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僻地宿場町のお奉行様 今日も妖怪変化相手に御沙汰を下し候  作者: ふーろう/風楼


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善右衛門と遊教の問答


 遊教から新たな刀を受け取った善右衛門は、早速これを振るってやろうと立ち上がり、そのまま庭へと出ていってしまう。


 そうして今までの刀とは全くの別物と言って良い程に長く大きい刀を正眼に構えて振るい、また正眼に構えてと繰り返し始める善右衛門。


「おいおい……話の途中だったってのにいきなり刀を振り回し始める奴があるかよ。

 ……いくらそいつがお前好みの大太刀だとはいえ、はしゃぎ過ぎにも程があるぞ」


 けぇ子と共に善右衛門を追いかける形で縁側へとやってきた遊教がそう言うと、善右衛門は刀を振り回しながら声を返す。


「いつ使うことになるかも分からないんだ、少しでも早く慣れておくべきだろう。

 ……それに刀が手に入り、遊教という手駒も増えたとなればあの一帯の調査を再開出来る訳だからな。

 ……ぐずぐずはしておれんさ」


 縁側にどかっと胡座をかいて座り、やれやれといった表情になった遊教は、呆れがたっぷりと込められた声を吐き出す。


「お前って奴は本当に拙僧を何だと思ってるんだ?

 手駒も何もお前の指図を受ける理由なぞ拙僧には一つも無いんだがなぁ?」


 尚も刀を振りながら、その振り心地を体に馴染ませながら善右衛門は、合間合間に遊教の方へと視線を向けながら遊教との問答をし始める。


「理由ならいくらでもあるだろう……たとえば九尾の狐の際の雪辱を果たすとかだな。

 あの大量の荷物もその為に用意したものなのだろう?」


「あー……まぁ、その、なんだ……。

 仮にそうなんだとしても、あの性悪狐のほとんどが浄化された今、拙僧の辱は綺麗に雪がれたと言っても過言ではない。

 ……で、あればわざわざ鬼だなんだのといった騒ぎを手伝う義理はないな」


「なるほど。だが理由は他にもあるぞ?

 遊教、お前はこの町に住まう女子達の気を引きたいのだろう?

 今、この町住まう誰もが鬼の影におびえてしまっている。そんな状況の中で鬼退治……とは言わないまでも、鬼にまつわる事件を解決したとなれば町中からの感謝と、女子からの関心を引けるのではないか?

 けぇ子達を見れば分かる通り、その怯えは骨の髄から来るような凄まじいものだ。そして怯えが凄まじければ凄まじい程……後は言わなくても分かるな」


「ぐ、ぐむぅ……。

 け、けぇ子ちゃん、本当か、今の話は本当なのか? 

 それ程に鬼が恐ろしいのか? 解決したら本当に気を持ってくれるのか?」


 縁側の離れた場所で静かに座っていたけぇ子は、突然そんな言葉を投げかけられたことに驚きながら、おずおずとした様子で口を開く。


「えぇっと……気を持つかはわかりませんけど、鬼が恐ろしくて仕方なくて、どうにかして欲しいと思っていて、そしてどうにかしてくれたなら深い感謝を抱くのは間違いないことかと思います。

 私やこまさんだけじゃなくて、今この町に来ている皆が同じ考えだと思いますし……まぁ、女子達の気を引きたければ良い手かもしれない、ですね」


 大太刀を振るう善右衛門へとちらちらと視線をやりながらのけぇ子のそんな言葉に、遊教は再度「ぐむむむぅ」との唸り声を上げて、腕を組んで首をひねりこみながら考え込む。


 そうして善右衛門が刀を振るう中、あれこれあれこれと考え込んだ遊教は、ばしんと自らの膝を激しく叩いて、意を決したような声を上げる。


「……仕方ねぇなぁ。

 そういうことなら仕方ねぇなぁ! 仏門に身を置く者としちゃぁ鬼なんてのは捨て置けねぇ存在だし、助けを求める声にも応えない訳にはいかねぇ!

 その上、けぇ子ちゃんやこまちゃんに好かれるとなったら……こりゃぁもう仕方ねぇよなぁ!

 よし、そういうことだから善右衛門、明日だ、明日から山に向かってその鬼らしく何やらめを退治してくれようぞ!!」


「……よし、ならば明日、俺と遊教、それと八房とで鬼退治だ。

 雉は居ないが、まぁなんとかなるだろう」


「そうだな、鬼退治と言やぁ、おいぬ様に雉に……っておい、猿は何処だ。誰が猿だ。

 てめぇが桃太郎気取りなのも気に入らねぇが、拙僧を猿扱いというのは一層気に入らんな!!」


「俺は別にどちらがどうとは口にしていないが……?

 ……だがまぁ、あえてどちらが桃太郎なのかと問うならば、それは結果次第なのだろうな。

 事態を解決し、一番活躍した者が桃太郎として賛辞を受ける。

 これ以上ないくらいにわかりやすく、誰もが納得の行く話だろう」


「なぁるほどな! 確かにそうだわな、お前が猿ってこともある訳だわな!

 ……よぅしよし、明日は見ていろ善右衛門……九尾の狐を退治せんためにかき集めたお宝の数々で、この拙僧が見事な活躍をしてくれようぞ!!!」


 そう言って、ガハハと大きな笑い声を上げる遊教を見ながら善右衛門は、大太刀を肩にひょいと担ぎ……これでいくらか楽に事態を解決できそうだと、そんなことを胸中で呟くのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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