言を言い放ち、拳を握り締めて、黄昏時の空を眺めるのであった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。ぜひ、ブックマークと評価もよろしくお願いしますね。
さて、ポンコツなゆるふわ宏美ですが、美月のポンコツ化が凄い気が…宏美も、過去にいろいろあったみたいですが、いつか語る日が来るかもしれませんね。
次回は、今度は、郁人と美月がわがまま言いだすみたいですよ。がんばれゆるふわ宏美ちゃん!!
では、次回の更新もよろしくお願いしますね。




