ここで、最高の日々を
「と、いうことで。乾杯ですーっ!」
刹那が声高に言い、机に置いたオレンジジュースをちまちまと飲んでいる。
今のサイズだと、普通のペットボトルですら凄まじい量に感じそうだ。
俺、ルナ、刹那、アル、シンミア、マーレ、そしてロッタにレオパルド。
全員、病人二人が休んでいた病室に集まっていた。
道中で購入した、お菓子や飲み物などを机やソファに置いている。
病室でこんなことやってると、わりと迷惑なような気もするが……。
「……おい。パーティーなんざ勝手にやってろ。俺を巻き込むなっつの」
「まあまあ、レオくんだって功労者なんだから」
「……チッ、俺は何もやってねえよ。そこのガキにやられたんだよ」
そう舌打ち混じりにぼやき、ちらっとアルを一瞥する。
するとアルは持っていた飲み物を机に置き、頭を下げた。
「……本当に、ごめんなさい。謝っても、許されないことだと思うけど」
「やめろ。いちいち頭を下げるな。別に、今更気にしちゃいねえよ」
「……でも」
「うるせえ。事情は、シンミアから全部聞いた。ま、頑張ったほうなんじゃねえの」
「……む」
レオパルドの言葉に、アルは不機嫌そうに少しだけ眉間に皺を寄せる。
まあ口は悪いが、これでもレオパルドなりにアルを励まし、行いを許しているのだと思う。たぶん。
「ねーねー、ルーチェちゃんも泊まらない? 退屈なのよー」
ふと俺の袖を引っ張りながら、ロッタが疲れたような表情で言ってきた。
そりゃあ病室にいても特にすることはないし、退屈なのもしょうがないことではあるけども。
「無茶言うなって。早く治せば、その分また一緒に遊べるだろ」
「へへ、それもそうね」
俺としても、意外なことにロッタと一緒に遊んだ時間は楽しかった。
正直、またあんなに着せ替えさせられるのは御免だが、一緒にどこかへ遊びに行くというのはこれからもやってもいいかもな。
「男らしい口調のルーチェちゃんも、それはそれでいいわね。なんか新鮮」
「んまあ、これからは新鮮ですらなくなっちまうかもしれないけど……悪いな」
「悪くないわよ。あたしだって感謝してんだから」
ああ、なんて温かい場所なんだろう。
ルーチェに嫉妬を覚えずにはいられないほどに、ここは眩しすぎる。
だけど、もう嫉妬を覚えるだけの場所じゃなくなった。
みんなが笑っている、この世界は。
俺の――最高の居場所になったから。
「あ、ルーチェが笑ってるーっ」
「おや? もしかしてお兄ちゃん、えっちなことでも考えてましたねー? やだもー、わたしを陵辱しないでくださいよー」
「誰がお前みたいなやつに欲情できるんだよ」
「ひどいっ! こんなにプリチーなのにっ!」
まあ一癖も二癖もあるような奴らばかりで、不良どもと喧嘩していた日常以上に大変な日々になりそうだけど。
それもまた、俺の。俺たちの、幸せな時間のひとつだ。
そんなこと、何があっても声に出しては言えないけど。
「じゃあルーチェ、今日は何しよっか」
こんなに、騒がしくてお人好しで最高な奴らに囲まれて。
今日も、これからも。
この温かい世界で、生きていく――。




